
コンサルタントの中核スキルとは
2007/9/6
コンサルタントはコンセプチュアルスキルをどんな場面で使うのか
では、コンサルタントにとって、なぜコンセプチュアルスキルが重要なのだろうか。具体的に、どのような場面でコンセプチュアルスキルを必要とするのかを考えてみる。
図表1:IT戦略立案方法例 |
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図表1はIT戦略立案方法の一例だ。筆者自身が考案し、長年活用しているものである。この中で、コンセプチュアルスキルを特に必要とするプロセスが2つある。現状分析における問題点整理・原因の分析と、システム化方針策定における新ビジネスプロセス設計である。
現状分析における問題点整理・原因の分析では、現行業務分析や現行システム課題調査において、ヒヤリングなどにより収集された現行業務上の課題・問題点や、システム上の課題・問題点を整理・分析する。通常、課題・問題点は数百点以上に及ぶ。これらの課題・問題点を個別に原因を追究して解決していっても、本質的な解決に至らない可能性が高い。
そのため、まず、課題・問題点間の関係を分析し整理する必要がある。通常、整理していくと数十点程度の課題・問題点に整理できる。整理した課題・問題点に対して、原因を追究していくと、同様な原因から発生している問題点が多く、解決すべき原因は限られた数のものになっていく。
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これらの作業の中で、課題・問題点間の関係を分析・整理、整理した課題・問題点に対して、原因を追究をするためには、コンセプチュアルスキルが必要になる。個別に挙げられた課題・問題点間の関係性を整理・分析するためには、問題点間の関係だけではなく部門組織間の関係も把握していなければ、十分な整理・分析はできない。原因を追究する場合にも同様である。
システム化方針策定における新ビジネスプロセス設計においては、基本方針に基づき、新しいビジネスプロセスを設計する。その際に、個別最適に陥らず、全体最適なビジネスプロセスを設計する必要がある。現状にとらわれることなく、しかし、夢を追うことなく、実現可能なビジネスプロセスを設計しなければならない。
そのためには、現状の細かな業務処理ばかりに目を奪われ、「木を見て森を見ず」にならないように、階層的に設計を行う必要がある(図表2参照)。
図表2:階層的にビジネスプロセスを設計(クリックで拡大) |
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出典:村上敬亮氏講演資料、「Enterprise Architectureについて」、経済産業省、2004年10月19日 |
上位層からトップダウンで設計するためには、コンセプチュアルスキルが必要となる。会社全体を鳥観的にとらえ、それぞれのプロセスがどのような関係にあるべきかを考える能力が求められるからだ。
コンセプチュアルスキルを身に付けるためには
では、コンセプチュアルスキルはどのようにすれば身に付けることができるのだろうか。
■コーチングに基づくエンパワーメント
前回述べたようにコンセプチュアルスキルを身に付けさせるためには、マネージャは勇気を持って権限委譲し、コンサルタントに1人で担当させるしかない。また、そのときの権限委譲は、責任はマネージャが負う「empowerment」でなければならない。
そして、カッツ氏の理論からすると、マネージャは突き放すだけではなく、コーチングを行いコンサルタントに自分で考えさせながら、適切な指導をする必要があるようだ。
■会社全体を理解するための前提知識
カッツ氏によれば、ローテーションにより会社全体の部門役割を理解することが、コンセプチュアルスキルを身に付けるためには必要だという。コンサルタントに当てはめると、現状分析で顧客の各部門にヒヤリングを実施することがこれに当たる。ヒヤリングにより、顧客の各部門が抱える課題・問題点の把握を行うとともに、部門間の関係を理解し全体を把握する。
しかし、何の前提知識なしにヒヤリングにより、すべて把握できるかというと非常に難しい。これを補うために、コンサルタントはテンプレートとして活用可能な知識を持っている必要がある。
◇
次回は、この会社全体を理解するためにコンサルタントが持たなければならない知識に関して検討してみる。
参考文献
- 白井久美子著、「変革型プロジェクト・マネジャーのコンピテンシとその育成」、日経BP社
- SMBCコンサルティング著、「メンタルヘルス用語「コンセプチュアルスキル」」
- 広島大学大学院社会科学研究科マネジメント専攻著、「広島大学大学院社会科学研究科マネジメント専攻」
- Robert L. Katz著、「Skills of an Effective Administrator」、Harvard Business Review、1974年9‐10月
横浜市立大学文理学部理科卒。多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了。グローバルナレッジネットワーク(株)勤務。人材ポートフォリオ構築、人材開発戦略立案、キャリアパス構築などに関するコンサルティングを担当。中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。
第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。
著書:「システムアナリスト合格対策(共著)」(経林書房)、「システムアナリスト過去問題&分析(共著)」(経林書房)、「情報処理技術者用語辞典(共著)」(日経BP社)、「ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜(共著)」(同友館)。
今回は、コンサルタントの中核的スキルである「概念スキル(コンセプチュアルスキル)」に関して検討する。
提唱者であるカッツ氏は、コンセプチュアルスキルを、会社全体を見渡す能力であり、組織内のさまざまな部門組織がほかの部門組織とどのように関係しているかや依存し合っているかを認識する能力であると定義している。つまり、「部分最適から全体最適へ」を実現するために必要な、組織全体、問題点全体を鳥観的に把握する能力がコンセプチュアルスキルといえる。そのためには、抽象化能力や概念化能力が必要であるし、論理的思考能力も必要だ。
コンセプチュアルスキルを身に付けるには、「コーチングに基づくエンパワーメント」と「会社全体を理解するための前提知識」が必要だ。マネージャは勇気を持って権限委譲し、1人で担当させるしかない。そのときの権限委譲は、責任はマネージャが負う「empowerment」でなければならない。また、現状分析で顧客の各部門にヒヤリングを実施することが重要だ。ヒヤリングにより、顧客の各部門が抱える課題・問題点の把握を行うとともに、部門間の関係を理解し全体を把握する必要がある。
| Page 1 概念スキル(コンセプチュアルスキル)にはさまざまな解釈がある 提唱者のカッツはどう定義しているのか? |
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PMとコンサルタントは育ちが違う バックナンバー
- 第1回 PMとコンサルタントの現状と育ちの違い
- 第2回 コンサルタントを育成するためには
- 第3回 コンサルタントの中核スキルとは
- 最終回 コンサルタントの中核スキルに必要な知識は?
ホワイトペーパー(TechTargetジャパン)
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