CIOは戦略的視座を持て進化するCIO像(3)(1/3 ページ)

情報システム活用と業務プロセス改革、そしてその両者の連携──多くの企業が重要課題として認識しながらも、実現できているケースは非常に少ない。この難題の解決に向けて、CIOはいったいどう行動すればよいのだろうか?

» 2008年10月16日 12時00分 公開
[碓井誠(フューチャーアーキテクト),@IT]

真に有効なシステム化計画を策定、実行するために

 第1回『「CIO」という固定観念から、自らを解き放て!』で、CIOの歴史は1980年代にさかのぼると述べたが、1980年代後半には、戦略的情報システム(strategic information system、以下SIS)のコンセプトの下、経営における情報システムの位置付けと、業務プロセス改善の重要性が幅広く認識される、新たなIT活用の時代を迎えることになった。

 筆者も1980年代末、SISのコンセプトに感銘を受け、「情報システムの体系的な活用と、業務プロセス革新、そして両者の連携が今後の重要な事業戦略となる」と認識したことをいまでも鮮明に記憶している。さらに1990年代後半に入ると、BPRの流行や、ビジネスツールとしてのパソコン活用、インターネットの普及により、戦略的IT活用の動きを大きく促進する環境が着々と整備されていった。

 しかし、この動きが広く、着実に根付いていった米国に比べ、日本では業務プロセスや取り引き形態の標準化、オープンアーキテクチャへの移行が遅れた。

 BPRについても、業務の抜本的な見直しを素通りしたプロセス改善や部分的なシステム化にとどまり、大きな“改革”へと発展させられた企業は少なかった。すなわち、SISのコンセプトを実行するための“環境”は整いつつあっても、それを実行するための“戦略性”には欠けていた、といえよう。

 いうまでもなく、CIOの重要な役割の1つは、企業の戦略の策定および実行・支援である。では、CIOが真に有効なシステム化計画を策定、実行するに当たり、戦略的視座を持つためには具体的にどうすればよいのだろうか。

 第2回『時代の変化から、CIOとしての役割を知る』では、そのための1つの方策として、時代の流れを読み「売れ筋は外にある」という視点で外部の革新と成功例を自らの企業に取り入れる重要性を述べた。だが、当然のことながら、それ以前にまず行うべきは、自社の戦略・方針の整理と、これを実行に移すための業務プロセスの組み立てである。今回はこの点について詳しく語ってみたい。

戦略・方針整理のポイント

 ではさっそく、システム化計画の策定に当たり、企業の戦略・方針を整理するための方法論について解説しよう。まず最初のステップとして、社会や消費構造、経済環境の変化を認識し、これに伴う業界や競合企業の変化、制度や技術の変化を的確にとらえておくことである。こうした大きな流れを背景に置いたうえで、自社の方針がどう整理されているのか、どう変化しているかを再確認し、将来を見据えた戦略・方針を明確化することが大切である。 

 だが多くの企業では、こうした世の中の変化を反映させて「戦略や方針を常に明文化し、社内で共有している」とはいいがたい状況にある。また、戦略とは「経営理念」や「市場への価値提案」にとどまることなく、「経営理念や価値提案を、実現、実行するための方針」として、各組織、各業務の機能へとブレイクダウンされ、なおかつ実行に移せるまでの具体的な方向性を備えたものとして整理することが重要である。

 従って、戦略・方針の整理は、組織および業務機能の整理と並行して進めていくと効果的である。私自身、コンサルティングを担当している顧客企業が、5〜10年ほどのスパンで行うシステムの大規模な再構築の際には、いつもこの方法を取っている。

 具体的には以下のような形である。まずプロジェクトチームは、システム部門のメンバーを中心に、テーマに関連する社内主要部門の中堅リーダーで構成し、ここに、システムのパートナー企業のリーダー格を加える。

 メンバーは、過去2年間程度の社内の主要な会議や、会社方針(方針説明会やIR資料)、事業展開と業績の推移、外部公開資料やトップのメッセージを徹底的に読み込むことから始める。

 そのうえで商品部機能、営業部機能、店舗運営機能など、機能ごとにプロジェクトメンバーのチームを作り、具体的な方針を体系的に整理し、同一のベクトルを持つと思われるトップの指示を、これを担うべき部門の機能として集約して、全体の体系を整理する。

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