UMLを使ったビジネスモデリング(後編):そうだったのか! システムユースケースThe Rational Edge(1/3 ページ)

The Rational Edgeより:IBM Rational Software Architectをはじめとする各種モデリングツールではユースケースのモデリングにどのUML図を使うのかなど、ビジネスユースケースとシステムユースケースの相違点と類似点について学ぶ。

» 2007年05月24日 12時00分 公開
[Arthur V. English(Unisys Corporation シニア学習開発コンサルタント),@IT]

◆ ビジネスユースケースモデルとシステムユースケースモデルの相違点は?

 ビジネスユースケースモデルとシステムユースケースモデルには、設計の狙い、ホワイトボックス/ブラックボックス、そして業務従事者に3つの重要な違いがある。

● 設計の狙い(Scope)

 前章では、「海上」「海中」、あるいは「海面」というAlistair Cockburnによる呼称を使って設計の狙いについて解説した。

ALT 本記事は、IBM developerWorksからアットマーク・アイティが許諾を得て翻訳、転載したものです。

 ビジネスユースケースは業務活動に重点を置いている。これらは、事業目標を達成するための作業の具体的なワークフローを示している。ビジネスプロセスには手作業によるプロセスと自動化されたプロセスの両方があり、これは長時間にわたる場合もある。

 システムユースケースはソフトウェアシステムの設計に重点を置く。アクターはどのようにしてソフトウェアシステムとやりとりするのか? システムユースケース仕様は、シテムテスト手順作成の出発点にできるようイベントの流れを十分詳しく書く必要がある。

● ホワイトボックス/ブラックボックス

 ビジネスユースケースはオープンなホワイトボックス形式で書かれる場合が多い。これらは、モデリングされる組織内の人や部署間のやりとりを記述する。ビジネスユースケースは、「現状」のビジネスモデルでのいまの組織の仕組みを記述するのに使う。そして、「現状」のビジネスユースケースモデルを再度考慮して、モデリングされる組織の今後のデザインに目を配る。価値を高める、もしくはビジネスの問題を排除するにはどのような役割や部署を新たに作らなくてはならないのか? どのような役割や部署を排除しなくてはならないのだろうか?

 システムユースケースはほとんどの場合が閉じたブラックボックスの形式で書かれる。これらは、ソフトウェアシステムの外部アクターとデザインされるシステムとのやりとりを記述する。システムユースケースはシステム要件を詳細に記述する。システムユースケースモデルの目的は、利害関係者の観点から見た要件を文書化することであり、要求/要件を満たす方法を設計することではない。

● 業務従事者(ビジネスワーカー)

 業務従事者についてはどうだろう。システムユースケース図では、ユースケースとやりとりするのはアクターだけだ。しかし、ビジネスユースケース図ではビジネスアクターと業務従事者の両方がビジネスユースケースとやりとりする。

 ビジネスアクターはその組織の外部の人間だ。ある役割であったり、別組織であったりする。例えば、刑事司法制度においては、証人、容疑者、保健社会福祉省などの政府の外部機関、あるいは信用調査所のような民間企業がビジネスアクターになる。

 業務従事者は、当該組織内部の人員もしくは部署だ。刑事司法制度では、捜査当局の捜査官、裁判官、検察官、あるいは保護監察司などが業務従事者になる。ビジネスアクター、業務従事者、およびビジネス要素がどのようにコラボレートしてビジネスユースケースを実行するのかを示すためにビジネスユースケースを実現し、シーケンスやコミュニケーション図を作成するときは、ビジネスユースケースモデルからビジネス分析モデルへと業務従事者を持ってくるほか、ビジネスユースケースの機能を提供するのに必要な新たな業務従事者の追加も行う。図1はISMプロジェクトに基づくシンプルなビジネスユースケース図を示している。

ALT 図1 ISMビジネスユースケース図 (クリックすると拡大

 図1には「容疑者」という1つのビジネスアクター、そして「警察」「検察官」、および「裁判所」という3つの業務従事者がある。また、ビジネスユースケースは「容疑者逮捕」「令状請求」「指紋と写真の取得」、および「保釈」の4つとなっている。「容疑者逮捕」を基本にしたビジネスユースケースでは、「指紋と写真の取得」が常に必須の作業となる。だが、「保釈」は「容疑者逮捕」ビジネスユースケースを拡大した任意の作業となる。

 ビジネスユースケースがどのように組織の枠を超えるかについては前述したが、多くの場合はそのようになる。「令状請求」がその好例だ。ここでは「警察」と「裁判所」が関係してくる。また、ビジネスユースケースは1つの組織だけに重点を置く場合もある。「指紋と写真の取得」がその好例だ。

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