やってみて分かった、ビジネスモデリングの価値@IT情報マネジメント 勉強会レポート(2)(1/2 ページ)

2008年1月30日(水)、@IT情報マネジメント編集部主催「第2回 戦略マップ によるビジネスモデリング勉強会」が開催された。2007年12月に行われた第1回に引き続き、熱心な受講者が講義と実習に取り組んだ。当日の模様をレポートしよう。

» 2008年02月20日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

Speaker

システムビューロ代表 内田 功志(うちだ いさし)氏

日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメインプログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在は、オブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施、特にビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。



 2007年12月6日に開催された「第1回 戦略マップによるビジネスモデリング勉強会」では、講師のシステムビューロ代表 内田功志氏が提唱する、BSC(バランスト・スコアカード)戦略マップを活用したビジネスモデリング手法について講義が行われた(当日の模様は、以下のレポート記事を参照)。

参考記事
ビジネスモデリングで、何がどう変わるのか?(@IT情報マネジメント)

 それに続く第2回では、前半で第1回の講義の続きを、後半でビジネスモデリングのグループ実習を行った。まずは、そのパートの内容をレポートする。

ビジネス分析モデルの作成

 第1回では、BSCの戦略マップを使ってビジネスゴールを導き出し、現状(As is)のビジネスのビジネスユースケースモデルを作成するところまで解説が行われた。第2回はその続きとして、現状のビジネスモデルをより詳細化し、さらにビジネスゴールの達成に向けてビジネスモデルを改良して有効なシステムをその中から見いだす方法が説明された。

 「大抵のビジネスモデリングでは、ビジネスユースケースとビジネスワークフローが完成したら、そこでおしまいです。しかし、それだけではビジネスが見える化できたとはいえません」

 内田氏はこう述べる。

 「ビジネスの『ありよう』を見える化するには、ビジネス分析モデルを作成する必要があります」(内田氏)

 ビジネス分析モデルとは、ビジネスを実現するために必要なビジネスオブジェクトの「振る舞い」と、ビジネスオブジェクト間の「構造」を定義したモデルのことだ。この2つを、それぞれビジネス分析シーケンス図とビジネス分析クラス図で明確に定義できてこそ、初めてAs isのビジネスが見える化できたといえるのである。

 実際にビジネス分析モデルを作成する手順が、@IT情報マネジメントの連載記事『実践! UMLビジネスモデリング』と同じ洋菓子店の仮想事例を用いて紹介された。

 「まずは、ビジネスワーカとビジネスエンティティをビジネスワークフローから識別します。そして次に、ビジネス分析ワークフロー図を作成することにより、これらビジネスワーカやビジネスエンティティがどのタイミングで、何に対してどのように振る舞うかを明確にします。これにより、As isのビジネスの流れが見える化されます」(内田氏)

 ビジネス分析シーケンス図はUMLのシーケンス図でビジネスの流れを表現したもので、洋菓子店の例では以下のようになる(図1)。

ALT 図1 As isのビジネス分析シーケンス図

 一方、ビジネス分析クラス図は、ビジネスワーカやビジネスエンティティといったビジネスオブジェクト間の静的な構造を定義したものである。洋菓子店の例では、以下のような図になる(図2)。

ALT 図2 As isのビジネス分析クラス図

ビジネスモデルの洗練

 現状(As is)のビジネスモデルが定義できたら、今度はそれをより良い(To be)モデルへと洗練していく。

 「より良いものへ変えていくといっても、個人的な思い込みを根拠に行うのではなく、企業のビジョンや戦略にきちんとマッチしたモデルを目指さないと意味がありません。その際に指針となるのが、あらかじめ戦略マップを使って導き出しておいたビジネスゴールなのです」(内田氏)

 As isのビジネスモデルを定義する際に作成したビジネスユースケース、ビジネスワークフロー、ビジネス分析シーケンス図、ビジネス分析クラス図、それぞれに対してビジネスゴールを適用して、より良いモデルへと洗練させていく。

 洋菓子店のAs isビジネスモデルに「利益を安定化する」というビジネスゴールを適用し、商品の製造計画をきちんと立てるようモデルを洗練した結果、前記のビジネス分析シーケンス図(図1)とビジネス分析クラス図(図2)は以下のようになった。

ALT 図3 To beのビジネス分析シーケンス図
ALT 図4 To beのビジネス分析クラス図

有効なシステムの識別

 To beなビジネスモデルが定義できたら、その中の特定の範囲をシステム化することによって、ビジネスをさらにより良い方向へ導けないか検討を行う。

 「システム化の範囲を検討するに当たっては、ビジネスモデルの中でもビジネスゴールを適用した部分を中心に見ていくといいでしょう。ビジネスゴールを適用したということは、ビジョンや戦略にマッチしているということです。従って、もしその部分をシステム化することができれば、それはビジョンや戦略にマッチしたシステムになります」(内田氏)

 先ほどのビジネス分析シーケンス図(図3)でいうと、「製造」「製造計画」「在庫」といったビジネスオブジェクトがシステム化の対象として挙げることができる。下図は、それらをシステム化したシーケンス図だ(図5)。

ALT

図5 システム化されたビジネス設計シーケンス図

 ビジネスユースケースやビジネス分析モデル全般にわたってシステム化を検討する必要があるが、最終的には識別されたシステムの初期ユースケースまでを導出する。以下は、「計画管理システム」の初期ユースケースである。

ALT 図6 計画管理システムの初期ユースケース図

 ここまで導き出せれば、これ以降はビジネスモデリングではなく、システム開発のフェイズとなる。この初期ユースケースを基に、システムの具体的な設計作業を開始することになる。

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