ではまず、ユーセージベースドリーディングから紹介しましょう。この技法は、「ユースケース」や「ユースケースシナリオ」がすでにあるとき、それに沿って対象ドキュメントを読み進める技法です(注1)。
「レビュー対象とするソフトウェアと類似したソフトウェアの開発経験が少ない」など、レビュー対象に対する知見が少ないときには、チェックすべき内容をユースケースに導いてもらえる分、特に有効です。
ちなみに、ユースケースとは、システムの機能を“ユーザーとのインタラクション”としてとらえ、対象システムが取り得る状況に応じたさまざまな振る舞いを、表や記法などを使って簡潔にまとめたものです。一方、ユースケースシナリオとは、ユースケースを文章で記述したものとなります。以下の表2はユースケースの一例です。
ID |
ユースケース |
優先順位 |
1 | 商品検索
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2 |
2 | パスワード変更
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3 |
3 | 閲覧商品一覧
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4 |
4 | 商品購入
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1 |
ユーセージベースドリーディングでは、こうしたユースケースとの間に矛盾がないか、要件定義書、設計書、ソースコード、テスト設計/テストケースといったレビュー対象ドキュメントをチェックすることで、定義の漏れや、得られる出力値の誤り、エラー処理の漏れなどを発見します。「エラーがあると、ユーザーにとって損失やダメージが大きいユースケース」から優先してチェックすることも、この技法の特徴です。この技法についてまとめると、以下のようになります。
■メリット
■デメリット
アドホックリーディングは、最も一般的なリーディング技法です。「エラー指摘」「保守性向上」といった大まかな目的を、最初にレビューアに伝えておくことで、「どのようなタイプの問題を指摘したいか」メンバー間で共有しておきます。レビュー対象の読み進め方に具体的な指示を出さないことも特徴です。
「ファントム(幽霊)インスペクタ/ファントムレビューア効果」(以下、ファントム効果)(注2)と呼ばれる相乗効果が出やすいのもアドホックの特徴です。ファントム効果とは、あるレビューアが指摘したエラーをきっかけに、別のレビューアがその指摘を分析、深堀りすることで、より本質的なエラー指摘につながっていくという“相乗効果”のことです。ファントム効果は、参加しているレビューアだけではとうてい指摘できないようなエラーを“別の誰かが発見しているような感じ”がすることから付けられた名前です。
ただ、その分、対象ソフトウェアに対する知見や、自由に意見を述べ合えるチームワークが求められます。それゆえに、レビューア間で観点が重なりがち、ブレがちというデメリットもあります。特に開発メンバーだけでレビューを行う場合にその傾向が強く、人数の割に効果が上がらないこともあります。この技法については、以下のようにまとめられます。
■メリット
■デメリット
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