第28話 そして、次のステージへの旅立ち
2009/12/7
次のステージへの旅立ち
豊若がアメリカに旅立った週末、サンドラフトとホテイビールの業務提携の記事が新聞紙上を賑わせた。
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そして、サンドラフトの定期機構改革と人事異動も合わせてオープンとなった。坂口は新会社設立準備会社へ出向、名間瀬は情報システム部次長、伊東は岸谷のいる東京配送センターに異動となった。佐藤はIT企画担当専務を継続し、情報システム部長は営業畑出身のシステム音痴な人物が就任することになった。
そして、今日は成城にある谷田のマンションで、伊東の合格祝いに加藤と谷田が手料理を振る舞うことになっていた。加藤と伊東が到着する少し前に、待ち合わせをした坂口と谷田は、初夏の太陽が照りつける成城学園前駅の屋上庭園で、遠くに見える東京都心の風景を眺めていた。今日は空気が澄んでいて、この季節は霞んで見える六本木ヒルズをくっきりと見ることができた。
谷田 「豊若さん、いまごろ何してるのかしら」
坂口 「豊若さんのことだから、もうやばいプロジェクトに張り付いているんじゃないかな」
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この季節では珍しく、からりとした気持ちのいい風が吹いていた。坂口の言葉にうなずく谷田の髪が風になびいている。
坂口 「豊若さんは、俺には教えることはもうないって松嶋さんにいったそうなんだ。俺はまだまだこんなに未熟なのに……」
谷田 「でも、私が出会ったころの啓二さんは、もっと荒削りな感じだったわ。いまでは落ち着きもあるし……。そうね、リーダーっぽくなったかな。豊若さんのおかげね、きっと」
坂口 「そう? でも、これから先、不安もあるんだ。新しい会社の設立準備なんて、何から手を付けたらいいのか……。豊若さんがいないいま、今度は自分で答えを探していかなくちゃいけないんだよな」
谷田 「大丈夫。啓二さんならできるわ。私も応援するね!」
坂口 「ありがとう。なんだか、元気が出てきたよ」
晴れた空に両手を上げて大きく伸びをする坂口は、次のステージに向かって雄叫びをあげた。
坂口 「よ〜し! 達人目指して頑張るぞ!」
駅ビルの下を小田急線がガタンガタンと通過していくのが見える。
谷田 「これから私たち、どうする? また勤務先が遠くに離れちゃうね」
坂口 「そんなこと心配しなくていいよ、会いたいときに会おう」
谷田 「会いたいときにだけ?」
坂口 「え?」
谷田 「私はいいよ、会いたくないときにも会ってもね」
坂口 「……そうだよな」
谷田 「いつも、一緒にいればいいのかもね」
坂口 「……」
クスッと笑う谷田。
谷田 「啓二さんって、すぐ黙っちゃうところ。変わらないね」
少し頬を膨らませてみせる坂口だったが、谷田の言葉に誘われて坂口も口を開いた。
坂口 「亜希子……。俺も……」
ちょうどそのとき、青いロマンスカーが大きな警笛を鳴らしながら眼下を通過していった。
谷田 「え? いま何ていったの?」
坂口 「……ううん、何でもない」
谷田 「ねぇ、もう1回いってよ、ねぇ、俺も……。何? 何ていったの?」
坂口 「いやぁ……。はははは……」
笑いながらごまかす坂口。
谷田 「もう、分かりました。今日ははっきり気持ちを確認させてもらいますからね。お食事会が終わったら、父が遊びに来るっていってますから。会ってちゃんとあいさつしてね」
坂口 「えぇ!?」
谷田 「ふふ……。本気にした?」
谷田は笑いながら坂口の手を引いた。
谷田 「そろそろ行きましょ、伊東さんたち、もうきっと待ってる」
まぶしく透きとおる青空のような谷田の笑顔に応えるように、坂口はその手を強くしっかりと握り返した。そして、伊東と加藤の待つ改札口へと駆け出すのだった。
◆最後に◆
28話におよぶ第2部がついに終了しました。紆余曲折を経て、新システムを完成させた坂口は、新会社で上級シスアドとして、さらに成長していきます。第3部での坂口の活躍をお楽しみに。
「シスアド達人倶楽部」は、経済産業省が実施する情報処理技術者試験の1つ、上級システムアドミニストレータ試験の合格者9人で構成される執筆チーム。本連載「目指せ! シスアドの達人」は、シスアドの日常を知り尽くしたメンバーが、シスアドの働く現場をリアルに描くWeb小説だ。
執筆メンバー9人は、情報処理技術者試験合格者で、「システムアドミニストレータ宣言」の趣旨に賛同する個人で構成される任意団体:日本システムアドミニストレータ連絡会(JSDG)の正会員。
○システムアドミニストレータ宣言
山中 吉明(やまなか よしあき)
日本システムアドミニストレータ連絡会会長。保険会社勤務
布袋が業務提携を受け入れる条件は、豊若外しだった。それに戸惑う西田。布袋によると、豊若に対してはスパイの疑いが社内に広がっており、提携後も完全に払しょくすることは難しいという。
西田は苦しみつつも、豊若外しを受け入れる。そして、豊若離れを促進させるために、坂口にはホテイグループと共同で作る物流会社の設立準備会社に、企画調査部課長として出向させることに。
突然の豊若との別れに戸惑う坂口だが、松嶋からの情報を得て成田空港へ見送りに行く坂口。豊若はすべてを理解したうえで、新しいコンサルタントとしての道を求めてアメリカへ行くのだった。そして、残された坂口は豊若の気持ちも合わせ、さらにシスアドの達人に向かって努力することを誓った。
| Page1 坂口の新しいミッションは |
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| Page2 坂口が乗り越えなければならないもの |
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| Page3 松嶋からのメッセージ |
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| Page4 豊若、アメリカへ |
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| Page5 次のステージへの旅立ち |
目指せ!シスアドの達人第2部 バックナンバー 連載インデックスへ»
- 第1回 敵は大企業にはびこる縦割り組織と恋の距離感
- 第2回 ワガママほーだい幹部の調整に苦しむ坂口は……
- 第3回 高過ぎる“部署の壁”と好きなのにすれ違う2人
- 第4回 鍵はリーダーの力量と気になるお姉さまの魅力
- 第5回 坂口に恋のライバル出現〜相手は電車男!?
- 第6回 シスアド試験前の休息、猛アプローチ始まる!
- 第7回 戦う女のほろ苦い過去と、副社長の苦悩
- 第8回 責任を押し付ける上司と、泥沼の四角関係
- 第9回 試験に合格したものの、上級にふさわしくない坂口
- 第10回 情報漏えい発覚と、未熟さに気付き身を引く女
- 第11回 明らかになる専務の陰謀、そして救世主現る
- 第12回 自己中な最低主人公、そしてヤシマ作戦発動!
- 第13回 予想以上に成長する後輩と、大御所との出会い
- 第14回 仕事に生きた男の悲しい物語
- 第15回 仕事人間がもらったすてきなクリスマスプレゼント
- 第16回 気安くバグって言うな! 妥協とプライドのはざまで
- 第17回 それは仕様です〜ユーザーvs.システム部門開戦
- 第18回 “人を使う”ということの難しさ
- 第19回 頑固オヤジを口説くには美人広報を使え
- 第20回 本当につらいときに支えになるもの
- 第21回 一番つらくて難しいのは“根回し”
- 第22回 ライバルにアドバイスをもらうずうずうしさも必要だ
- 第23回 システム入力をサボるやつに使わせる方法
- 第24回 システム移行はトラブルだらけ
- 第25回 最後の難関、経営会議に挑む
- 第26回 そして、運命の稼働日
- 第27回 人生を揺るがす人事異動
- 最終回 そして、次のステージへの旅立ち
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