なぜ、超上流プロセス担当人材を育成できないのか間違いだらけのIT人材育成(5)(1/3 ページ)

超上流プロセスが注目を集めているが、これを担う人材をユーザー企業、IT企業ともに十分には育成できていない。なぜ、育成することが難しいのだろうか? 超上流プロセスの内容を確認したうえで、人材育成上の問題点を明らかにし、解決の方向性を検討する。

» 2010年10月06日 12時00分 公開
[井上 実,@IT]

超上流プロセスとは

 超上流プロセスとは、IPA(Information technology Promotion Agency, Japan:情報処理推進機構)SEC(Software Engineering Center)の定義によると、システムライフサイクルにおける設計などの上流プロセスよりも、さらに上流の「システム化の方向性」「システム化計画」「要件定義」を行うプロセスである(図表1参照)

ALT (図表1)超上流プロセス
(出典)『経営者が参画する要求品質の確保』(IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター編、オーム社、2006/6、P35)

 2007年に改訂されたSLCP(Software Life Cycle Process)共通フレームでは、「システム化の方向性」を「システム化構想」と読み替え、この「システム化構想の立案」と「システム化計画の立案」を行うプロセスを「企画プロセス」、「要件定義」を行うプロセスを「要件定義プロセス」と呼び、それぞれにおける作業内容を整理している(図表2、3参照)。これらから、超上流プロセスの概要を理解することができる。

プロセス(大項目) プロセス(中項目) 作業内容
企画プロセス プロセス開始の準備 ・企画作業の定義
・必要な支援プロセスの実施
・企画環境の準備
・企画プロセスの実施計画の作成
システム化構想の立案 ・経営要求、課題の確認
・事業環境、業務環境の調査分析
・事業環境、現行業務、システム、情報技術動向の調査分析
・対象となる業務の明確化
・業務の新全体像の作成
・対象の選定と投資目標の策定
・システム化構想書の文書化と承認
・システム化推進体制の確立
システム化計画の立案 ・システム化計画の基本要件の確認
・対象業務の内容の確認、システム課題の定義
・対象システムの分析、適用情報技術の調査
・業務モデルの作成
・システム化機能の整理とシステム方式の策定
・システム化に必要な付帯機能、付帯設備に対する基本方針の明確化
・サービスレベルと品質に対する基本方針の明確化
・実現可能性の検討、全体開発スケジュールの作成
・システム化計画、プロジェクト計画の作成と承認等
(図表2)企画プロセスの概要 (出典)『共通フレーム2007』(IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター編、オーム社、2007/10より作成)


プロセス(大項目) プロセス(中項目) 作業内容
要件定義プロセス プロセス開始の準備 ・要件定義作業の定義
・必要な支援プロセスの実施
・要件定義環境の準備
・要件定義プロセス実施計画の作成
利害関係者要件の定義 ・利害関係者のニーズの識別と制約事項の定義
・業務要件、機能要件、非機能要件、スケジュールに関する要件の定義
・新組織および業務環境要件の具体化
利害関係者要件の確認 ・要件の合意と承認
・要件変更ルールの決定
(図表3)要件定義プロセスの概要 (出典)『共通フレーム2007』(IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター編、オーム社、2007/10より作成)
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ