システムアーキテクチャとSOA製品選定――分散するシステムをつなぐ製品について戦う現場に贈る分散システム構築−開発現場編(9)(1/2 ページ)

中堅メーカーの複数システムを統合するプロジェクトで開発チームの主力に祭り上げられてしまった若手技術者の豆成くん。豆成くんは懸命に先行事例や関連製品の研究を始めたのだが……。

» 2010年01月07日 12時00分 公開
[岩崎浩文,豆蔵 BS事業部]

 システム開発子会社から中堅メーカーのマメックス工業(仮名)に転職した豆成くんは、入社早々点在する複数のシステムを統合する大役を押しつけられてしまった。

 プロジェクトでは機能要件を先輩の蔵田が担当し、非機能要件を豆成くんが担当することになった。ここでまず複数システム全体のアーキテクチャを設計する必要が出てきたのだが……。独立した単体システムのみの開発経験しかなく、業務知識もシステム統合技術も持たない豆成くんは、無事プロジェクトを成功させることができるのだろうか?

豆成くん、強がる

 前回は、先輩・蔵田のアドバイスもあって、機能要件をどうやって進めていくのかについては見えてきた。次はいよいよ豆成くんがこれまで経験したことのない、しかも設計の中核を構成するシステムアーキテクチャ設計の段階である。ここまでは聞きかじりや前職の経験に頼りつつ、蔵田の支援を受けながら何とか進めてくることができた。しかし、ここから先は豆成くんをはじめ、ほかのプロジェクトメンバーも知識を持たない領域である。

 豆成くんはいよいよ逃げられなくなったことを悟り、慌てて書店に駆け込み、あるいはWebを検索して、「SOA」「分散システム」「システム統合」などという単語を頼りに情報を収集し始めた。だが、そこに出ている情報は意外にも表層的な説明や事例が多く、肝心のシステム構成や開発時/稼働後の成功・失敗事例などを得ることができなかった。青い顔で必死になっている豆成くんを見かねて、機能要件のための新チーム編成を始めた蔵田が昼食に誘った。

 「ずいぶん大変そうだな。大丈夫か?」 蔵田は定食を注文したあと、心配そうに豆成くんの顔を覗き込んだ。

 「だ、だ、大丈夫です。おおむね当たりは付きました。適用製品もいくつか候補を考えています」

 豆成くんは不安を悟られたり、不審を持たれたりしないように必死に強がってみせた。

 「……」

 蔵田はそんな豆成くんの下手な芝居を見透かしてはいたが、頑張っている豆成くんを傷付けないように慎重に言葉を選んで言った。

 「そうか、それなら安心だな。ちなみに、どんな製品が挙がってるんだ?」

 「はい――」 豆成くんは乾いた喉を我慢しつつ、焦りながら早口で説明した。

 「今回のシステム統合プロジェクトは、最近では“SOA”という単語で語られることが多い領域なんです。だからその対応製品をいくつか選んで調査し、その中から採用する形になるかと思います。ちなみにインターネットで検索したら、このSOAを採用した事例として、同業他社のミックスナッツ製作所(仮名)の記事も出てきました。わが社もこれと同じ形になるのがよいでしょうね。製品側も段々成熟してきていて、初期のころは問題があったようですが、最近では収まりつつあるように思えます。通信のセキュリティやトランザクション系も大丈夫そうですし、それに……」

 「まぁ、とりあえず水でも飲め」 蔵田は段々と抽象的になっていく豆成くんの説明を聞きながら、これはマズいと思い始めた。

 「技術の詳細について俺は分からんから任せるしかないが、特定の製品を採用するとなるといろいろ問題が出てくるぞ。例えば、製品のサポート期間でうちでは少し前に大問題になったことがある」

 「え、それは……?」 豆成くんは眉をひそめながら、コップの水を口に含んだ。

 「ああ、うちの配送部システムのアプリケーションサーバだがな、メーカー側がそれまで態度保留していたサポート期限をいきなり打ち出して、あと1年で終わりといい出したんだ。メーカー担当者は謝りに飛んで来たんだが、部長は激怒するわ、経営会議で責められるわで大変だった。今回のプロジェクトではそんなことがないように、という話も実は発足前に挙がっててな――。システム連携が入る今回は複雑度がさらに増すからもっと大変だよ。RFPの非機能要件にも記載があったが、今回その辺も考慮に入るんだよな……」

 蔵田はできる限り平然を装いつつ、ゆっくりと豆成くんを諭し始めた。

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