とことんやり、スパッと見切りをつける挑戦者たちの履歴書(123)

編集部から:本連載では、IT業界にさまざまな形で携わる魅力的な人物を1人ずつ取り上げ、本人の口から直接語られたいままでのターニングポイントを何回かに分けて紹介していく。今回は、瀧田氏の子供時代を取り上げる。初めて読む方は、ぜひ最初から読み直してほしい。

» 2011年11月11日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

 本連載でこれからおいおい紹介していくことになるが、瀧田氏がWebブラウザの発展史とともに歩んできたキャリアは、実にタフなチャレンジの連続だった。そうしたタフネスを支えた要因は幾つかあろうが、その1つは子どものころから積み上げられてきたスポーツ経験にあったようだ。

 「小学校低学年ぐらいまでは、運動会の徒競走ではいつもビリになるような子どもだったんですけど、4年生のころから急に運動に開花したようなところがあって。特に持久力を必要とするスポーツは得意でした。水泳なんて“河童”と呼ばれてましたね!」

 夏休み、3歳上の姉についていった学校のプールで水泳に目覚めた幼い瀧田氏は、自己流ながらも小学校時代を通じて水泳を続け、中学進学後は水泳部で本格的に水泳に打ち込むことになる。

 しかし、瀧田氏が生まれ育った鳥取県は、冬の間は雪に覆われてしまい、屋外プールが使えなくなってしまう。県外の人間からするとちょっと意外な気もするが、日本海に面する鳥取県は、中国地方にありながらも実はれっきとした雪国なのである。瀧田氏は、冬の間に学校で行われたスキー遠足のことを、今でもよく覚えていると言う。

 「冬になると、鳥取砂丘も一面雪で覆われます。そこで、学校からスキー板をかついで砂丘までスキーに行くんですが、当時はこれが大嫌いで! スキーと言っても全然優雅なものではなくて、竹のストックと皮の編み上げ靴に、エッジのない山スキー。後に学生時代になって周囲がスキーに夢中になるのを見て、『何をわざわざ好き好んで寒いところまで行ってスキーをしなきゃいけないんだろう?』と思ってましたね」

 しかし、生粋のスポーツウーマンである瀧田氏。学生時代に周囲に無理やり連れていかれたスキーに、結局はどっぷりとはまってしまったと言う。

 「やるからにはとことんやらないと気がすまない性格なので、学生時代にはアルペン競技を始めて、草レースに出場したりもしました」

 やるからにはとことんやらないと気が済まない。この瀧田氏の負けず嫌いな気質は、これから紹介していく同氏のその後の足跡においても、いかんなく発揮されていくことになる。

 では、学校の勉強においてもさぞかし負けず嫌いだったのでは、と水を向けると、同氏は「ぷっ」と噴出しながら、

 「基本的に『わが道を行く』子どもだったので、勉強もわが道を勝手に進んでましたね! とにかく、算数しかできない子どもでした。逆に、国語や社会といった文系の科目は本当に苦手で。文系科目って、ファジーじゃないですか。『作者の意図を考えよ』とか、算数みたいにピタッと正確な答が出せない世界ですよね。どうもそういうのは、肌に合わないんですよね」

 子どものころから理数系の勉強が得意……。本連載ではこれまで、IT業界の最前線で活躍する5人の人物の半生を紹介してきたが、ほぼ全員に共通するのが、子どものころから理数系の才能を発揮させていた点だ。瀧田氏もこの例に漏れないのだが、しかし同時に「英語だけはもう少し勉強しておけばよかった」とも語る。

 「今の子どもたちは小学生のころから英語に触れたり、中学で留学できるチャンスがあったりと、英語を学ぶ機会が多くていいなと思いますね。私は大人になってから英語で苦労したくちなので、うらやましいなと思います」

 ちなみに、瀧田氏が得意だった科目は、数学以外にも後もう2つあった。1つは体育。これは冒頭で紹介した通りだ。そしてもう1つが、音楽だった。瀧田氏は中学卒業まで、ピアノを習っていた。これも水泳と同様、姉が先にピアノ教室に通っていたのについていって、「私もやりたい!」と半ば押しかけ気味に始めたものだったと言う。

 しかし、ここでも「やるからにはとことん」精神が発揮されたのか、かなりのレベルまで上達したようだ。もともと、通っていたピアノ教室自体が、音大進学を視野に入れた本格的な指導を行うところだったこともあり、瀧田氏も一時は音楽を本格的に追求する道に進むことも考えたことがあったと言う。

 しかし、ここまで本格的に習ったピアノも、中学3年のときに突然ぱったりと止めてしまう。

 「先に習っていた姉は相当なレベルまで行ったのですが、姉が高校、私が中学のときに姉がストイックに音楽に打ち込む姿を見て、『私がやりたいのは、クラシック音楽の追求ではないな』と思って、それっきりピアノはやめちゃいました。私はやるときはとことんやるんですけど、やめるときの見極めも早いんですよ。やっぱり、自分の才能の限界を知って、きっぱり見切りをつけることも大事だと思いますね」


 この続きは、11月14日(月)に掲載予定です。お楽しみに!

著者紹介

▼著者名 吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。

その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。


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