
BPMの神秘を解明する
2007/6/25
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はじめに − BPMは“銀の弾”か?
BPTrendsの読者の皆さんは、ビジネスプロセス・マネジメント(BPM)について、すでに十分な知識をお持ちに違いない。しかし、われわれの経験に照らしていえば、アジア太平洋地域のビジネスマネージャとエグゼクティブの大多数は、まだ困惑の域を出ていない。BPMが知らなければならない“何か”であることは彼らも承知しており、多少の知識は持ってはいるけれども。ガートナーやフォレスターといった調査会社が、その伝道を行っていっており、また、ほとんどのベンダが自社の製品とサービスをBPMとして位置付けるようになった。
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企業内部にも、BPM導入を推す組織的動きがある。端的にいえば、BPMがすべての企業課題に対応できる“銀の弾”のようであるかのような扱いである。別の表現をすれば、「ここにすべてのソリューションがある! あなたの問題をいってごらん」とでもいいたげだ。
本稿は、BPMにまつわる神秘性を取り払い、維持可能なビジネス・ベネフィットを獲得するための優れたアプローチとしての実像を示す。しかし、人生におけるすべてがそうであるように、容易に達成できるものではない。また、“キラーアプリケーション”を買えば済むような事柄でもない。BPMは考え抜かれたアプローチであり、それに打ち込んだ有能な人々の膨大なエネルギーと熱意の結晶なのだ。
BPMに至る歩み
BPMに至る道程は平坦ではなかった。プロセスを基盤として組織効率を上げるための、さまざまな試みの成功と失敗の経験を経て、ようやくたどり着いた地点である。
ここで、ビジネスプロセス重視のマネジメントの歴史を簡単に振り返っておくことも、意義を持つに違いない。
1980年代には、トータル・クオリティマネジメント(TQM)に、かなり大きな関心が集まった。1990年代に入ると、ハマー(Michael Hammer)とチャンピー(James A. Champy)が提唱したビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)が、これに続いた。BPRは、大成功と失敗が交錯する数奇な運命をたどった。
BPRに続き、1990年代半ばから後半にかけて、企業の注目を集める「次の目玉商品」となったのが、ERPシステムである。企業により優れた業務のやり方を提供するシステムと位置付けされ、多くのベンダが「あらゆる問題に対処するソリューション」として販売した。しかし、ERPシステムによって企業のプロセスにかかわる問題が解決されることはなかった。また、期待されたプロセスの効率と有効性の向上も果たされなかった。
1990年代終末から2000年代に向けて、顧客の観点と経験に焦点を合わせ広範に取り込んだ多くのCRMシステムが市場に出された。このシステムはフロントオフィスに光を当てはしたが、バックオフィスのプロセスを改善することはなかった。ごく最近では、シックスシグマが存在感を増し始めている。
「アイデアを出すのは容易だが、それを成し遂げるのは難しい。塹壕(ざんごう)の奥深くには……、多くの改革計画の死骸(しがい)が転がっている」とは、1993年にハマーが発した言葉であるが、一体、その塹壕の「所有者」は誰なのだろう。それはあなたであり、私であり、すべての人々なのだ。「塹壕に陣取った人々」に課せられた変革は、進化的あるいは革命的プロセスの一環でなければ成功しない。
「リーダーシップがいかに強力でも、できることは限られている。機械的な官僚機構からフレキシブルで自主的に運営される組織への移行に求められるのは、多くのマネージャと作業者の心構えなのだ」(フォーチュン誌、1994年8月22日号)。
次の目玉商品(あるいは、BPM解明の始まり)
いま、われわれの手元にはBPMがある。これもはやりの3文字略語だ。
では、なぜBPMが「次の目玉商品」とされるのか。そして、なぜ当然のことのように「次の目玉商品」が現れ、やがて消え去っていくのだろうか。
通常、「次の目玉商品」の開発には、以下の4つのステップがある。
- コンセプトプロモータ(ベンダ、アナリスト、など)が、広告宣伝、売り込みの口上、販売促進用品、調査結果、成功事例を通じ、市場で新商品をあおり立てる。
- 続いて、これらのプロモータが、以前に出されたすべての「過去の目玉商品」をけなし、新目玉商品こそがベストと売り込み始める。
- 次のステップでは、購入意思決定者に分かりやすくするために、「新目玉商品」を極めてシンプルなものに仕立て上げる。すなわち、複雑でなく運用も簡単といったメッセージを加える。
- 最後に、プロモータ(特にベンダ)は、既存の製品とサービスにも新しいラベル(ここでは、BPM)を付けて販売する──たとえ、その商品がラベル表示の一般的定義に合致していない場合でも。このことから、同じラベル表示に対し、ベンダの数にほぼ匹敵する数の定義が生まれる。
本書における新ラベルは「BPM」を指すが、上記と同じ現象が芽生えつつある。歴史上の「新目玉商品」を追跡してみると、それらのすべてを貫く1本の糸の存在に気付く。すなわち、それらはビジネスプロセスを取り巻く動きであり、その改善への取り組みであった。
ベンダやコンサルタントは、こぞって新しいアイデアに飛び付く。多くの場合、それらは極めて優れたものだ。そして彼らは、そのアイデアが成熟し、定常的に使用あるいは運用されるようになるまで担ぎ上げるのである。
BPMのハイプサイクル
図1のBPMハイプサイクルは、過去20年間強にわたるプロセスサイクルの進展状況の概略を表す。
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| 図1 BPMハイプサイクル |
シックスシグマは1986年に考案され、「プロセス」に対する認識を啓蒙(けいもう)した。続いて1990年7月、マイケル・ハマーがハーバード・ビジネスレビュー誌に「Reengineering Work: Don't Automate, Obliterate」と題する記事を発表し、BPR運動が始まった。その後しばらくBPRをめぐる動きが続いたが、スミス(Howard Smith)とフィンガー(Peter Fingar)による「Business Process Management: The Third Wave」(2002年)という著書が大きな関心と議論を喚起した。今日では、BPMがマネジメント上の最重要課題として議論の俎上にあるものと思われる。
参考書籍・記事
- 「Reengineering Work: Don't Automate, Obliterate」Michael Hammer=著/Harvard Business Review 1990 July-August(邦訳:「情報技術を活用した業務再構築の6原則」 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 1994年1月号に掲載)
- 「Business Process Management: The Third Wave」Howard Smith、Peter Fingar=著/Meghan Kiffer Pr/2002年(邦訳なし)
| Page1 はじめに − BPMは“銀の弾”か? BPMに至る歩み 次の目玉商品(あるいは、BPM解明の始まり) BPMのハイプサイクル |
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| Page2 何がBPMを神秘化しているのか 氷山現象 一つの「現実」について考える チェンジマネジメントとパフォーマンス評価 終わりに − BPMの成功の鍵 |
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- 第1回 ビジネスプロセスの標準規格
- 第2回 CEOはどう考えるか
- 第3回 BPM市場のこれからを読む
- 第4回 BPMの神秘を解明する
- 第5回 プロセスのマネジメントは、誰が担うのか?
- 第6回 BPMのビジネスケースづくり(前編)
- 第7回 BPMのビジネスケースづくり(後編)
- 第8回 第3のプロセス − マネジメントプロセスとは何か?
- 第9回 BPMに求められるプロジェクトマネジメント・スキル
- 第10回 ビジネスプロセス改革と3つのイノベーション
- 第11回 BPMプロジェクト成功の鍵[1] - コアアプローチ
- 第12回 BPMプロジェクト成功の鍵[2] - 推進組織と機会特定
- 第13回 BPMプロジェクト成功の鍵[3] - ROIの検討
- 第14回 BPMプロジェクト成功の鍵[4] - 支援獲得と実行組織
- 第15回 BPMプロジェクト成功の鍵[5] - 分析・把握・発見
- 第16回 BPMプロジェクト成功の鍵[6] - 継続的改善活動
- 第17回 「ビジネスとITが出合う場所」のために何が必要か?
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