第3話
大失敗する坂口、そして和解する女2人
2006/9/27
前回、松嶋に「本当にマニュアルは必要なの?」と問われ、マニュアル作り以外にもIT活用を促す方法があることに気付いた坂口。その結果、「まず一度使ってみる」というハードルを超えるために、ごく短時間での操作教育を行おうと考えた。また、テストの重要さを教えられた坂口は、早速谷田にテストを頼んだのだが……。(→記事要約<Page 2>へ)
坂口のマニュアルは失敗作!! 誤解を恥じる谷田
坂口にマニュアルを渡されてテストを頼まれた谷田だが、張り切って望んだテストの開始早々、操作が分からなくなり、困ってしまう。
| 谷田 | (どうしよう………坂口さんには『1人でも大丈夫です。安心して行ってきてください!』なんていっちゃったのに。私ったら、何の役にも立たないじゃない……) |
坂口から渡されたマニュアルを手に、谷田は途方に暮れていた。いまにも泣きそうな思いをこらえていたところに、声を掛けた人物がいる。
| 松嶋 | 「すみません。こちら、営業一課ですよね? 松嶋といいますが、坂口さんはいらっしゃいますか?」 |
はっと目を向けると、見覚えのある女性が立っていた。少し前に、坂口と一緒に食事をしていた女性だ。谷田は急いで坂口は社外の打ち合わせに出ていることを告げた。
| 谷田 | 「今日は戻るかどうか分かりません。何かご用でしょうか」 |
松嶋に相談していた坂口のうれしそうな顔を思い出して、ついとげとげしい声が出てしまい、谷田はますます落ち込んでしまう。うつむく谷田の手にあったマニュアルに、松嶋が目を留めた。
| 松嶋 | 「ひょっとして、それは坂口さんが書いたマニュアルじゃない?」 |
| 谷田 | 「え? ええ、そうですけど……、ご存じなんですか?」 |
松嶋は、いままでのことを、かいつまんで説明した。坂口は自信がありそうだったが、やはり初心者だ。様子を見ようと、手の空いた時間に訪ねてきたのだという。
落ち着いた声で説明する松嶋の笑顔を見ているうちに、谷田は、だんだんと自分の気持ちがほぐれてくるのを感じた。
| 谷田 | (仕事の相談だったんだ。私ったら、考え過ぎちゃってばかみたい……。さっきは失礼な態度を取っちゃったけど、気にしていらっしゃらないかしら) |
![]() |
![]() |
坂口のマニュアルは、『○○を○○し、△△を△△し、□□を□□します。』のように、いくつかの操作を1文で説明している個所が目に付く。坂口としては、文章をまとめて少なく見せることで、読み手の圧迫感を減らそうと考えたのだろう。しかし、複数の情報を1文にまとめると、分かりにくくなってしまうので、これでは逆効果だ。
- - PR -
| 谷田 | 「そういうことだったんですね。理由が分かって、ちょっと安心しました」 |
| 松嶋 | 「坂口さんの狙いは分かるけど、これじゃ難しいわよね。教えてあげてもいいんだけど、坂口さん自身で、この欠点に気付いてくれるといいわね」 |
松嶋は、坂口から連絡があったら、戻って操作を見てもらうのではなく、電話口から操作説明をしてもらうように、谷田にアドバイスした。画面が見えない状態で、言葉だけで説明する状況は、マニュアルを使って操作説明するのと、よく似ている。こうしてみれば、自分で欠点に気付くのではないかと考えたのだ。
| 松嶋 | 「狙いは良かったんだけど、書き方はまだまだかなぁ。それにしても、1文は短くする、とか、1文では1つのことを説明する、なんてことは、初級シスアドの参考書にも書いてあると思うのに、坂口さんたら、忘れちゃったのかな?」 |
| 谷田 | 「松嶋さんは、初級シスアドを持っているんですか?」 |
| 松嶋 | 「ええ。子どもが保育園のころに取ったから、もう随分前になるわ」 |
| 谷田 | 「ええっ!? 松嶋さん、お子さんがいらっしゃるんですか!?」 |
聞けば、松嶋には小学校4年生の娘がいるのだという。若々しい松嶋には、とてもそんな大きい子どもがいるようには見えない。プライベートな話を聞いて打ち解けた気持ちになったのか、坂口をめぐってのライバルにはならないことに安心したのか、谷田は、以前から気になっていたことを聞いてみた。
| 谷田 | 「やはり、子育てと仕事の両立って、大変なんですよね?」 |
松嶋は、表情を改めた。
| 松嶋 | 「そうね、大変なことも多いわね……。4、5年前になるかしら。新入社員研修で、すごく忙しかった時期にね、朝会社へ行こうというときに、娘から手紙を渡されたの。急いでいたから、そのまま家を出て、会社に着いてから手紙を開けてみたのね」 |
| 谷田 | 「何て書いてあったんですか?」 |
| 松嶋 | 「たどたどしい字で、『まま かいしゃやめてください』って」 |
| 谷田 | 「!! そんな……」 |
| 松嶋 | 「泣いたわよー。会社のトイレでこっそりね」 |
その日はとにかく大急ぎで帰ったの、と明るく笑ってみせる松嶋には、悲壮感は見えない。しかし、当時はさぞかしつらい思いをしたのではないだろうか。そうまでして、なぜ仕事を続けているのだろう。
| 松嶋 | 「この間、そのときのことを子どもに話したらね、すっかり忘れてるの。私、そんな手紙書いたっけ? なんていわれちゃって。ひどいでしょ、すごくショックだったのに。でも、そんなものかもね。子どもはどんどん成長するから、私も前へ進んでいかないと、すぐに追い越されちゃう。娘が大きくなってからも、1人の大人として尊敬してもらえる人間でいたいから、仕事も頑張ろうという気持ちになるのかもしれない……。いまは、娘も応援してくれているしね」 |
そして、「でも、もし次に手紙をもらうようなことがあったら、その場で開けて読むぐらいの余裕を作っておかないと、今度こそ子どもにあきれられちゃうかも」と、いいながら松嶋は笑った。
| 谷田 | 「それにしても、仕事と家のことに加えて、資格取得の勉強もするのは大変だったんではないですか?」 |
| 松嶋 | 「うん、大変。だけど、できない理由を探していたらキリがないでしょう? 子どもが思春期に入れば、小さいころとは違う心配も出てくるし、いずれ親の介護の問題も出てくるでしょうし。思い立ったら、うまくチャンスを見つけて、まずはやってみないとね」 |
| 谷田 | 「そうかぁ……、子育てだけじゃなくて、いろいろあるんですね……」 |
| 松嶋 | 「ごめんね、夢のない話をしちゃって。でも、いきなり高いハードルを越えようとしなければ、結構いろいろできるものじゃないかな。目の前のことを、1つ1つ一生懸命やっていれば」 |
| 谷田 | 「目の前のこと?」 |
| 松嶋 | 「例えば、私が初級シスアドの勉強をしていたころは、ちょうど研修のアンケート結果を集計することが多かったの。表計算ソフトを使って、合計・平均・最大・最小を、関数を使って出すとか、グラフを活用するとか、実務に使えそうな部分を先に勉強して、それをなるべく仕事に使うようにしてみたの。こうすると、仕事の質を高めたり、知識を身に付けたりするのに役立つでしょ? 初級シスアドは出題範囲が広いけど、細切れの時間をうまく使えば、結構勉強できるしね」 |
| 谷田 | 「そういうことでいいんですか?」 |
| 松嶋 | 「そういうことの積み重ねが、そのうち自分の力になって返ってくると思うわよ」 |
![]() |
2人とも勉強熱心で行動派だから、松嶋のいうやり方に近いものを実践しているのかもしれない。お手本は身近にいるのだ。
| Page 1 坂口のマニュアルは失敗作!! 誤解を恥じる谷田 |
|
| Page2 谷田の心遣いによって、自分の間違いに気付く坂口 |
ホワイトペーパー(TechTargetジャパン)
|
|
キャリアアップ
スポンサーからのお知らせ
- - PR -





