第38回 XML勧告を記述するXMLspecとは何か Page 3

川俣 晶
株式会社ピーデー
2005/10/12

2つの名簿

 さて、次に2つの名簿が掲載されている。XML勧告の作成とメンテナンスを行ったワーキンググループの名簿である。ここに記されたすべてのメンバーが何者であり、どのような経歴を持っているか調べて示すことは、もしかしたら意義のある作業になるかもしれない。しかし、残念ながらそのための準備も整っていなければ時間も足りない。いくつかの点に触れ、名簿に記された皆さんには「ありがとう!」という気持ちを込めるにとどめよう。

 最初の名簿は、「G W3C XML Working Group (Non-Normative)」である。これはJIS X 4159では「附属書G(参考)W3C XML作業グループ」に当たる。

 前置きとして以下の文書が掲載されている。

This specification was prepared and approved for publication by the W3C XML Working Group (WG). WG approval of this specification does not necessarily imply that all WG members voted for its approval. The current and former participants of the XML WG are:
この仕様は、W3C XML作業グループ(WG)が準備し、公開を承認した。WGがこの規格の原勧告を承認するということは、WGのすべての委員が承認投票を行ったということを必ずしも意味しない。XML WGの現在の委員および以前の委員を次に示す。

 JIS X 4159では、仕様ではなく「規格の原勧告」と表記されているが、これは整合性を維持するための超訳である(この文章が指し示す仕様は、JIS X 4159ではないから)。さて、ここで確認しておくべきことは、主体となって行動したのが「W3C XML作業グループ(WG)」だということである。決してW3Cが主体となって、XMLを生み出そうと活動したわけではない、という歴史的な経緯には注意を払う価値があるだろう。XMLは素晴らしい宝物といえるが、最初から宝物であると組織によって認識されていたわけではない。

 次は、この名簿に名前が記載されていることが、この勧告に賛成したことを意味しないということである。このような記述は極めて誠実といえるだろう。わずかにJIS(日本工業規格)にかかわった経験からいえば、JISの世界ではこのような文章が規格に付記されることはないようである。

 そして、すでに委員ではない者も名簿には含まれるとしている。

  • Jon Bosak, Sun (Chair)
  • James Clark (Technical Lead)
  • Tim Bray, Textuality and Netscape (XML Co-editor)
  • Jean Paoli, Microsoft (XML Co-editor)
  • C. M. Sperberg-McQueen, U. of Ill. (XML Co-editor)
  • Dan Connolly, W3C (W3C Liaison)
  • Paula Angerstein, Texcel
  • Steve DeRose, INSO
  • Dave Hollander, HP
  • Eliot Kimber, ISOGEN
  • Eve Maler, ArborText
  • Tom Magliery, NCSA
  • Murray Maloney, SoftQuad, Grif SA, Muzmo and Veo Systems
  • MURATA Makoto (FAMILY Given), Fuji Xerox Information Systems
  • Joel Nava, Adobe
  • Conleth O'Connell, Vignette
  • Peter Sharpe, SoftQuad
  • John Tigue, DataChannel

 Jon Bosak氏は「XMLの父」とも呼ばれる人物であり、XMLを生み出す主導的な立場にあった人物である。James Clark氏は多くの仕様書の作成にかかわるとともに、それらの実装も多く手掛けている。例えば、C言語で書かれたXMLパーサのExpatや、JavaによるXSLTの実装であるxtのお世話になった人も多いと思う。彼もまたこの世界の超大物である。そして、3番目のTim Brayもよく名前を聞く超大物である。

 もう1人だけ名前を取り上げておくと、MURATA Makoto氏とは日本のXML界の第一人者である村田真氏のことである。日本人でただ一人XMLの勧告にかかわった人物であるという証拠がこの名簿にある。時差があるため、深夜に電話会議に参加していたそうである。

 次に、もう1つの名簿を見てみよう。これは、「H W3C XML Core Working Group (Non-Normative)」である。JIS X 4159では「附属書H(参考)W3C XMLコアグループ」に当たる。

 前置きの文章が以下のように述べられている。

The third edition of this specification was prepared by the W3C XML Core Working Group (WG). The participants in the WG at the time of publication of this edition were:
この仕様の3rd Editionは、W3C XML Core Working Group(WG)によって準備された。公表時における委員を次に示す。

 XML 1.0勧告の2nd Editionから3rd Editionへの改定の作業を行ったのが、このW3C XML Core Working Group(WG)という作業グループである。これは、現在XML文書に関する仕様のうちコア(Core)になるものを扱う作業グループである。XML本体のほかに、Namespaces in XML、XML Inclusions (XInclude)、XML Information Set、xml:id、XML Fragment Interchange、XML Base、Associating Stylesheets with XMLなども扱っている。

  • Leonid Arbouzov, Sun Microsystems
  • Mary Brady
  • John Cowan
  • John Evdemon, Microsoft
  • Andrew Fang, Arbortext
  • Paul Grosso, Arbortext (Co-Chair)
  • Arnaud Le Hors, IBM
  • Dmitry Lenkov, Oracle
  • Anjana Manian, Oracle
  • Glenn Marcy, IBM
  • Jonathan Marsh, Microsoft
  • Sandra Martinez, NIST
  • Liam Quin, W3C (Staff Contact)
  • Lew Shannon
  • Richard Tobin, University of Edinburgh
  • Daniel Veillard
  • Norman Walsh, Sun Microsystems (Co-Chair)
  • Francois Yergeau (Third Edition Editor)

 彼らの全員が好ましい形でXMLに貢献しているかは分からないことは、前の名簿の「WGのすべての委員が承認投票を行ったということを必ずしも意味しない」という断り書きと同じような趣旨で予測できる。しかし、XML 1.0 3rd Editionを勧告するために作業グループに労力を費やしてくれたことだけは確かであるので、この名簿に向かって一言「お疲れさまでした」ということは、決して悪いことではないだろう。(次ページに続く)

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 Index
やさしく読む「XML 1.0勧告」 第38回
XML勧告を記述するXMLspecとは何か
  Page 1
・連載最終回の内容
・文字符号化の自動検出(続き)
  Page 2
・外部の符号化情報が存在するときの優先順位
Page 3
・2つの名簿
  Page 4
・実はとても重要度が高い備考
・最後に


連載 やさしく読む「XML 1.0勧告」


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