開発現場を3T(楽しい、定時に帰れる、高い給料)にITアーキテクトを探して 第2章(2)(1/2 ページ)

オブジェクト倶楽部は、2006年12月20日、東京・国立オリンピック記念青少年総合センターで「オブジェクト倶楽部 2006クリスマスイベント」を開催、主宰の平鍋健児氏が基調講演を行い、エンジニアのQoEL(Quality of Engineering Life)を変えていくポイントについて語った。

» 2007年01月24日 12時00分 公開
[構成:唐沢正和,@IT]

プロジェクト・ファシリテーションの成果

 オブジェクト倶楽部の「クリスマスイベント」は2006年で7回目を迎えた。今回のイベントは3つのトラックに分けて実施され、まず「プロジェクト・ファシリテーショントラック」では、ソフトウェア開発の現場をより良くするためのポイントをトピックとしたセッションが行われた。

ALT オブジェクト倶楽部主宰の平鍋健児氏

 2つ目の「技術系トラック」では、ソフトウェア開発を促進するためのツールをはじめ、設計の手法や思想などをトピックにセッションが行われた。そして、3つ目のトラックとして、参加者に電子工作を体験してもらい、作ったものを持ち帰ることができる「XFDトラック」を用意。こうした体験形式のトラックは、オブジェクト倶楽部のイベントでは初の試みだという。

 また、オブジェクト倶楽部主宰の平鍋健児氏による「世界の変化はあなたから〜ソーシャル・チェンジとコミュニティの役割」と題する基調講演が行われた。今回は、この基調講演の内容を紹介する。

プロジェクト・ファシリテーション(PF)

 私(平鍋)がソフトウェア開発の“見える化”について最初に講演を行ったのは、2004年のこの会でした。それから2年間で60回くらい講演をやっていますが、その中で、ソフトウェア開発の現場を“見える化”するための手法をいくつか紹介してきました。それが、進ちょくの見える化を行う「バーンダウンチャート」、作業の見える化を行う「ソフトウェアかんばん」とこれを使って作業を明確化する「朝会」、異常の見える化を行う「ソフトウェアあんどん」、ペアの討議内容の見える化を行う「ペアボード」などなど、さまざまな具体的手法を紹介してきました。

 そして、これらの手法を中心に“見える化”に取り組んできた成果として、ソフトウェア開発を取り巻く大きな絵が見えてきました。まず最初の成果は、こうした取り組みに「プロジェクト・ファシリテーション(PF)」という名前が付いたことです。「PF」のコミュニティとして「PFコミュニティ」も立ち上がり、私自身いろいろな人に出会って、考え方も大きく変わってきました。「PF」のポイントは、ソフトウェア開発に特化せず、人間系の部分の考え方だけで構成されている点。その意味で、「PF」はソフトウェア開発だけでなく、一般のプロジェクトにも応用できると思っています。

ALT PFのなりたち(オブジェクト倶楽部より提供)

 「PF」を構成する要素としては、アジャイルソフトウェア開発やトヨタ生産方式、ファシリテーション、コーチングといったさまざまな局面があります。“見える化”だけではないその全体像がつかめたことで、「PF」を進めることの価値や原則もはっきりと分かってきました。「PF」の原則としては、「見える化」「リズム」「名前付け」「問題対私たちの構図」「改善」という5つのポイントがあると考えています。

 「PF」を進める目的については、ソフトウェア開発のプロジェクトを成功させることはもちろんですが、エンジニアとしてより良い人生の時間を過ごす「Quality of Engineering Life:QoEL」を向上させることも重要です。この2つをアンドで実現していかないと、ソフトウェア開発の環境は、従来までの3K(きりがない、帰れない、給料安い)から3T(楽しい、定時に帰れる、高い給料)に変わっていかないでしょう。

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