そのプロジェクトの「目的」、見えてますか?隠れた要求を見極める!(2)(1/3 ページ)

二転三転する顧客の言動をそのままとらえるだけでは、本当の要求を見極めることはできない。顧客の言葉に振り回されないためには、要求定義のスタート時にしっかり押さえておかなくてはいけないポイントがある。

» 2007年11月06日 12時00分 公開
[並川顕,株式会社NTTデータ]

要求定義、ありがちなケース

 さて今回からは、要求定義で起こりがちな問題を具体的に挙げながら、それをどのように回避していけばいいかを解説していきたいと思います。

 まず、下記のような状況を想像してみてください。

 あなたはいま、あるシステムの更改に向けて、お客さまに要求定義のためのヒアリングを行っています。そのお客さまは、地元の顧客をターゲットとした小さな結婚相談所を営んでいます。

 打ち合わせの中でお客さまはこういいました。

「最近うちも会員数が増えてきてね。それ自体はうれしいことなのだけど、困ったことに会員に応対するアドバイザー(会員のカウンセリングやお見合いの手配をする社員)が少なくて、手が回っていないんですよね。会員からはカウンセリング時間が少ないとの不満の声もあるようでして。だから、そのあたりをシステムで何とかしたいと思いましてね」

 そこであなたは、アドバイザーが十分なカウンセリング時間を確保できるよう、彼らが行う事務処理を楽にするためのシステム案を練ります。企画書を作成し、再びお客さまのところへ勇んで出かけました。するとお客さまは、

「カウンセリングの時間がないのも確かなんだが、実は最近退会する人が増えていてねぇ、問題になっているんだ。もちろん事務処理が楽になったら、それはそれでうれしいのだが」

 といいます。

 よくよく話を聞いてみると、アドバイザーが会員に対してうまくお見合いのアドバイスをできていないため、退会が増えているようだ、とのことです。アドバイザー同士の連絡が悪く、お見合いの結果がうまく共有されていないようです。

 それならばと、あなたは今度は情報共有のためのシステムを企画することにしました。企画書は一から作り直しです。前の企画書をゴミ箱に投げ捨てて、残業もいとわず新しい企画書作成に奮闘します。そして、ようやく出来上がった企画書を手に、今度こそはと勇んでお客さまを訪ねると、

「いや、時間が取れればうまく情報も行き渡ると思うんだ。結局時間がなければ何もできないしね」

 え? やっぱり時間がないことが問題だったの? でも、情報共有もできていないんだよね?

 あなたは、お客さまが一体どんなシステムを求めているのか、すっかり分からなくなってしまいました……


 上記の例では話を分かりやすくするために、要求定義で起こりがちな問題を、あえて極端な形で表現しています。しかし、ここまで極端ではなくとも、似たような苦い経験をお持ちの方は、案外大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

要求は二転三転するもの

 上記のような場面に出くわしたときに、あなたはひょっとしたらこう思うかもしれません。「要求をはっきりさせないお客さまが悪い」と。でも、自分自身の要求がはっきり分かっているお客さまは意外と少ないものです。振り返ってみてください。プロジェクト開始時にお客さまの要求したことが、プロジェクト終了時まで一貫して変わらなかったことが、果たしてあったでしょうか?

 業務上の課題の多くは、大変複雑なものです。いくら自社業務に精通しているお客さま自身であっても、「問題はここ、だから要求はこう」とはっきり示せるものではなく、要求は往々にして二転三転します。

 ところが、要求があいまいなままプロジェクトを進めてしまうと、デスマーチ化は必至です。気まぐれなお客さまの要求変更に振り回されてシステム要件は一向に固まらず、時間だけがどんどん過ぎていき、気が付けば納期はすぐ目前に……。こんな事態は、何としても避けたいものです。

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