要件定義が不十分であっても、一定のスケジュールや予算の下でシステムを開発しなければならないケースは多い。そうした中でも真に役立つ高品質なシステムを開発するには、どのような体制が必要なのだろうか
第5回『業務改革とシステム革新は“両輪”で進めろ!──システム化計画編』では、システム構築の前段に当たるシステム化計画の方法論について説明した。今回は後段に当たるシステム開発の方法論と開発体制の組み立て、運用について話をする。
システム開発については、CMM/CMMIなど、標準的なプロセス改善手法の導入が各社で進みつつある。方針が明確であり要件定義のコンセンサスが図られているプロジェクトは、これらの手法に沿って開発とマネジメントを進めることで、品質と効率の向上が見込める。
しかし中には、業務改革方針や要件定義の不明確な部分を携えつつ、経営−現場−システムのコンセンサスが不十分な中でも、一定のスケジュールと予算の制約の下で、プロジェクトを推進せざるを得ないケースも少なくない。さらには開発が進み、詳細のレビューの段階に入っても変更や追加の要求が後を絶たず、全体最適の同床異夢のほころびや、部分最適でさえ部門間の異床異夢の中にあり、最善策・次善策にも至らぬ場合がある。
これらはシステム開発の最大の障害であるが、決してなくなることのない要素である。コンカレント開発やアジャイル開発といった手法を取ったり、“作り込み”か“パッケージソフトウェアの活用”かを区分し、後者の場合にはパッケージやツールのフィットギャップ分析で要望を整理、切り分けして対応しようとする考え方も1つの方法ではある。
しかし、“変化への対応”が、今後より重要となることを受け入れ、柔軟、迅速な開発力を強化するためには、システム開発手法に変化対応を組み込み、開発マネジメントの範囲の中に、経営および現場との意思決定プロセスを包含して整備することが必要である。
従来のシステム開発手法は、開発フェイズに対応した詳細の方法論や品質基準などは備えているが、こうした“変動要素”は阻害要因としてとらえ、本筋の議論とは別に考える傾向があった。
これからのシステム開発手法は、情報システム部門と開発パートナーの両者間の手法にとどめるのではなく、ユーザー企業の経営層、関連部門、情報システム部門、開発パートナーの4者がコンセンサスを形成する中で、進めてゆく手法となるべきである。
それでは、このような手法をどう整理し、運用していけばよいのであろうか。まず開発手法の考え方の基本、目標とすべきシステム構築の在り方を以下にまとめてみる。
必要な要件は多々あるが、「経営と各部のオーナーシップの形成」「情報システム部門の提案力とリーダーシップ」「一枚岩の開発体制と相乗効果」の3点がシステム開発の強固な基盤となる。
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