会計ソフトの選び方 [メジャー製品編]会計ソフト大研究(1)(1/2 ページ)

個人であれ、法人であれ、事業を行うとついて回るのが会計だ。その会計業務を自動化する会計ソフトは、定形処理を行うだけでどれも同じに思えるが、それぞれに設計思想があり、特徴がある。今回はメジャーな会計ソフトを見ながら、会計ソフトのチェックポイントを解説する。

» 2007年03月29日 12時00分 公開
[松波 竜太(浦和税理士法人),@IT]

自社に合ったログ管理ソリューションとは?

 いまや、会社の経理をパソコンを使ってユーザー自ら行うのは、当たり前になっています。パソコンショップに行っても、非常に多くの会計ソフトが並んでいます。この中から自分の力量と自分の会社の規模を考えて、適切なソフトを選ぶというのは「経理」と「パソコン」の双方の知識がないと、なかなか難しい作業です。

 今回は市販ソフトの“御三家”を例に、会計ソフトのチェックポイントを3つの観点から解説してみました。会計ソフトを購入される際の参考にしてください。

今回のチェックポイント

  • 対象企業規模と製品価格
  • 機能性と操作性
  • 拡張性

今回、取り上げる市販会計ソフト
ソフト名 会社名 ショートアドバイス
勘定奉行21 オービックビジネスコンサルタント(OBC) カスタマイズを重視したい
PCA会計 ピー・シー・エー(PCA) 部門別管理を徹底したい
弥生会計 弥生 初心者・小企業向き

 経理関係のソフトウェアは歴史が古いこともあってか、膨大な数が提供されています。最近では、無償のものがインターネットで配布されており、必ずしもお金を払って購入するものでもなくなってきました。

 そうした中で市販のパッケージ製品を選ぶメリットとして、まずは「サポートが受けられる」という点が挙げられるでしょう。これは、そのソフトのメーカーによる電話サポートや販売協力会社による導入サポート、会計事務所による経理業務支援などが、自社にとって必要かどうかで判断されるものです。

 ソフトウェアの機能面においては、従来からあるパッケージソフトは販売購買ソフトや給与ソフトなどの業務ソフトと連携させたり、多拠点対応や会計事務所とのつながりといった新たな付加価値を付けて生き残り策を模索しているようです。

対象企業規模と製品価格

 第1のチェックポイントは、会社の規模です。メーカーから見て、どの規模の客層をターゲットとしているのかの違いにより、会計ソフトの価格帯は2つに分かれます。

高価 勘定奉行21Ver.IV 15万7500円〜34万6500円
PCA会計8 V.2 15万7500円〜26万2500円
安価 弥生会計 07 4万2000円〜8万4000円
経理じまん(PCA会計 廉価版) 4万1790円

「高価」に分類した勘定奉行とPCA会計は機能制限を付けて廉価版を販売していますが、勘定奉行の廉価版(Jシステム)は現在ではバージョンアップを見合わせている状況(※)です。反対にPCA会計は廉価版(経理じまん)も力を入れて売っていこうという販売戦略を取っています。

※ OBCでは低価格製品をグループ会社で扱う方針のようです。

 勘定奉行/PCA会計は、年度ごとに会社ファイルを1つ作成して管理する方式になっています。管理可能な会社件数は、勘定奉行が9,999社、PCA会計が99,999社という上限がありますが実務上、中小企業においては特に問題ないと思います。

 会計ソフトとは、基本的には会計帳簿作成という作業をパソコンで行うというものです。仕訳入力→試算表作成→決算書作成という基本部分はすべてのソフトが備えており、価格の高低によってこれらの基本機能がある/ないという差はありません。

 かつて価格の高低は処理速度や安定性と関係していましたが、現在ではハード・ソフトともに性能レベルは相当に高くなっており、筆者の感覚では中小企業の日常処理においては、どのソフトを使用してもほとんど処理速度や安定性に差を感じることはないと思います。

 この価格差は、現在のところ後述する拡張性(ネットワーク対応・他ソフトとの連携・カスタマイズへの対応)の差と考えてよいでしょう。

機能性と操作性

 次に操作感という観点から、操作性と機能性を見ていきます。あくまでも筆者の主観となりますが、ご容赦ください。

 まず、一般的に簿記をよく知っている方が使用するか、そうでないか、という点で操作性に対する評価は、大きく異なるでしょう。また使う方の慣れの程度によっても感じ方は違うでしょう。簿記をよく知っている方が使う場合には、いかに速く入力できるかが問題になります。反対に簿記にあまり慣れていない方にとっては、いかに簿記の知識がなくても帳簿が付けられるかということがポイントになります。

 この点については、何より価格にそれが表れているといってよいと思います。価格の安い弥生会計は、「簿記が分からなくても帳簿付けができる」という点に主眼を置いて開発されています。これに対して、勘定奉行/PCA会計はより管理面を重視した設計となっており、ある程度会計の知識がある人が使ったときの操作性に重点を置いて開発されています。

■勘定科目入力機能の操作性勘定科目入力機能の操作性

 弥生会計が簿記の知識がほとんどない方にお勧めという理由は、伝票入力の際の科目入力の方法と、仕訳辞書機能にあります。

 弥生会計の伝票入力の特徴は、ローマ字やカナで勘定科目を入力できるという点にあります。勘定奉行とPCA会計は3〜4けたの科目コードによる入力(PCA会計はカナ入力可)となっています。例えば、「現金」という勘定科目を入力したいときには「genkin」の「g」を入力しただけで、入力候補が絞られて表示されるので、その中から選べばよいのです。インクリメンタルサーチなどといいますが、最近では携帯電話メールの文字入力にも使われていますね。

 インクリメンタルサーチは、科目コードによる管理に比べて、2つの点で優れています。1つ目は科目コードを暗記しなくともよい、2つ目は科目体系をすべて把握していなくても入力が可能という点です。この2つの利点は簿記の知識がほとんどない方が勘定科目を入力する際に、非常に強力な武器となります。

■仕訳辞書機能の操作性仕訳辞書機能の操作性

 また、各ソフトにはそれぞれ「切手の購入」「税金の支払い」などの摘要を選ぶと自動的に仕訳を切ってくれる機能(仕訳辞書登録)があります。仕訳辞書は各ソフトとも、仕訳入力時に入力しながら、または登録後に確認しながら入力した仕訳に設定・登録することができますので、次回から同じ仕訳が必要なときに仕訳辞書に設定したサーチキーを入力するだけで勘定科目等を登録したとおりに作成してくれます。弥生会計はこの仕訳辞書機能の操作性において、勘定奉行/PCA会計と比べて優れています。

 当事務所の例を示しますと、お客さまの入力の元となる資料を1〜3カ月程度お預かりして、仕訳処理をするとともに仕訳辞書登録をしてしまい、お客さまには、弥生会計の使い方の概要をざっと説明して、あとはサーチキーを頼りに入力する方法を説明しています。このような方法で、ほとんどのお客さまが日常処理の80%程度の処理をこなせてしまっているのではないかなというのが実感です。

■高速入力と部門別管理高速入力と部門別管理

 これに比べると、勘定奉行とPCA会計は玄人好みといえます。両者とも基本的には簿記の知識があることを前提に作られており、会計事務所での使用にも耐えるほどの高速入力が可能です。勘定奉行/PCA会計にも自動で仕訳を切ってくれる「自動仕訳」という機能がありますが、この登録と管理は弥生会計と比べると操作性の面でやや難があります。ただし、入力が終わった後のテキストデータへの変換などの自由度や完成度はかなり高く、管理面・企画などを主眼に置いて会計ソフトを選ばれるのでしたら、このどちらかになると思います。

 管理面、特に部門別管理という点においてPCA会計は一歩抜きんでています。部門別管理においては、「共通費の配賦」という問題が付きまといますが、PCA会計においては共通費の配賦仕訳を自動生成してくれる機能が付いています。弥生会計/勘定奉行は、共通費の配賦は部門別一覧表ベースでは理論値を使ってできるものの、仕訳において表現する必要がある場合には、手入力する必要があります。

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