連載
情シス部のリバイバルプラン(5)


人材ポートフォリオを構築して、情シス部をリバイバル

井上 実

2006/11/14

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人材ギャップ解消策の立案・実施

 現状の人材ポートフォリオと求められる人材ポートフォリオを突き合わせて、差異を洗い出し、人材ギャップを明確化する。どの職種がいつの時点で何人不足するのか、何人超過するのかを明らかにする。

 次に、内部特化領域とアウトソーシング領域をキャリフレームワーク内で検討する(図2参照)。情報システム部の自社内における位置付けから、特に内部で担うべき職種・専門分野・レベルは何か、外部に主として依存すべきものは何かを、戦略的に検討する必要がある。キャリアフレームワークを検討する中でも、内部人材育成という観点から、アウトラインが見えてきたはずだが、この段階でさらに戦略的な観点から検討を加える。

(図2)人材ポートフォリオ構築とギャップ解消策

 例えば、東京電力では自社内のシステム企画部において、業務部門と対等に話ができ、業務改革をリードできる人材としてのコンサルタント、メーカーベンダと技術面で渡り合える人材としてのITアーキテクトを、内部特化領域として定義している。一方、ほかの職種は、システム子会社のテプコシステムズや外部のITベンダに依存する領域とした。

 同様に松下グループにおいても、自社内情報企画グループ、国内情報システム部門および海外情報システム部門は、情報化戦略立案機能を特化領域とし、ITソリューション提供機能はコーポレートシステムやグループ会社で担う領域としている。

 内部特化領域とアウトソーシング領域における要員の過不足を整理したうえで、ギャップ解消策を検討する。考えられるケースとギャップ解消策には次のようなものがある(図3参照)。

(図3)人材ギャップ解消策
  1. 内部特化領域に内部人材不足が発生している場合
      いつまでに何人不足しているかを確認する。時間的に余裕がある場合には、内部人材育成やスキルシフトを実施する。時間的に間に合わないようであれば中途採用を行う。

  2. 内部特化領域がアウトソースされている場合
     内部人材育成やスキルシフトを実施し、人材が育成できた部分からアウトソース範囲を縮小していく。

  3. 内部特化領域の内部人材が必要な要員数を超過している場合
     ほかの内部特化領域で内部人材不足が発生している場合には、スキルシフトの対象として検討する。

  4. アウトソーシング領域に内部人材が超過している場合
      超過している人材の内部特化領域へのスキルシフトの実施と、アウトソーシングの拡大を行う。

 これらのギャップ解消策を、そのまま実施できない場合ももちろんある。

 例えば、スキルシフトは職種の変更を伴うため、本人の同意を得る必要がある。いままで、レベル5のアプリケーションスペシャリストだったとしても、コンサルタントに職種を変更すると仕事の内容が変わるだけではなく、レベルが4以下に落ちる可能性もある。レベルの落下は報酬制度と連動していなくても、本人にとってはショックだろう。将来のキャリア開発プランを含め、本人の十分な理解なしにはスキルシフトは実施できない。

 また、中途採用を募集しても、業界で全体的に人材が不足しているコンサルタントやITアーキテクト、プロジェクトマネージャは、なかなか優秀な人材を採用することができない。そのため、採用が有効なギャップ解消策にならないこともあり得る。

 策定したギャップ解消策が有効にならない場合には、再度、解消策を検討するとともに、現実を見据えたうえで、内部特化領域とアウトソーシング領域を見直す必要もある。

人材ポートフォリオの維持と定期的な見直し

 人材ギャップ解消策が実施されれば、それで良しというわけではない。

 現状の人材ポートフォリオは、常に最新の状態に保つ必要がある。人材育成やスキルシフトにより、人材が育ったかどうかを正確に把握しなければ、人材ギャップ解消策の適切な修正を図ることもできなくなってしまい、結果として、人材ギャップが解消されないという事態を招きかねない。目標による管理の評価面談により、要員のスキルを年に1回把握することは、人材ポートフォリオを最新に保つために欠かすことのできない要素である。

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 また、企業経営が環境の変化に対応して、常に変化し続けなければならないのと同様に、経営と密接な関係にある情報システムも、その位置付けを常に見直す必要がある。位置付けが変われば、それに関する業務機能も変わり、人材像・人材ポートフォリオも見直さなければならない。少なくとも、中期レベルで経営戦略が大きく見直されるのに合わせ、人材像・人材ポートフォリオも見直されなければならない。

 常に、事業活動における情報システムの位置付け、業務機能の役割、人材像、人材ポートフォリオを見直し、内部特化領域を明確にしたうえで、人材育成を怠らなければ情報システム部が弱体化することはあり得ない。

 本連載はここで終了するが、アウトソーサに恐れられ、自社の経営者や他部門から頼られる強い情報システム部の復活に期待したい。

筆者プロフィール
井上 実(いのうえ みのる)
横浜市立大学文理学部理科卒。多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了。グローバルナレッジネットワーク(株)勤務。人材ポートフォリオ構築、人材開発戦略立案、キャリアパス構築などに関するコンサルティングを担当。中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。
第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。
著書:「システムアナリスト合格対策(共著)」(経林書房)、「システムアナリスト過去問題&分析(共著)」(経林書房)、「情報処理技術者用語辞典(共著)」(日経BP社)、「ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜(共著)」(同友館)。
■要約■
今回は人材ポートフォリオの構築方法と、それを使った情報システム部リバイバルプランの作成方法を紹介する。

定義された人材像に基づいて、現状の人材ポートフォリオを作成する。そのためには、対象者に対して、人材像定義に基づく評価を行う必要がある。説明終了後、評価を実施して結果を収集する。そして、結果をカスタムキャリアフレームにマッピングし、現状の人材ポートフォリオが完成する。

現状の人材ポートフォリオと同様に、定義された人材像に基づいて求められる人材ポートフォリオを作成する。カスタムキャリフレームワークの職種・専門分野・レベルごとに「いつまでに、何人必要か?」を記入する。「いつまでに」を記入するのは、タイムリミットによりギャップ解消策が異なるためだ。

そして、現状の人材ポートフォリオと求められる人材ポートフォリオを突き合わせて差異を洗い出し、人材ギャップを明確化する。次に、内部特化領域とアウトソーシング領域をキャリアフレームワーク内で検討したうえで、人材ギャップ解消策を各領域ごとに策定し実施する。そして、人材ポートフォリオを常に定期的に見直し内部特化領域を明確化したうえで人材育成を行えば、情報システム部が弱体化することはあり得ず、リバイバルする。

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