解決策を見つけるためにきちんと分析しよう BABOK 2.0を読んでみよう(2)(2/3 ページ)

» 2009年10月20日 12時00分 公開
[松尾潤子(豆蔵),@IT]

要求アナリシス(Requirements Analysis)とはどんなものか

 要求アナリシスKAでは、ビジネスアナリストが、明確にされた要求を分析するためのタスクとテクニックが説明されています。

 ビジネスアナリストは要求を分析し、ステークホルダーのニーズを満たすために実施するソリューションと、そのソリューションに必要とされる能力を定義します。従って、要求アナリシスKAは、ステークホルダーが持つ要求定義と、ソリューションに求められる要求定義を含んでいるということになります。

図2:要求アナリシスKA全体像(クリックで拡大) 図2:要求アナリシスKA全体像(クリックで拡大)

 それでは、要求アナリシスKAの各タスクをざっと見ていきましょう。

 『要求に優先順位を付ける』タスクでは、要求の相対的な重要性を決定します。今後の活動において、最もクリティカルな要求を分析し、優先的に実現するのが目的です。

 『要求を体系化する』タスクでは、ビジネスドメインやソリューションのスコープに対して適切で、要求同士の関連性を分かりやすく表現できるモデルを選択します。

 すべてのステークホルダーが要求を正しく理解するためのビューを作成するのが目的です。ビジネスアナリストが、UMLなどの正式なモデルの表記法に精通している場合、ついそれをモデルとして選択しがちです。

 しかし、いくら正しく書けていても、ステークホルダーになじみのない表記法では、理解が妨げられるケースが考えられます。『要求を体系化する』タスクではそのような注意点も取り上げています。

 『要求の仕様化とモデリングを行う』タスクでは、組織の持つ機能や要求の分析結果をテキストや図表、また『要求を体系化する』タスクで選択されたモデルを使って表現します。ステークホルダーの要望や現状を可視化するのが目的です。

 『前提条件と制約条件を定義する』タスクでは、前提条件と制約条件を明確にして文書化します。実行可能なソリューションに影響する、要求以外の要因を明確にするのが目的です。要求以外の要因とは、一般的にコストや時間に関する制約や、実装技術に関する制約など、プロジェクト側に選択の余地のない条件です。これらはソリューションのスコープやビジネスケースに影響するため、エンタープライズアナリシス活動の入力となります。

 『要求を検証する』タスクでは、要求が正しく定義されていることを確認します。明確にした要求とそのモデルが必要な基準を満たしており、今後のビジネスアナリシス活動を進めていく上で有効であることを確実にするのが目的です。

 『要求を妥当性確認する』タスクは継続的なプロセスです。要求アナリシスKAの活動を通して明確化された各ステークホルダーが持つ要求、ソリューションに求められる要求、ソリューションの導入について求められる要求が、組織のビジネス全体の要求と整合していることを確認します。すべての要求がビジネスに価値をもたらすことを確実にするのが目的です。(ソリューションの導入について求められる要求は、ソリューションのアセスメントと妥当性確認KAに定義されているタスクを通して明らかになります。ソリューションのアセスメントと妥当性確認KAは第3回で取り上げる予定です)

 以上が要求アナリシスKAの各タスクの概要です。これらの要求アナリシス活動のパフォーマンスも、エンタープライズアナリシス活動と同様に、計画された内容に従って管理され、実績が測定されます。

タスク 要素(Elements)
要求に優先順位を付ける ●優先順位付けの基盤
  • 優先順位付けの基盤
    ビジネスの価値
  • ビジネスまたは技術的なリスク
  • 実装の難しさ
  • 成功の可能性
  • 規定やポリシーの遵守
  • ほかの要求との関連
  • ステークホルダーとの合意
  • 緊急性
●優先順位付けの課題
  • 交渉の余地のない要求
  • 非実現的なトレードオフ
要求を体系化する ●一貫性、連続性、高品質を促進するためのガイドライン
●抽象化レベル
●モデルの選択
要求の仕様化とモデリングを行う ●テキスト
●表形式のドキュメント
●モデル
●要求の属性の把捉
●改善機会
前提条件と制約条件を定義する ●前提条件
●ビジネスの制約
●技術的な制約
要求を検証する ●要求品質の特徴
  • まとまりのある
  • 完全な
  • 一貫性のある
  • 正しい
  • 実現可能な
  • 変更可能な
  • あいまいでない
  • テスト可能な
●検証活動
要求を妥当性確認する ●前提条件の明確化
●測定可能な評価基準の決定
●利益実現への依存関係の決定
●ビジネスケースに対する機会費用の評価

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