
コンサルタントを育成するためには
2007/7/31
コンサルタントの育成には育成側の勇気が不可欠
では、文化的に育成しにくいコンサルタントを育成するためには、どうすればよいのだろうか?
コンサルタントは中期的な視点に立つと、修羅場を経験させる必要があることは学習経験パターンから明らかだ。一般的に、コンサルタント初心者(コンサルタント候補)は先輩コンサルタントに同行し、議事録を作ったり、指示された資料を作ったりする。そして、次第に仕事の範囲を広げ、先輩コンサルタント同席の下で顧客に対する説明やプレゼンを行ったり、部分的にファシリテーションを担当するようになる。これらは段階的学習パターンである。これでは優秀なコンサルタントは育成できない。
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非段階的学習パターンを経験させるには、「このお客さまはあなたのお客さまだ。すべて自分でやりなさい」とゼロから1人でやらせるか、あるいは、いままで誰も経験したことのない分野を、何の助けもなく担当させるしかない。これは、ある範囲の権限を委譲することになる。
権限委譲には、権限と責任をすべて委譲(委任)する「Delegation(権限の委任)」と、権限を委譲しても責任は委譲したものが負う「Empowerment(権限を与えること)」がある。この際に必要なのは、Empowermentである。
しかし、これはマネージャにとって、かなり勇気の要る行動だ。なぜなら、コンサルティングはサービスビジネスであるため、生産と消費が同時に行われ結果だけではなく、そのプロセスも同様な価値を持つ。そのため、“失敗してしまった結果”を、後になってリカバリーすることはできたとしても、“過ぎてしまったプロセス”を元に戻すことはできない。
従って、新米コンサルタントが失敗した場合、マネージャや先輩コンサルタントによって再構築し、顧客の満足する結果を生み出すことはできたとしても、新米コンサルタントの行ったプロセスによって失った顧客の信頼を取り戻すことは非常に難しい。顧客の信頼を失うことは、コンサルティングビジネスにおいて最悪の事態であるため、マネージャが部下にEmpowermentすることは非常に勇気の要る行動となる。
また、マネージャも日本人であれば、不確実性回避行動度は高い。文化的な束縛を排除して、勇気を持って部下に仕事を任せなければならない。
「純粋なる挑戦」を持つ人だけがコンサルタントになれる
マネージャが場を与えたとしても、育成対象のコンサルタントが受け入れなくては成り立たない。育成のために1人にすべてを担当させようとしても、先輩コンサルタントに依存して親離れしようとしないものもいる。中には、面倒見が悪く指導してくれないと思うものもいるかもしれない。このような考えを持つものは、もともとコンサルタントに向いていない。
エドガー・H・シャイン(Edgar H. Schein)氏は「キャリア・アンカー」という概念により、仕事の領域を8つに分類し、自分自身の仕事への適性を簡単なアンケートにより把握する方法を生み出した。8つの分類は表3のとおりである。
(表3)キャリアアンカーの8つのカテゴリー |
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キャリアアンカー |
概要 |
| 専門・職能別コンピタンス Technical/Functional Competence |
専門家であることを自覚し満足感を覚え、ほかの分野の仕事に移されると満足感が低下する |
| 全般管理コンピタンス General Managerial Competence |
経営管理そのものに関心を持ち、組織の中の責任ある地位に就き、全社の方針を決定したいという願望が強い |
| 自律・独立 Autonomy/Independence |
自分のやり方、自分のペース、自分の納得する仕事の基準を重視する |
| 保証・安定 Security/Stability |
将来が安定・保証されることを重視し、その中でキャリアを送りたいということを最優先させる |
| 起業家的創造性 Entrepreneurial Creativity |
新しい製品・サービスを開発したり、新しい事業を興す欲求が強い |
| 奉仕・社会貢献 Service/Dedication to a Cause |
世の中を良くしたい、社会に貢献・奉仕したいという価値観によって行動する |
| 純粋な挑戦 Pure Challenge |
不可能と思えるような障害を克服したり、解決不能と思われる問題を解決することに喜びを感じる。挑戦が唯一のテーマ |
| 生活様式 Lifestyle |
生き方全般の調和を重視する。仕事と家庭、個人のニーズと家族のニーズ、キャリアのニーズなどの調和を取った生活 |
【出典】エドガーH.シャイン著、金井壽宏訳、「キャリア・アンカー」、白桃書房出版、2003年6月26日、pp.25-48 |
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この中で、コンサルタントを目指す人は、「純粋な挑戦(Pure Challenge)」というキャリア・アンカーを持っていることが不可欠だ。純粋な挑戦のキャリア・アンカーを持つ人は、不可能と思えることや解決不能と思われる問題を解決することに喜びを感じ、挑戦が唯一のテーマの人である。
このようなキャリア・アンカーを持っている人であれば、非段階的学習パターンを自ら積極的に受け入れることができ、自ら、修羅場に飛び込んでいくことができる。これにより、中期的に概念スキルを獲得し、一人前のコンサルタントになることができる。
このキャリア・アンカーを持たない人は、非段階的学習パターンを受け入れることが難しく、コンサルタントの中核的スキルである概念スキルを獲得することはできない。コンサルタントを目指す人は、十分に自分のキャリア・アンカーを分析したうえで、職種の選択をする必要がある。
コンサルタントの育成の難しさには、日本人の文化的特徴との不調和が根底にある。その中でもコンサルタントを育成するには、「適性のあるものに勇気を持って場を与えるマネージャ」が不可欠なようだ。
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次回は、コンサルタントの中核的スキルである概念スキルに関して、より詳細に検討してみる。
参考文献
- 松尾睦著、「経験からの学習」、同文舘出版、2006年6月23日
- デニス・S ガウラン/西田司編著、「文化とコミュニケーション」、八朔社、1996年4月10日
- エドガー・H シャイン著、金井寿宏訳、「キャリア・アンカー」、白桃書房、2003年6月16日
横浜市立大学文理学部理科卒。多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了。グローバルナレッジネットワーク(株)勤務。人材ポートフォリオ構築、人材開発戦略立案、キャリアパス構築などに関するコンサルティングを担当。中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。
第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。
著書:「システムアナリスト合格対策(共著)」(経林書房)、「システムアナリスト過去問題&分析(共著)」(経林書房)、「情報処理技術者用語辞典(共著)」(日経BP社)、「ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜(共著)」(同友館)。
PMとコンサルタントの経験学習パターンの違いを見ると、PMが徐々にプロジェクト規模の大きなものを担当して難易度を高めていく段階的な学習パターンを取るが、コンサルタントは「ゼロからの経験」や「1人で成し遂げた経験」など、修羅場を経験することで非段階的な学習パターンを取る。
この経験学習パターンに日本人の文化的特徴が影響し、両者の育成難易度に相違が生じている。アンケートによると、日本の不確実性回避行動度は92であり、世界平均64に対し、かなり高い値を示している。従って、段階的な学習パターンを取るPMの育成は文化的に日本人に受け入れやすく、非段階的な学習パターンを必要とするコンサルタントの育成は受け入れにくい。日本人にとって文化的にPMは育成しやすくコンサルタントの育成はしにくいのだ。
コンサルタントの育成の難しさには、日本人の文化的特徴との不調和が根底にある。その中でもコンサルタントを育成するには、「適性のあるものに勇気を持って場を与えるマネージャ」が不可欠なのだ。
| Page 1 PMとコンサルタントの経験学習パターンの違い 日本人の文化的特徴がコンサルタント育成を困難にしている |
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| Page2 コンサルタントの育成には育成側の勇気が不可欠 「純粋なる挑戦」を持つ人だけがコンサルタントになれる |
PMとコンサルタントは育ちが違う バックナンバー
- 第1回 PMとコンサルタントの現状と育ちの違い
- 第2回 コンサルタントを育成するためには
- 第3回 コンサルタントの中核スキルとは
- 最終回 コンサルタントの中核スキルに必要な知識は?
ホワイトペーパー(TechTargetジャパン)
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