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ビジネスに差がつく防犯技術(12)


目的意識の低い内部監査では意味がない

杉浦 司

2009/2/2

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記録から見えてくることと見えないこと

 情報セキュリティ関係の監査では、入退室記録をチェックすることが多い。

 しかし、入退室記録が本来持つ意義をしっかり理解していないために、お粗末な評価がされているケースが少なくない。

 例えば、サーバルームへの入室に対して入退室記録が義務付けられていたとしよう。

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 そこにある保守委託先のエンジニアが入室し、入退室記録に9時から17時まで「サーバ作業」をしていたと記入していたとしよう。後日、監査担当者はこの記載を見てどう思うだろうか。サーバルームに「サーバ作業」のために終日入室していたということが分かったとしてもあまり意味がない。

 もし、その日にサーバへの不正アクセスがあったとすると、真っ先にこのエンジニアが疑われてしまうだろう。そして、結局、このエンジニアが犯人ではなかったとしても、彼のせいで真犯人捜しが遅れてしまうことになる。

 もし、彼が作業内容としてもう少し具体的な内容を書いていれば、疑われることもなかっただろうし、無駄な捜査に時間を取られることもなかったかもしれない。

 本来、入退室記録は、不審な者を発見するためというよりも正当な者を判別するために意義があるものである。不正侵入する者はできるだけ跡を残したがらない。やましい気持ちがないからこそ、堂々と跡を残せるのである。

 「サーバ作業」とだけ書いたこのエンジニアは不正アクセスとまではいかなくても、余計なことまでやっていた疑いを持たれても仕方がない。あるいは、モラルが低く情報セキュリティに対する理解があまりないのかもしれない。

 結局、監査する側としては、入退室記録からは判断することができないため、彼に面談して直接質問することによって、「サーバ作業」が適切なものだったのかを確認するか、彼の作業を観察することを考えることになる。記録から見えてくることと、決して見えないことがあるのだ。

「はい」「いいえ」で答えにくい質問をしよう

 先の例でこのエンジニアに対して質問によって適否を確認する場合、「はい」「いいえ」で答えにくい質問をする必要がある。

 いつ、どこで、誰が、何を、どのようにといった質問によって、具体的に回答させるのである。具体的な回答は実際にやっていることでないとできないし、それが虚偽であれば、「はい」「いいえ」で答えにくい質問の連続によって、矛盾を生み出すことになる。もちろん、それが真実であれば、どれだけ質問が連続しようとも矛盾は生じない。

 仮に回答者に勘違いがあって矛盾があったとしても、回答者に少しも焦りはない。「はい」「いいえ」で答えにくい質問の連続は、監査や不正捜査において大変強力な道具となるものなのだ。

現場観察では反応を見る

 最後に、監査技法としての現場観察を挙げておこう。観察とはまさに自分の目で確かめるということだ。

 とはいうものの、ただ見ているだけでは、見えるものも見えてこない。目の前に起きている状況から「何かを見たい」という意思がなければ、効果のある観察は期待できない。

 委託先視察を思い浮かべてほしい。委託先は見てほしくないものを隠そうとするし、そうでなくてもよそ行きの言動で飾り付けるだろう。現場観察で見たいものを見るためには、見られるような状況を作り出すことが必要だ。

 決算業務を見たいならば、期末に訪問すればよいというのは容易に思い付くが、いつ起きるか分からないような状況を、釣り糸を垂らすがごとく待ち続けるのは困難である。警察で問題になっているような機会提供型のおとり捜査はやり過ぎだろうが、見たい反応を引き起こすためのトリガーを考えることは必要である。

 例えば、先に見た入退室記録の場合で、部外者が入室する際はゲストバッジを着用してもらったり、社員が同行するといったルールが守られているかを確認するのであれば、監査担当者自らがゲストバッジを外して1人で入室して周りの反応を待てばよい。

 もちろん、事前に監査業務として関係者から許可を取っておくことが必要だが。

 今回は、重要性が高まる内部監査を効果的に行うために留意すべき点について、いくつか説明した。良い行いにも悪い行いにも因果関係があり、その行いの本質に迫れば真実が見えてくる。

 さて、この連載も終わりに近づいている。次回は、総まとめとして防犯の技術を振り返ってみることにしよう。

筆者プロフィール
杉浦 司(すぎうら つかさ)
杉浦システムコンサルティング,Inc 代表取締役
京都生まれ。
MBA/システムアナリスト/公認不正検査士
・立命館大学経済学部・法学部卒業
・関西学院大学大学院商学研究科修了
・信州大学大学院工学研究科修了

京都府警で情報システム開発、ハイテク犯罪捜査支援などに従事。退職後、大和総研を経て独立。ファーストリテイリング、ソフトバンクなど、システム、マーケティングコンサルティング実績多数。
■要約
多くの上場企業は、もうじき始まる日本版SOX法の外部監査に向けて、内部監査を行っている段階だ。しかし、内部監査においては、はっきりとした目的意識や意義を理解したうえでないとやる意味がない。また、非上場企業であっても、会社法が株式会社に求めている危機管理体制の整備の一環として、内部監査部門の立ち上げと強化は不可欠だ。

内部監査では、正当性と有効性が重要だ。正当性では、指摘事項に間違いがあってはならないうえに、監査手続きも不当であってはならない。有効性では、指摘事項の意義が問題となる。監査計画を立てる際には、発見すべき問題状況を漠然としたまま監査するのではなく、具体的な問題状況をイメージすることが重要だ。それにより、監査方法も具体的なものとなり、有効性を増すことができる。

発見すべき問題状況を具体的なイメージにするための分析方法として、ミスユースケースが有効だ。監査対象者が不正に走ったと想定して、その好ましくない行動をミスユースケースによって分析し、その結果を基に調査すべき資料や担当者への質問事項を考えるのだ。担当者への質問は、「はい」「いいえ」で答えにくい質問をすることで矛盾を暴くことができる可能性が高くなる。

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目的意識の低い内部監査では意味がない
  Page1
重要性が高まる内部監査
内部監査に求められる正当性と有効性
監査設計に有効なミスユースケース
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記録から見えてくることと見えないこと
「はい」「いいえ」で答えにくい質問をしよう


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