スマホはマーケティングを変える企業のためのスマホ徹底“活用”術(3)(1/2 ページ)

企業としての導入よりも個人としての導入が進むスマートフォン。コンシューマをターゲットとする企業にとっては、新たなマーケティングデバイスになる。今回はスマートフォンを活用することにより、今までにないどのようなマーケティング方法が考えられるかを検討してみる。

» 2011年09月16日 12時00分 公開
[井上実,M&Iコンサルティング]

個人先行のスマートフォン導入

 第1回でも述べたように、スマートフォンの導入は企業よりも個人が先行している。2012年には携帯電話の半数がスマートフォンになると予測されている一方、企業としてスマートフォンを利用している企業は23%にとどまっている(2011年1月Computerworld編集部アンケート調査結果より)状態にある。

 個人をターゲット顧客とする企業にとって、スマートフォンは新たなマーケティングデバイスとして活用することができる。携帯性が高く、常に身に着けているスマートフォンは情報伝搬確率が高くなるため、個人ごとにカスタマイズされた必要な情報を必要な時に提供できる。

 PCでも、マイページを顧客ごとに作成し、今までの購買履歴からおすすめ商品を表示するなど、個人ごとにカスタマイズした情報提供は行われていたが、携帯性が低いため、Just in Timeでの情報提供は難しかった。これがスマートフォンでは可能になり、顧客はどこでも必要な情報を必要な時に入手することができる。

 カスタマイズされた情報ではないが、筆者がよく使っているのは地下鉄を乗り換えるときに、最適な車両を教えてくれるアプリ。例えば、東京メトロ 東西線の茅場町のホームで、「九段下まで行って、半蔵門線に乗り換えるのだけど、何両目に乗っていれば良いのかな」などというときに使っている。同じルートでもう一度乗らない限り、この情報はこの時にしか有効ではない。Just in Timeに情報が得られることに価値がある。

 スマートフォンは、Just in Timeでの情報提供が可能なため、One to Oneマーケティング(顧客1人1人に最適なカスタマイズしたモノや情報を提供するマーケティング手法)を実現するPC以上に有効なコミュニケーションデバイスと言える。

顧客の場所まで特定できるスマートフォン

 さらにスマートフォンにはGPS機能がある。これを活用すれば顧客の現在地をとらえることが可能となり、必要な時だけではなく、必要な場所で必要なモノや情報をカスタマイズして提供することが可能になる。

 昔、「Time (時間)、Place(場所)、Occasion(場合)に合った服装をするべき」という意味でTPOという言葉があったが、まさにJust in Timeを超えるTPOに合った究極のOne to Oneマーケティングがスマートフォンによって実現できる。すでに、これを実施している先進企業の事例を紹介する。

必要な時に必要な場所に必要なモノを届ける

 必要な時に必要な場所に必要なモノを届けるサービスとしては、日本交通の「いま・すぐ・ここにタクシーを」と、ドミノ・ピザの「Domino’s App」の事例が挙げられる。

 日本交通の「いま・すぐ・ここにタクシーを」(図1参照)は、スマートフォンのアプリ(iPhone、Androidのどちらにも対応)を起動すると、GPS機能により、現在地を含む地図が表示され、タクシーに来てもらう場所を簡単に指定することができる。あまり土地勘がなく、周りに目標となる建物がない場所にタクシーを呼ぼうとすると、電話ではなかなか現在地を正確に伝えることは難しいが、スマートフォンであれば、このように容易に現在地をタクシー会社に伝えることができる。

ALT 図1 日本交通の「いま・すぐ・ここにタクシーを」。スマートフォンのアプリを起動すると、GPS機能によって地図が表示され、タクシーに来てもらう場所を簡単に指定できる(クリックで拡大)(日本交通のWebサイトより)

 次に「ご注文内容」画面に移り、同じような手順で行先を地図から指定することもできる。これにより、行先の言い間違いや勘違いを減らすことができる。注文をすると、「ご注文完了」画面に移り、配車されたタクシーの番号、到着予定時刻などを確認できる。また、配車されたタクシーの現在地を確認したり、走行予定ルートや概算費用などを表示させたりすることもできる(図2参照)。

ALT 図2 行先を地図から指定することもできる。これにより、行先の言い間違いや勘違いを減らせる(クリックで拡大)(Android MarketのWebサイトより)

 ドミノ・ピザの「Domino’s App」は、お花見や海水浴など屋外で遊んでいるときに便利なサービスである。スマートフォンのアプリ(iPhone、Androidどちらにも対応)を起動すると、GPS機能により、現在地を含む地図が表示され、ピザを配達してもらう場所を簡単に指定できるのは日本交通と同様。あとは注文したいピザやサイドメニューなどを指定すれば注文完了となる。ピザが届けられるまで、遊ぶためのゲームまで提供されている(図3参照)。

ALT 図3 日本交通の事例と同様に、GPS機能によって現在地を含む地図が表示され、ピザを配達してもらう場所を簡単に指定できる(クリックで拡大)(ドミノ・ピザ「ドミノオンライン本店」のWebサイトより)

 現在地を顧客が伝える難しさをスマートフォンのGPS機能が解消し、企業にとっては容易に正確に顧客の現在地を把握し、モノを届けることを可能にしている。

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