プリンティングガバナンスのためのソリューションネットワーク時代のプリンティングガバナンス(3)(1/2 ページ)

プリンティングガバナンスを実施するには、全社のプリンタを漏れなくカバーする管理基盤が必要だ。今回はプリンティングガバナンスの具体的解決策について述べる。

» 2008年03月18日 12時00分 公開
[向井 俊一,@IT]

全プリンタを集中管理せよ

 プリンティングが計算センターや伝票センターだけで行われていた時代のセキュリティは強固でした。しかし、現代のように一般のオフィスエリアに膨大な数のプリンタがあり、いたるところで出力が行われているということになれば、それに見合ったセキュリティ対策が必要になります。

 紙情報のメリットである「携帯性」──すなわち持ち運びやすいという性質は、企業セキュリティの面ではデメリットになります。コンピュータに対する印刷操作というオペレーションについては認証やアクセス制限などである程度管理できますが、出力後の紙メディアをITで管理をすることは極めて困難です。

 これの懸念に対しては、まず誰が・いつ・どこで・どのプリンタに・何を印刷したかを記録する仕組みを構築することです。必要があれば、それらをさかのぼって把握できるようトレーサビリティの機能を持たせ、プリントアウトの形での不正な持ち出しに抑止力的な効果を狙うことが現実的であり、効率的でしょう。

 これらのセキュリティ手段は、「企業内の印刷のすべて」を対象とすることが肝心です。もし管理下にないパソコンやプリンタがあれば、そこが“セキュリティホール”になります。その意味でメインフレーム系であれ、オープンシステム系であれ、あるいは異なるメーカーのプリンタが混在していようとも、すべてのデバイスがきちんと監視・管理できる環境が必要です。

アウトプットマネジメント

 具体的な対策としては、「印刷管理」「プリンタ運用管理」「アウトプットマネジメント」などと呼ばれるシステムの導入が考えられます。その機能は、次のようなものです。

  • 印刷ジョブの監視
  • 印刷ログの取得・管理
  • プリンタの状態監視・使用状況の管理
  • 印刷要求者(ユーザー)や管理者への印刷完了(あるいはエラー)の通知
  • 用紙や消耗品(トナー)の消費状況の監視・警告
  • エラー発生時のリカバリ印刷
  • 大量印刷要求の分散印刷
  • ユーザーの印刷権限の制限
  • 印刷要求のデータ変換

 実際の製品にはさまざまなものがあり、同じオフィスの中にある同じプリンタメーカーのものを対象にしたものから、遠隔地のオフィスに分散している数百〜数千台のプリンタをネットワーク経由で一元管理できるものまであります。提供の形も、上記の機能をすべて備えているもの、一部のみのもの、モジュール別になっているものなどがあります。

 プリンタ・ハードウェアのメーカーはたいてい、こうしたソリューションを持っていますが、他社プリンタは対象外となっていることが多いようです。サードパーティ製のものは通常、プリンタについてはマルチベンダ対応です。対象ホストもWindowsパソコンのみというものから、メインフレームを含めて対応しているものまでさまざまです。

プリンタの稼働状況を即座に

 こうしたソリューションを導入することで、システム管理者は社内にあるすべてのプリンタの稼働状況──いまどのプリンタが稼働しており、どのプリンタが紙切れになっているか、そしていま誰が何をどのプリンタで出力しているかなどをリアルタイムで知ることができます。

 プリンタの稼働状況やプリントジョブの実行状況を社内の一般ユーザーに公開すれば、ユーザーは自分の印刷が完了したのかどうかを自席のパソコンで知ることができるようになります。プリンタが自席から離れている場合、あるいは遠隔地の別オフィスへプリント出力を行う場合などに便利でしょう。紙切れなどで印刷できなかったときにも、リアルタイムで事態を把握できるので、急ぎの印刷の場合でもプリンタの近くに行く前に「紙の補充」といった対策を遅滞なく取ることができるわけです。

プリンティングにもセキュリティを

 印刷管理/アウトプットマネジメントシステムの最大の効用は、セキュリティ強化にあります。不幸にして印刷物経由の機密情報の漏えい事件が判明したとしましょう。その場合にはそれと同じ印刷物が、いつどこで誰によって印刷されたかを過去にさかのぼってリストにできます。また、印刷物にログ記録(ログID、印刷要求をしたユーザー名、ドキュメント名、開始・終了時刻など)や「持ち出し禁止」などの文字を強制的に印刷する方法もあります。持ち出された印刷物が見つけられれば、印刷物に印刷されたログIDを手掛かりにいつ誰が出力したものかを特定できます。さらに、ログIDなどを、一見それとは分からないような形で印刷する技術も登場しており、ID部分を塗りつぶして複写コピーして持ち出す、ということもしづらくできます。

現場レベルでのコスト削減

 また印刷履歴データからは、誰がどれだけ印刷を行っているかが分かるので、「突然、極端に多くの印刷を行った」という“怪しい行動”を発見することができるかもしれません。あるいは必要であれば、プリンティングを部門課金にして直接費化し、現場にコスト削減を促すという用途にも活用できます。

 ヘルプデスクにとってもこうした管理機能は、朗報です。企業におけるIT関係のヘルプデスク・コールの多くはプリンティングに関するものだといわれており、ヘルプデスク担当者がプリンタ稼働状況や印刷ジョブ実行状況・履歴を見ることができれば、作業効率の一助になるでしょう。

 先に書いたとおり、印刷管理ソリューションの具体的な製品にはさまざまなものがあります。支社・支店を全国あるいはグローバルに展開している企業において、オフィス単位にこうしたソリューションを導入するメリットがないわけではありませんが、プリンティングガバナンスという面では不十分だといえるでしょう。大手企業になれば社内に数百から数千台という多数のプリンタがあるはずです。プリンティングガバナンスを利かせるには、アウトプットマネジメント・システムにも企業規模に応じたスケーラビリティが必要です。

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