スマホは働き方を変える企業のためのスマホ徹底“活用”術(4)(1/2 ページ)

スマートフォンの携帯性の良さは、ビジネスマンの働き方にも大きな変革をもたらす。先進企業の事例から、どのようなワークスタイルの変革をスマートフォンがもたらすかを検討してみる。

» 2011年09月30日 12時00分 公開
[井上実,M&Iコンサルティング]

ノートパソコンが実現できなかったモバイル環境の実現

 ビジネスにおけるモバイル環境というと、今までは、ノートパソコン中心に考えられてきた。「ノートパソコンを配ったから、スマートフォンは必要ないのでは」という声もある。

 しかし、スマートフォンにはノートパソコンにはない良さがある。それは、携帯性の良さ。ノートパソコンに比較し軽量・コンパクト。常に持ち歩くのに負担はほとんどない。バッテリでの稼働時間は長く、立ち上がりも早く、ネットにつないですぐに使える。

 ファイル容量の少なさも、セキュリティ上は有利に働く。セキュリティ対策をしなくて良いということではないが、保存される情報量が少なければ情報漏えいのリスクは下がる。

場所の制約を排除した働き方を実現

 このスマートフォンの携帯性の良さが、ノートパソコン以上にモバイル環境を充実させ、新しい働き方を実現している。「いつでも、どこでも、誰とでも」働くことが可能になり、

場所の制約を排除した働き方を実現できる。

 いつでも、どこでも、ネットに接続し、同じ情報にアクセスできれば、飛行場での出発時間待ちや待ち合わせ時間までの空き時間など、細切れの空き時間を有効に使うことが可能になる。また、ネットを介して遠く離れた人と同じ情報にアクセスし、一緒に働くことも可能になり、誰とでも働くことが可能となる。

 では、スマートフォンを活用して、場所の制約を排除した働き方を実現している先進企業の事例を見ていこう。

個人が複数の場所から同じ情報にアクセスして働く

 個人が、いつでも、どこでも、同じ情報にアクセスして働く事例としては、ソフトバンクテレコムのホワイトワークスタイルが挙げられる。

 ホワイトワークスタイルとは、ソフトバンクテレコムのクラウドサービス「ホワイトクラウド」とモバイルデバイスを組み合わせることで、場所や時間を選ばず業務の遂行を可能にしたワークスタイルだ。「いつでも・どこでも・どのスクリーンからでも業務可能に」という当初からのコンセプトの下、iPhone、iPad、シンクライアントを導入し、仮想デスクトップを採用することで実現した(図1参照)。

ALT 図1 ソフトバンクテレコムは、ホワイトワークスタイルの導入により、全社員が場所や時間を選ばず業務を行える環境を実現した

 仮想デスクトップを使用することにより、どの端末の画面からも同じ画面・同じ情報にアクセスすることが可能になる。自宅のPCからもVPNを介して仮想デスクトップ環境に入れるように、設定済みのUSBメモリも配布されている。災害により出社が難しくなった場合のBCP対策としても有効だ。

 ソフトバンクテレコムでは、ホワイトワークスタイルの導入により、月1人当たりトータルコストを4万3000円削減したという。具体的には、残業代を月3万3000円(1日平均32分)削減し、ペーパーレス化により紙+印刷費用を月1万円削減した。従来のモバイル環境であるPC、携帯電話から、iPhone、iPad、シンクライアントという環境に変更するためのコスト、1万5000円を考慮しても、月1人当たり2万8000円のコスト削減を実現している(図2参照)。

ALT 図2 ソフトバンクテレコムでは、ホワイトワークスタイルを導入することにより、月1人当たりトータルコストを4万3000円削減した

 なお、ペーパーレス化のために、ソフトバンクでは20年以上前から電子稟議を採用してきたが、iPadの導入に伴い、顧客へのプレゼン資料も紙で渡すことをできるだけ少なくし、iPad上での動画を使用したプレゼンを重視しているという。紙や静止画でのプレゼンでは、プレゼンする人の知識・スキルによって、プレゼンの質にバラつきが出てしまう。しかし動画なら、より分かりやすいプレゼンができるだけではなく、録音された音声の説明により、プレゼンの質の平準化も図れるわけだ。

 このように、いつでも、どこでも、同じ情報にアクセスして働くというワークスタイルは、ソフトバンクテレコム以外でも、オフィス外にいる時間の長い営業系を中心に広まっている。特にプレゼンへの活用という面では製薬会社や保険会社による採用事例が目立つ。医師に対して短時間で分かりやすくプレゼンを行うために、スマートフォンやiPadをMR(医薬情報担当者)に配布したり、保険会社では従来の保険PCの代替えとして、iPadなどを配布したりしている。

 さらに目を引かれるのは、SFAのスマートフォン対応だけではなく、基幹情報システムと連携させる取り組みが始まりつつあることだ。例えば大手ERPベンダのSAPは、買収したSybase社のモバイル技術を使い、ERPと連携したモバイルシステムのインフラや運用管理システムを提供している。

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