SharePointを使えば、Excelはもっと便利になるSharePoint徹底活用カタログ(1)(1/2 ページ)

「SharePointを使えばいろんなことができる」とは聞いているが、具体的に自社ではどんなことができるのか? 興味を持ちながらも活用イメージが持てず、二の足を踏んできたユーザー企業の皆さんに向けて、“いまからできるSharePointの身近な活用事例”を1つずつ伝授していきます。

» 2010年06月10日 12時00分 公開
[村中直樹@IT]

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 マイクロソフトはこの1年ほど、急速にサーバ商品の改訂を進めてきた。その中でも「Microsoft Office SharePoint Server」(以降、SharePoint)は従来の「Microsoft Office PerformancePoint Server」の機能を取り込むなど、製品としての位置付けを大きく変化させ、いまやOfficeシリーズの中でも“目玉”と呼んで差し支えないほどのポジションを与えられている。

 しかし、米国ではSharePointが普及し活用事例も豊富にあるのに対し、日本での導入・活用事例数はいまひとつ伸び悩んでいるようだ。これは導入事例がまだ少ないうえ、データベースサーバのような“分かりやすい”サーバでもないことから、多くの企業が「自社ではどう活用できるのか」を具体的にイメージできないことが原因なのではないだろうか。

 そこで本連載では、技術的な視点からではなく、「SharePointとは何か?」「どんなことができるのか」を紹介していきたいと思う。しかし、ただ純粋に機能を説明するだけなら、マイクロソフトのホームページが用意されている。よって、ここではひとひねりして、多くの読者にとって身近でイメージしやすい視点??“Microsoft Office Excelとの連携”にフォーカスして、「現状の業務の延長ではこんな使い方ができる」といった具体的な活用イメージを中心に紹介していきたい。

 なお、対象とするソフトウェアのバージョンは、特に断りがない限り、SharePoint 2007、Office 2007を想定している。

Office 2007以降は、「チームの生産性向上」がメインコンセプト

 では早速、本論に入ろう。まず押さえておきたいのはSharePointの位置付けだ。周知のとおり、2010年5月、Officeシリーズは3年ぶりのモデルチェンジを行い、「Microsoft Office 2010」として、ExcelやPowerPointといったおなじみのオフィスアプリケーションが軒並み機能強化された。

 前のバージョンであるOffice 2007が世に出た際は、見た目や使い勝手がそれまでのOfficeシリーズと大きく変わったことから、メディアなどは「見た目」の変更点にフォーカスした報道を行い、利用者らも主に「使い慣れたUIが変更されたこと」に戸惑いの声を挙げていた。

 しかし、ここで誤解してはならないのは「単に見た目や操作感の違いだけでなく、実際にはOfficeシリーズの位置付け自体が、Office 2007で大きく変わった」ということだ。それまでは「個人の仕事の生産性を上げるためのツール」であったが、「組織的な仕事の生産性を上げるツール」へとメインコンセプトを変更したのである。

 セキュリティ面も大幅に見直され、企業における“基幹系システムの利用者側インターフェイス”としての位置付けが与えられたほか、バックグラウンドにあるさまざまなサーバ群との“連携を前提とした設計思想”に変わったことも注目に値する。

 そして最も強調しておきたいことは、そうしたサーバ群の中でも、SharePointはOfficeアプリケーションとの“連携”を特に重視した存在となっていることだ。

そもそもSharePointで何ができるのか?

 ではOfficeアプリケーションとの“連携”で何ができるのか、これについては、実にさまざまなことができるため、一言では説明できない。よって以下ではSharePointが実現できる機能のうち、代表的なものだけを挙げてみよう。

  1. 一種のファイルサーバ機能。通常のファイルサーバでは、データを保存する際、「C:」などのドライブレターを割り当ててフォルダ/ファイルを指定するが、SharePointでは直接Webサイト(「http://〜」で表現されるエリア)に保存する。私的なWindows Live SkyDrive(2008年2月にマイクロソフトが公開した無料のオンラインストレージサービス)ともいえる
  2. 一種のファイルコンバータ機能。例えば、Excelのファイルを保存すると、Webブラウザから参照できる形式に自動的に変換する機能。
  3. 一種のワークフローシステム。ある個所にデータを保存すると、あらかじめ設定した人/組織に対して「承認」作業などのワークフローを発生させたり、「関係者へ自動的にメールを送信する」などの手続きを実現できる。また、承認/未承認などのステータスの一元管理もできる。
  4. 一種の内部統制システム。基幹業務での利用に耐えうるセキュリティや、内部統制上の課題をSharePointがサポートし、コントロール不能に陥るリスクを軽減する。
  5. 一種のOfficeファイル検索システム。あらかじめ、さまざまなインデックスを作成しておき、文書内の文字列などで複数のファイルを横断的に検索できる。

 以上のようにSharePointはさまざまなことができる。むろん、より複雑な使い方をしようとすれば、詳細な設定作業やコーディングが必要になる。また、事実上、ActiveDirectoryやSQL Serverと組み合わせて使うことが前提となっているし、メモリも最低でも4ギガバイト必要であり、64bit環境でないと構成することが難しいなど、動作環境の面でも制約が多い。

 また、SharePointで「容易に実現できる」と言われているワークフローは、日本企業のようなボトムアップ型の業務フローを必ずしも意識しているわけではない。そのため「差し戻し」など、複雑な条件分岐を行うためには、SharePoint DesignerやVisual Studioなどのツールを使ってワークフローを設定する必要があるなど、“使いこなす”ためには、それなりの知識や手間を要する。

 とはいえ、基本的なことであれば、以上のような機能をノンコーディングですぐに実現できることがSharePointの大きな魅力なのである。実際マイクロソフトも、「導入しただけですぐ活用できる」事例を製品ホームページなどでアピールしている。

 では次のページでは、ファイルサーバとファイルコンバータ機能を使って、Microsoft Office Excel(以下、Excel)の機能を拡張するケースを紹介しよう。

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