人間関係とやる気の問題は、こうすれば解決できるITユーザーのためのメンタル管理術(3)(1/3 ページ)

職場の悩みとして常に上位に位置し続ける「人間関係」。でも「仕方がない」とため息をつくばかりでは何も変わらない。それよりも、人が無意識に使い分けている「5つの心」の存在に気付いてほしい。自分の中の“5つの個性”をコントロールできれば、あんなに苦手だったあの人も、最高のパートナーになるかもしれない。

» 2010年06月29日 12時00分 公開

 前回は、心の栄養“ストローク”についてお伝えしました。受け取ると快適な気持ちになる「プラスのストローク」を与え合う習慣を作れば、1人1人のモチベーションが高まり、組織は自ずと活性化します。そして、そうしたプラスのストロークを与える最も身近な手段が「あいさつをする」などの声掛けであると解説しました。しかし、実はここに1つ大きなハードルがあります。

 そう、いままでそうした習慣がなかった場合、妙な照れくささや「不自然になりはしないか」などと恐れる気持ちも手伝って、「あいさつ」すら、思うようにはしにくいものなのです。実際、前回の記事を読まれて「そんなこと言っても、そもそも自分から話し掛けるような性格でもないし……」と思われた方も多いのではないでしょうか。

 しかし、プラスのストロークが心の健康にとって不可欠なものであり、それを自然に与え合える関係作りが職場の雰囲気を良くするうえで非常に重要であることは、前回も述べたとおりです。従って、「あいさつ」「声掛け」という行動を阻んでしまっている「そんな性格でもないし……」という心の問題も、できれば解決しておきたいものですよね。

 では、どうすれは良いのでしょうか? ポイントは、人の「性格」を「心の特性が行動として表に表れたもの」と定義できる点にあります。つまり、性格に絡む問題を解決するためには、具体的な行動についてのみ考えを巡らせていても策を見いだすことはできず、解決する――すなわち“性格を変える”ためには、具体的な行動を生み出している「心そのもの」にアプローチする必要があるのです。

 ただ、その際に気を付けたいのは、「人の性格は生まれながらに決まっている」という先入観です。もちろんDNAの影響もありますが、心理学理論「TA(Transactional Analysis:交流分析)」における「自我状態分析」では、「その人の性格(行動特性)は、0歳から12〜3歳くらいまでに、どんなストロークを受けたかで決まってくる」と考えられています(ここで「親のせいだ」「育ちのせいだ」とは思わないでくださいね。そう考えると、そこで思考が止まってしまいます)。

 まずはそうした先入観を捨てて、「性格は後天的に形成されたもの」と分析されていることに注目してください。「前世や遺伝の影響で性格が決まってしまう」と言われてしまうとどうしようもありませんが、「後天的に形成されたもの」なら、これは「これからも変わる可能性がある」ということです。 いや、もっとポジティブに「その人の意識と行動次第で“性格は変えられる”」とは考えられないでしょうか?

 そう、実はこの“自覚”が最も大切であり、変えられると気付きさえすれば、性格は本当に変えられるのです。「変える」というより、「意識的に性格(心の特性と、そこから生じる行動の特性)をコントロールできるようになる」と言った方が正確でしょうか。これができるようになれば、「あいさつ」の問題だけではなく、人間関係の問題や、チームのやる気の問題

、また、自分の行動をあらゆる面で抑制してきた“さまざまな心の問題”も容易に乗り越えられるようになるはずです。

 では、「意識的に性格(心の特性と、そこから生じる行動の特性)をコントロールする」ためには、具体的にはどうすればよいのでしょうか? そのためには、まず自分の心の特性について知らなければなりません。今回は、TAの「自我状態分析」という理論を用いて、「心と行動の特性」について解説していきたいと思います。

人は“5つの心”を使い分けている

 TAの「自我状態分析の理論」では、人の心が持つ特性は、大きく「Parent(親)」「Adult(大人)」「Child(子供)」の3つに分けられると考えています。

 Parentは「親のような心」を指します。面倒を見たり、叱ったり、幼いころに両親や周りの大人たちにしてもらっていたことを、自分の子供や年下の後輩などにしてあげることがありますよね。そうした行動を起こさせる心の特性がParentです。

 Adultは「大人のような心」のことです。「論理的、客観的に情報を整理して、いま自分が取るべき行動を判断する」ような心の特性です。感情に流されず、冷静に、情報を取り扱う点が特徴です。

 Childは「子供のような心」を指します。無邪気に遊びを楽しんだり、人から指摘をされてムッとしたり、子供のころに感じていたようなことを感じているとき、心はこのChildの状態にあります。

 そして、ParentとChildのそれぞれを、さらに2つのタイプに分けています。まず、Parentを「Critical Parent(批判的な親)」と「Nurturing Parent(保護的な親)」に分類しています。

 「Critical Parent(批判的な親)」は「厳しいお父さん」というイメージです。「こうあるべきだ」と理想を掲げたり、「なぜできない!?」と叱ったり、規律を守ったりといったように、「自分の価値観をしっかり持って、相手や周りを律していく」ような心の特性を指しています。

 「Nurturing Parent(保護的な親)」は「優しいお母さん」です。面倒を見てあげたり、優しくなだめたり、「なぜできないの!?」ではなく「こうすればできるよ」「もうちょっとだね」と支援的な立場から相手にかかわる志向性が特徴です。

TA 図1 人の心は「Critical Parent(批判的な親)」「Nurturing Parent(保護的な親)」「Adult(大人)」「Free Child(自由な子ども)」と「Adapted Child(順応した子ども)」という5つの特性を持っている(クリックで拡大)

 一方、Childについては「Free Child(自由な子供)」と「Adapted Child(順応した子供)」という特性で分けています。

 「Free Child(自由な子供)」は、持って生まれた天真らんまんさや創造力を発揮することが特徴です。

自分の直感、欲望のままに発言し、行動します。喜怒哀楽の感情表現が非常に豊かな“やんちゃ”なイメージです。

 「Adapted Child(順応した子供)」は「しつけによって芽生えた自我の状態」です。「両親に褒められたい」「叱られないようにしなきゃ」と行動しながら身に付けた自我ですので、言うことをきちんと聞く、周りの状況に合わせるといった特徴があります。一方で、言われたことにカッと腹を立てるなどの反抗的な特徴も含まれています。基本的には「周りに合わせるいい子タイプ」の振る舞いを作り出す心の特性ととらえてください。

 以上のように、人の心は「Critical Parent」「Nurturing Parent」「Free Child」「Adapted Child」「Adult」という5つの特性に分けられます。そしてTAの「自我状態分析理論」では、「これらがどのようなバランスで心を構成しているか」によって、その人の性格を可視化することができるとしているのです。

 ここまでお読みいただいて、自分の心はどの傾向が強いのか、ある程度、認識できる方もいらっしゃるのではないでしょうか? いずれかの特徴が群を抜いて強い人が周りにいると、イメージしやすいかもしれませんね。

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