連載
何かがおかしいIT化の進め方(29)


有能なプロジェクトマネージャを育てるには(2)

公江 義隆

2006/11/23

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5つのプロセスも9つの知識エリアもプロジェクトに限った問題ではない

 5つのプロセスと9つの知識エリアについてはどうだろうか。5つのプロセスはPDCAプロセスだ。これもプロジェクトに特有のものではない。9つの知識エリアの内容は、考えてみればどんな組織のどんな仕事にも存在する問題だ。

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 継続的に同種の仕事を行っている組織では、担当する仕事の分野や課題の範囲、仕事の進め方などがおおよそ決まっているし、組織としての価値観や課題内容に対する判断基準なども、日常活動の中で自然にはぐくまれた暗黙知として存在している。従って5つのプロセスも知識分野にかかわる9つのマネジメントプロセスも、ことさら意識しないでも自然にやれている場合が多いわけである。

 一方で、方々から人を寄せ集めて編成したようなプロジェクトの場合では、メンバーそれぞれの頭の中にあることが異なっている。これをそろえるために、「何のために、何を、どのようにするのが責務(ミッション)なのか?」に始まり、指示命令系統や報告すべき事項やその方法、タイミング(コミュニケーションマネジメント)など、すべての仕事の手順や方法を、事前に明確にしてメンバーに周知徹底し、また「そのルールが守られているか、遂行状況はどうか」などの監理(モニター)のために、管理・統制活動の必要性が高くなるだけのことである。

 従って、プロジェクトでなくても、企業合併や組織を新しく作った場合には、その当初段階でプロジェクトと同じ状況が発生するし、継続的な組織の中でも、大きな人事異動などで問題が顕在化する場合がある。

 PMBOKの項目の内容はプロジェクトに限らず、マネジメント一般の基本的な仕組みや道具立て、整備すべき作業環境条件を述べたものでもあるのだ。継続的な組織や仕事では、それらが組織の暗黙知として共有されているため、あらためてそんなことを取り上げなくても済んでいるだけなのである。

プロジェクトの規模によって何が違ってくるのか?

 「世のプロジェクトマネジメントの教科書やPMBOKは、立派過ぎて自分たちの日ごろ手掛けている規模の仕事には合わない」という人がときどきおられる。この規模の問題に対するキーワードは「徹底」という問題だ。

 目の前や隣に座っている数人で実行するプロジェクトなら、プロジェクトの方針について「この前説明したときに、1ついい忘れたことがあった。あそこはXXでお願いする」といえば、大きな問題になることは少ない。あるいは、「取りあえずやってみながら、問題があったらそのときに相談して決めることにしよう」といったやり方でも通用し、またその方が結果の良い場合もある。

 しかし、数十人、数百人の人を動かす体制ならどうだろうか。この前の説明でいい忘れていたために、それとは異なった方向に走り出しているメンバーが方々にいるかもしれない。

 「取りあえずやってみて、もし問題があれば……」の方法にしても、優秀な人がいるほど、問題を自己流に解決して先に進んでしまっている。やっている当人たちにとっては、解決済みの事項に問題があるとは感じていないから報告も連絡もしない。マネージャには情報が届かず、その実態はなかなか把握できない。気が付いたときには、全体がバラバラの方向に動いてしまっていたといったことになりかねない。慌ててプロジェクトの方針を出し直し、報告制度を整備したりしても、いったん動き出している組織は、いまさらこんな通達にまじめに目を通すことさえしない。混乱はますますひどくなる。

 つまり、内在する問題に変わりがあるわけではないが、小規模プロジェクトなら、言葉は悪いが“かなりいいかげんなやり方”をしていても、問題点の修正は比較的容易であり、それらが致命的にならない場合が多いわけである。

 一方で、大規模プロジェクト・大人数の組織になるほど、事前に極めて詳細な事項まで決めて、それをメンバー全員に徹底しておかなければ、取り返しのつかないことが容易に起こり得るわけである。

 つまり、必要とされる方針の理解やルールの徹底の度合い、リーダーシップの在り方が、プロジェクトの規模によって変わってくるということだ。

次回予告

 プロジェクトマネジメント能力育成シリーズの最終回となる次回は、「若い世代の少ない経験をいかにカバーして育てるか?」について考えてみる。

筆者プロフィール
公江 義隆(こうえ よしたか)
情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)、情報処理技術者(特種)
元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる。
■要約■
前回に引き続き、いかに団塊の世代が持つプロジェクトマネジメント能力を若い世代に受け継ぐかという問題について考察する。今回は特にPMBOKについて考える。

プロジェクトマネジメントに関する知識というと、PMBOKを教科書にして勉強しようとする人がいるが、これはあくまで参考書だ。PMBOKはプロジェクトマネジメントを一般的な体系(理論)として整理したものだ。理論なので抽象化されているし、書かれている個々の内容は当たり前のことがほとんどだ。PMBOKを隅々まで覚えても、実際のマネジメントがうまくできるというわけではない。

PMBOKを基にしたマネジメントを考える場合には、4つの適用ポイントを考慮して、情報システム開発プロジェクトの問題にマッピングし直す作業が必要になる。しかし、それには大変な根気が必要で、1人でやろうとしても挫折する。そこで複数人数で協力し合い、互いに気付きや知識・知恵を得ながら行う協働作業とディスカッションが有効となる。自分たちの実務の内容や仲間の経験こそが教科書なのだ。

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有能なプロジェクトマネージャを育てるには(2)
  Page 1
システム開発プロジェクトマネジメントでPMBOKを参考にすると
システム開発プロジェクトへのPMBOK適用のポイント
  Page2
根気の要る作業をどうやってすればよいか?
専門用語や考え方をユーザーに押し付けるな!!
PMBOKの内容はプロジェクト特有のものではない
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5つのプロセスも9つの知識エリアもプロジェクトに限った問題ではない
プロジェクトの規模によって何が違ってくるのか?

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