企業内におけるIT人材育成は、依然として新入社員研修を中心とした、若年者層を主体に行われている。しかし、人口構成や企業競争力への貢献度を考慮すると、果たして、これが有効な人材育成といえるのだろうか。ここでは、今後企業が育成を強化すべき年代に関して考えてみる。
情報処理推進機構SEC(Software Engineering Center)の「エンタプライズ系ソフトウェアにおけるSE度の実態調査」によると、メーカー系、ユーザー系、独立系のいずれにおいても、新人に対しては年間400時間を超える研修が行われているが、新人以外のIT技術者に対しては、1桁少ない40時間前後の研修しか行われていない(図表1、2参照)。
IT企業には、ITに関して何ら教育を受けずに入社する新入社員も多い。よって、3カ月間前後の新人研修を実施して一から教育している企業が多いことからも、「年間400時間の研修時間」は理解できる。
それに対して、新人以外の社員は実務が忙しく、研修を受ける機会が少ない。
「仕事の空いているときに研修を受講するように」と会社から言われても、なかなか仕事の空き時間を見つけることは難しく、受講できていないというのが、新人以外のIT技術者の実態だ。大手IT企業の中には、年間10時間の研修受講を義務化しているところもあるが、これはまだまだまれなケースである。
つまり、いまのIT人材育成は、新人を中心とした若年者層に偏っているといえる。
国立社会保障・人口問題研究所が発表している2010年の人口分布(人口ピラミッド)は、図表3のとおりである。
団塊世代は60〜65歳となり、定年を過ぎて企業の主力から離れてしまった。次に、人口が多いのは、彼ら(彼女ら)の子供たちである団塊ジュニアであり、35〜39歳になる。団塊ジュニア世代以降は、急激に少子化傾向が高まり人口が減少している。団塊ジュニアが男女とも約100万人いるのに対して、20歳代の人口は60〜80万人になっている。
団塊ジュニアを中心とした世代は、40歳前後という管理職になる年齢になったが、部下となるべき若い世代の社員が少なく、部下を持てない人も出ている状態にあることを人口ピラミッドは示している。
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