顧客の知見を利用する提案技術──D/Pプロフェッショナル企画提案方法論−C/P(4)(1/2 ページ)

システム提案などの提案営業は、顧客を前にした提案の場こそが主戦場だ。その最前線で役立つディスカッション・プロポーザルという技術とはどのようなものだろうか?

» 2006年09月23日 12時00分 公開
[大上 建(株式会社プライド),@IT]

ディスカッション・プロポーザル(D/P)とは

 前回「企画提案の“知見”を組織で拡充する『プロセス』」では、コンサルティング・プロモーション方法論のプロセス、およびその中で使われる技術であるプロポーザル・レビュー会議について解説した。今回は、顧客との真剣勝負する技術であるディスカッション・プロポーザル(D/P)について述べる。

 D/Pは、顧客側の意思決定者と1〜2時間のディスカッションによって、両者にとっての最善の落とし所を決め、これに向けて相手を落とす(合意形成する)技術である。具体的には、「提案仮説の拡充」「合意形成」「提案の受託」を行うものである。

ディスカッション・プロポーザルの流れ

 D/Pのモデル的な流れは、次のようなものである。

表層の流れと本質の流れ 事例  
(1)あいさつ・導入
- 提仮説の絞り込み
- 不足情報獲得案
 
 
子会社とはいえ別会社の製作工場や、資材業者が改革に協力してくれるか不安である。協力が得られなければ推進できない。
推進の承認を獲得できる改革の達成水準は……程度で可能であるか?
5分
(2)要件確認
- 意思と事実の確認
- KIの確認
- 外部事例の紹介
- 相手の視点獲得と仮説修正確認
- ILとシステムビジョンの想定
 
 
概略の現場調査とシミュレーションを行った。
欠品による後送りは1500件/月……、受注調整まで至るものは10件/月の状況である。納入小ロット化、リードタイム確定(短縮)、多頻度化……などの改革策によって、在庫20%削減と欠品1/10化が可能である。
先行企業の事例では……
15分
(3)システムビジョンの提示
- システムビジョンの提示
- システムビジョンへの合意形成
 
 
自社単独の改革では限界がある。
子会社である製作工場および資材業者との間で、納入や支給のやり方の変更に関する基本合意をし、所要量算出方法として……、業務手順は……、支援するITは……
15分
(4)顧客の反論と切り返し
- 課題の獲得
- 解決事例の提示
 
 
小ロット多頻度化による物流部門の作業量増加の吸収方法は……、製作工場への部材支給多頻度化を物流費を増加させずに行う方法として方面別の……、Cランク品の生産拠点統合の理解を得るためにはシミュレーションを行い……
15分
(5)遂行方法提案
- システムビジョンの最終確認
- KIの整理
- 課題の整理
- 遂行方法の提示
- 提案の要請獲得
 
 
これを実現するためのスケジュールは……、貴社体制は…が必要です。弊社体制は……
弊社はプロジェクト遂行上の課題解決に当たって……をお約束いたします。
10分

(1)あいさつ・導入 

 よほど確信が持てる場合を除いて、D/Pに臨むに当たっては何種類かの提案仮説を頭にたたき込んでおかねばならない。しかしD/Pの間中、何種類もの提案仮説を抱えたままでは話にならない。そこで重要な確認事項は、この段階で早めに聞いてしまい、最初の提案仮説の絞り込みを行い、その後のディスカッションの効率を上げる。

(2)要件確認 

 最初は顧客に話をしてもらいながら徐々にディスカッションをコントロールし、準備している提案仮説に基づいて、「顧客の意思」「顧客社内外の重要な環境認識」を得て、提案仮説の絞り込みと拡充を行い、KI(キー・イシュー)の確認を行う。

 KIを解決する可能性のある事例の紹介を行い、顧客と共同で意味解釈し、提案仮説の絞り込みと拡充を行ったうえで、IL(イノベーション・ロジック)とシステムビジョンの想定を行う。

(3)ビジョン提示 

 簡単な資料などを用いて、ILとともにシステムビジョンを提示する。要件確認までに準備した資料と異なる場合は、口頭で補足を行うかホワイトボードに記述を行う。

(4)反論と切り返し 

 この時点でシステムビジョンは、あくまでも「絵に描いたもち」である。顧客もこれを感じて、「システムビジョン」と「現状」の差である「課題」に気付き、自然に反論を口にする。反論が出るのは、システムビジョンを受け入れたからこそ「課題」に気付き、これを口にするのである。これは、顧客の方から課題を教えてくれる、ある意味願ってもない瞬間である。顧客から反論があまり出ない場合は、こちらから「このまますんなりと実現するとは思えません。実現のための課題は何でしょうか」と課題を積極的に聞き、顧客の持つ知見を引き出すのである。

 表面的には反論に聞こえる「課題」を積極的に聞き、しっかりと控えて帰るが、すべての反論をただ聞くだけでは「頼りない相手」に映ってしまうため、用意した課題解決策を事例とともに示す(切り返し)。当然、事前に想定できていなかった課題が出てくる。その場合は、顧客の指す課題の具体事例を聞き出す。聞き出したファクトは、顧客と共同で意味解釈を行って解決策の想定を行う。

(5)遂行方法提案 

 反論と切り返しまでに拡充したシステムビジョンの再確認を行う。KIの整理と課題の整理をしたうえで、修正した遂行方法を示す。以上の内容を基にチェンジコンセプト(CC)を修正し、CCを発言することで提案の合意形成を行う。

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