いま、求められる新たな「情報作法」情報活用の新・お作法(1)(2/2 ページ)

» 2006年11月09日 12時00分 公開
[村田聡一郎,リアルコム]
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IT化に「ブレーキ」を利かせる時期

 この10年、多くの企業がホワイトカラー業務の「IT化」を熱心に推進してきた。「PC1人1台」に始まり、「LAN」「グループウェア」「インターネットイントラネット」「ポータル」……。「IT良いこと、どんどん入れよ」「他社に遅れるな!」とばかりに、この10年、IT化のアクセルはほぼ踏みっ放しだったのだ。

 その結果、何が起きたか? 「IT過剰」である。

 IT化の進展によって、誰もが大量の情報をほぼノーコストで手軽に送受信できるようになったため、オフィスを行き交う情報の量は爆発的に増えている。しかし、人間がそれを取り扱う能力の方はそれほど急激に伸びるわけではないから、結果として「情報洪水」が発生している。皆さんは毎日2時間以上を「メールの処理」にだけ費やしていないだろうか? しかも、それが改善する見通しは立っていないのではないだろうか? つまり現在、人間の能力や必要性を大きく上回るITが提供されており、ツールを使っているはずの人間がツールに振り回されているのである。

 この10年で、ITは一通り行き渡った。そろそろ「ブレーキ」を利かせる時期だ。「ITを入れる時代」から、「ITを使いこなす時代」への転換が求められているのである。

ALT 図表3 アクセルからブレーキへ

会議、会議、また会議

 紙の時代から、いまに至るまで「まったく改善の兆しが見えない」のが、“会議の効率化”ではないだろうか。

 効率化しようという運動は以前から行われているが、それに成功しているという話はほとんど聞かれない。あるアンケート調査によると、「1日の就業時間の中で削減可能な業務は?」という問いに対し、「会議」という回答が60.4%を占めトップであった。

 効率的な会議進行も、社会人にとって必須スキルの1つである。社員にそれを身に付けさせることは業務生産性の向上に大きく寄与するはずだ。

改善機会は非常に大きい

 ここで、いま一度ご認識いただきたいのは、“お作法”の徹底による改善機会の大きさである。オフィスワーカーの業務時間において「情報関連業務+会議」が占める割合は53.6%(図表4)にも及ぶため、その改善機会もまた巨大である。

ALT 図表4 “お作法”徹底による改善機会(出典:大手企業20社に対するリアルコム調査)

 仮に社員1人当たりの分給を40円(時給2400円、年俸460万円)とし、社員数を1000人とすると、年間の総人件費は46億円であり、その5.4%はおよそ年額2.5億円の削減となる。もし社員の平均年俸が800万円、社員数1万人なら、その5.4%は実に年額43億円、5年間では200億円を超える。見過ごせない金額ではないだろうか?


 今回は、この10年間のオフィスIT化の流れと、“仕事のお作法”がその流れに対応できていないことを述べた。次回以降、具体的な“新・お作法”について解説していく。

筆者プロフィール

村田 聡一郎(むらた そういちろう)

リアルコム株式会社 ディレクター

東京都立大学法学部卒、ライス大学MBA

外資系IT企業勤務、米国本社駐在を経てリアルコムに参画。ナレッジマネジメントコンサルタントとして、国内外の大手企業のナレッジマネジメントプロジェクト・企業変革プロジェクトに参画。主にIT系、グローバル、営業系のナレッジマネジメントに精通。


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