CIOと情報システム部が担うべき機能と役割進化するCIO像(4)(1/2 ページ)

社内の各部門を支援するサポーター、各部門や取引先と業務プロセス改善に取り組むコラボレーター、経営戦略にかかわるイノベーターと、CIOは複数の役割を担わなければならない。こうした任務を遂行するためには、情報システム部門はどう機能すればよいのだろう。

» 2008年11月13日 12時00分 公開
[碓井誠(フューチャーアーキテクト),@IT]

TPOに応じて担うべき4つの役割

 第1回『「CIO」という固定観念から、自らを解き放て!』では、CIO機能の発展について話をした。図1に示すように、CIOは、社内各部へのサービスプロバイダーサポーター、各部門や取引先とともに業務プロセスの改善に取り組むコラボレーターとしての役割がある。さらに経営戦略や業務改革、新規事業開発に深くかかわり、問題解決提案やプロジェクト推進を行うイノベーターの役割もある。

ALT 図1 CIOには以上のようにさまざまな役割がある。しかし「機能の発展だけを目指せばよいわけではなく、状況に応じて変幻自在にどの役割も果たすことが重要」である(クリックで拡大)
CIO機能の広がり 図2 図1の横軸「ITの活用度」が高まるほど、3者の融合度も高まる

 今回は、この3つの役割が、図1に示したように発展的に機能変化をするだけではなく、企業の方針や経営環境、開発テーマや業務運営のプライオリティに対応して、同時にかつ連動して実行されることの重要性について解説する。

ビジネスとITを、バランスよく考えられる体制を構築する

 本論に入る前に簡単に復習しておくと、当然、経営にもシステムにも“攻め”の部分と“守り”の部分がある。現場と事業インフラ、アプリケーションとシステム基盤、効率性と効果性の追求などだ。いわば「現場力の向上施策」と「これを支え、発展させる構造的施策」の両面がバランスよく噛み合うことで、経営の安定と成長のベースが形成される。従って、CIOはサポーター、コラボレーター、イノベーターの3つの役割を、“攻め”と“守り”のTPOに応じてバランスよく果たすことが重要となる。

 では、これをどのように実践すればよいのだろうか。具体的なイメージをつかみやすいように、情報システム部門の役割と、運営の在り方についてセブン-イレブンの事例で紹介しよう。

 セブン-イレブンは、「情報システム部門が幅広い役割を持つこと」と、「戦略的かつ実務的に組織横断機能を担う実行部隊の形成」を通じて、業務改革とシステム革新を同時並行で推進した数少ない企業の1つである。この事例をほかの企業でも標準的に適用することは難しいと思うが、1つの典型として参考にすることはできる。

 まず、CIOがバランスよく役割を果たすためには、社内外におけるシステム部門の位置付けを組み立てることが重要である。図3に示すのは、情報システム部門の役割の範囲である。「戦略的業務改革」という役割と、「システムの開発・運用」の2つが連動して位置付けられ、これを支える強力な外部パートナーと一体化したチーム形成を図っている。

情報システム部門が担うべき役割 図3 情報システム部門は、社内においては組織横断型の改革支援と推進の役割を果たし、社外においてはシステムの外部パートナーメーカーと連携して開発、運用を担う。こうして業務改革・システム改革の双方を推進していく

 「戦略的業務改革」領域における役割は、業務の改善・改革や新規ビジネスの企画、立ち上げ、システム実装までと幅広い。例えば2000年前後に手掛けた、eコマースサイト、店舗ネットビジネスの開発、ATM運営会社システム(後のセブン銀行)、食事の宅配事業であるセブンミールサービスの立ち上げなどは、すべて1〜2年間で検討、計画、システム構想を行った。そのうえで事業計画概要を取りまとめ、全社オーソライズを受けて、外部パートナーと連携してプロジェクトを立ち上げてきた。  

 一方、システム開発・運用の領域でも、オープン系技術の積極的な導入のほか、創業以来の30年間で6次にわたる店舗システム機器のオリジナル開発、ミドルウェアの独自開発などを、外部パートナーと一体となって行ってきた。  

 セブン-イレブンの特徴は、こうした業務改革や新規事業への取り組みと、現行システムの運用・管理、またアプリケーション検討とアーキテクチャ評価などを、それぞれに対応した組織を別々に作って推進するのではなく、組織を極力一体化し、多くのメンバーが運用と開発の双方を、また、ビジネスとITの両面をバランスよく修得し、発想できるような組織体制を敷いている点にある。

 具体的には、1992年にシステム開発部とシステム運用部を統合し、業務機能別に店舗システムチーム、会計システムチーム、情報活用システムチーム、取引先システムチームなどに再編成した。現行システムの運用、次期システムの構築、ともにチームメンバー全員がかかわるとともに、チーム間の連携も強化する体制を築いた。

 こうした情報システム部門の運営体制は、組織間の壁を低くしてトップダウンの情報を確実に共有するとともに、それに対応する迅速な部門間連携を重視したセブン-イレブン全体のマネジメント体制と同様の形である。

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