あらためて、学習パターンをSECIモデルの4つのプロセスに割り当ててみましょう。
図4のように、学習パターンはSECIモデルのプロセスを全てカバーしていることが分かります。つまり、学習パターンには、学び方と学んだ知識から新たな知識を創発するプロセスまで、カバーされているということです。
各プロセスを1つのパターンで単純化すると、次のように表現することができます。
学ぶとは、1.「まねぶ」ことから(No.8)始まり、演習を通して2.身体で覚える(No.10)で身に付け、3.偶有的な出会い(No.18)の場であるグループ演習で考えの異なる人たちとディスカッションを行い、発表を通して4.アウトプットから始まる学び(No.13)を体験する。
あらためて、研修プロセスとSECIモデルに代表的な学習パターンを割り振って単純化すると図5のようにすっきりと表すことができます。
今回新人研修であらためて感じたのは個人差の問題です。各自の学校で学んできたことや個人の適性は、かなりまちまちです。演習のスピードや理解度確認テストなどで、かなり差が出ます。中には、自分は間違った世界に入ってしまったのかと悩んでしまう人もいます。
一般的に理解度の低い人ほど、ほとんど質問をしないで分からないまま進んでしまう傾向があります。では、質問しやすい雰囲気を作るにはどうすればよいか、そこで役立ったのが教わり上手になる(No.9)ことと、教えることによる学び(No.31)です。
人に教えてもらうことは、自分ばかりか教える人にとってもプラスになるのですから、どんどん教えてもらいましょう。聞かれた人は分かっているつもりが説明している内に、自分も良く理解できていなかったことに気付くこともあります。聞いた人は安心します。「何だ、分かっていないのは自分だけかと思っていたらそうではなかったのだ」と、その時はその人がさらに他の受講生や講師に質問すればよいのです。
また、「自分は理解度が低いのだ」と一人思い込んでいる人も、受講前の自分を振り返ってみれば、随分進歩していることが分かるでしょう。自らの成長の発見(No.11)をしてください。もっと自信を付けてください。
これらを折に触れ受講生に伝えることにより、質問できなかった生徒が他の人や講師に質問できるようになったことが、受講生のアンケートや他講師からのフィードバックで確認できて良かったと思いました。
最後に本稿の趣旨をまとめると、
パターン言語という言葉をあまり全面に出すと引かれてしまいますが、「学習パターン」は誰にも分かりやすく、その有用な事例です。SECIモデルとも良く当てはまっています。これは意図したものというより、自然にそうなるべくしてそうなったものだと思います。これこそがパターン言語が内包する潜在的なパワーだと思います。
私事ですが、新しいUML入門書「ゼロからわかるUML超入門」(技術評論社)が完成しました。UML入門書は多数あり、すでに出尽くされ、一時のブームが去った感がありますが、今あえてこのような形でこのような入門書を世に出すのには、“筆者の思い”が込められています。筆者自身にとってもアウトプットから始まる学び(No.13)と教えることによる学び(No.31)が多々あり、魅せる力(No.34)を工夫し、前著よりは成長の発見(No.11)をしたと確信しております。
「よくわからないからこそ、まずはどっぷりつかってみよう」。本書にて、UMLにまずはつかる(No.7)を始めてください。よろしくお願いします。
河合 昭男(かわい あきお)
大阪大学理学部数学科卒業、日本ユニシス株式会社にてメインフレームのOS保守、性能評価の後、PCのGUI系基本ソフト開発、クライアント/サーバシステム開発を通してオブジェクト指向分析・設計に携わる。
オブジェクト指向の本質を追究すべく1998年に独立後、有限会社オブジェクトデザイン研究所設立。OO/UML関連の教育コース講師・教材開発、Rational University認定講師、東京国際大学非常勤講師。
著書に『ゼロからわかるUML超入門』(技術評論社)、『まるごと図解 最新オブジェクト指向が分かる』(技術評論社)、『まるごと図解 最新UMLが分かる』(技術評論社)、監修『JavaデベロッパーのためのUML入門』(ソフトバンククリエイティブ)、共著『明解UML――オブジェクト指向&モデリング入門』(秀和システム)など。『ITアーキテクト』(IDG)、『UML Press』(技術評論社)、『ソリューションIT』(リックテレコム)などの専門誌に執筆多数。
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