連載
間違いだらけのIT人材育成(1)


IT企業はITSSで人材育成できるのか

井上 実

2010/2/4

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シンプルなIT人材体系が解決への道

 では、IT人材体系をもう少しシンプル考えてみたらどうだろうか。

 ITシステムに限らず、企業内の活動は、PDCA(Plan・Do・Check・Act)のマネジメントサイクルを回すことにより行われる。

 ITシステムの場合には、Planに当たるのが企画、Doに当たるのが設計・開発・導入および運用、Checkが評価であり、Actが企画や設計・開発・導入へのフィードバックと当てはめることができる。

 これに合わせた人材を育成することを考えたらどうか。

 主に企画段階を担当する人材、設計・開発・導入の段階を担当する人材、運用・評価を担当する人材に大きく3分類する。Doを担当する人材は1つでもよさそうだが、内部統制上、設計・開発・導入担当者と運用担当者は分ける必要がある。

 Checkを担当する人材を、運用を行う人材と分けることも考えられるが、評価だけを担当する人材というのは現実感がない。また、企画をした人がそのまま設計・開発・導入に携わることも考えられるが、人材像としては分離しておいた方が、適用範囲が広がると思われる。

 また、アプリケーションを担当する人材と、インフラを担当する人材は質的な相違があるため、各段階でこの2つに分けると、6つの人材像ができる。これを職種体系とすることにより、実際に仕事の分担とほぼ一致する。

 レベルは、プロジェクトの複雑性やサイズではなく、システムの対象とする範囲で考える。業務の中の1つの処理(例えば受注処理)から、業務全体(例えば販売業務)へ、さらに事業全体や全社の業務(例えば事業部システム)に範囲が広がるごとにレベルが上がる。

 複雑性の高いプロジェクトや規模の大きなプロジェクトを中小企業が受注することは難しいが、担当範囲を広げることは顧客規模によっては可能である。大企業の全社システムを受託することはできなくても、中小企業の全社システムを受託することはできるからだ。

(図表9)IT人材キューブ
図表9

 これらをまとめると、図表9のようなキューブで表すことができる。

 このようなシンプルな人材体系をベースにすることで、大企業だけではなく、中小企業にも適用可能なIT人材育成体系を容易に構築することが可能になり、IT人材全体のレベルアップを図ることができる。

参考文献

  • 『ITスキル調査結果(2003年〜2008年)』(ITスキル研究フォーラム:iSRF、日経BP社)
  • IT人材白書2009(IPA IT人材育成本部=編、オーム社)
  • 『ITスキル標準V3 2008 2部キャリア編』(IPA IT人材育成本部 ITスキル標準センター=著)

筆者プロフィール
井上 実(いのうえ みのる)
グローバルナレッジネットワーク(株)勤務。MBA、中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。
著書:『システムアナリスト合格対策』(共著、経林書房)、『システムアナリスト過去問題&分析』(共著、経林書房)、『情報処理技術者用語辞典』(共著、日経BP社)、『ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜』(共著、同友館)。
■要約
すでにITSSは多くのIT企業で活用されているが、IT業界全体の人材育成に効果を挙げているのか検証し、挙げていないのであればその原因と解決策を探る。

ITスキル研究フォーラムやIPAの調査結果を見ると、ここ数年間はITSSベースで見る限り、IT業界の人材のレベルアップ、底上げはされていない。しかし、IPAの調査では人材の量が「大変不足している」と答えた企業が16.2%だったのに対し、人材の質に対して倍の32.4%の企業が「大変不足している」と感じていた。つまり、量よりも質が求められており、高度IT人材に対するニーズが高いことが分かる。

ITSSの普及状況を見ると、中小企業での採用率が低いことが分かる。つまり、「ITSSが中小企業に普及しないことが、IT人材のスキルアップが図られない原因の1つ」と考えられる。その原因を探ると、ITSSの職種体系とレベル評価方法がともに、中小企業には導入しにくいものとなっているからだ。その問題を解決するためには、よりシンプルなIT人材体系が必要だ。

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IT企業はITSSで人材育成できるのか
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ITSSスキル調査結果は横ばい状態
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量よりも質の向上が求められているIT人材
ITSSの導入状況
なぜ、ITSSは中小企業に普及しないのか
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