その考え、本当にあなた自身のものですか?
2008/9/4
こんなことでよいのだろうか?
「追い付け、追い越せ」を達成し、次の目標を失った日本において、国や企業も、企業のIT関係者も、それぞれの将来ビジョンを設定することが喫緊の課題である。 そのためにいま求められているのは、与えられた問題について精緻に分析したり回答したりする能力以上に、「的確に問題を設定できる能力」と「そのための能動的発想」であると思う。
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問題を的確に設定できていなければ、後の作業は水泡に帰してしまう。それだけならまだしも、誤った方向に組織を動かすことにつながってしまう。 「創造」や「応用」とは、幅広い経験から得た知識の組み換えから生まれる。しかし現在、そうした能力を伸ばす教育・訓練の機会は極めて少ない。
私立小学校の入試にこんな問題が出るそうだ。ゾウ、キツネ、ネズミのそれぞれを天秤ばかりにかけた3枚の絵が示されている。問題は「3匹の動物を重さの順序は?」というものである。常識的に考えればゾウ>キツネ>ネズミである。しかし、問題として記された絵の中においては、キツネはゾウより重く、ネズミはキツネより重く、ネズミはゾウより重い。答えも「一番重いのはネズミ、次いでキツネ、ゾウ」である。
出題者としては、この問題を設定した意図を、「先入観にとらわれず論理的に発想するため」とでもいうのかもしれない。しかし私なら、「問題が間違っている」か、「回答はゾウ、キツネ、ネズミの順。ただし、絵のはかりは故障している」と答える。
中学、高校、大学の入試問題を眺めてみても、トリッキーな問題が実に多いように思う。幼いころからこんなパズルのような入試問題に取り組み、その解き方の手順を覚えることがすべて──そんな価値観の中で育てられたら、いったいどんな人間になってしまうのだろう。
新規採用に際して、最も重要視する項目は「学力」ではなく「人間性」だと多くの企業はいう。企業は学校教育に期待していないわけだ。このミスマッチは社会的に大きな損失である。
過去10年をもう一度、振り返ってみよう
少し前の話になるが、現役時代は東西本社制の会社にいたため、毎週水曜・木曜は東京のオフィスに出勤する生活を送っていた。そんなこともあって、東京の研究会や会合に出席する機会も多かったのだが、最初のころは面白かった会合が、次第に億劫に感じるようになっていった。多少いい過ぎかもしれないが、「いうことがみんな同じだ」がその理由であった。
東京は巨大な情報流通都市だ。誰かがどこからか持ち込んだ話が、ベンダ、有識者、メディアのトライアングル連合によって、あっという間に、消費者(買い手)に向けて広く伝播される。周囲の誰ものいうことが同じであれば、深く考えずにそれが正しいことのように思えてくるものだ。誰かが実際にやりだせば、本当は「よそはよそ、うちはうち」であるべき問題も、やらないと世間に遅れを取るような気持ちになりがちだ。
過去十数年を冷静に振り返ってみて、自分たちの視野や興味の範囲がどのようなものであったか、1度考えてみてはどうだろうか。きっと、いままで見えていなかったものが見えてくるように思う。人間10年も同じ状況の中にいると、それが当たり前になってしまい、問題意識そのものが消滅しているものである。
情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)、情報処理技術者(特種)
元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にもかかわる。
いろいろな分野で行き詰まりの感が漂っている。先日は「日本の食糧需給率が40%を切った」と各メディアが取り上げた。農業については、日本同様、多くの国々が補償制度を整備している。しかし、日本はそうした制度を農業の強化に結び付けられず、自ら弱体化を招いてしまった。この海外との違いはどこから来るのか。突き詰めて考えると、物事を深く考えず、行動も受動的な、日本人の特性に弱点があるのではないか。
昭和30年代、「金の卵」と呼ばれた農漁村の中学生らは日本の経済発展に貢献した。だが、農漁村は次の世代を失い疲弊してしまった。みんなで同じことをやれば、状況にかなっている限りは成果を発揮するが、状況が変われば全滅である。自ら考えるより、右にならえ──日本が繰り返してきた行動パターンのツケが、いま、あらゆる分野に回ってきたのではないか。
かつて日本の将来を自ら考え明確なビジョンを示した政治家がいた。『日本列島改造論』を著した田中角栄元首相である。結果的には実現できなかったが、それにまつわる問題が先送りされてきた背景には、日本人の自ら考えない姿勢があったのではないか。次の目標を失った日本において、国や企業、企業のIT関係者には「能動的発想」が求められている。
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- 第1回 世評やベンダの意見に踊らされていませんか?
- 第2回 IT化に対する関係者の不安や不満を取り除くには
- 第3回 プロジェクト・チームの編成で失敗していませんか
- 第4回 IT部門の存在価値は“全社最適”にあり
- 第5回 全社IT最適化のカギは「データ体系の統一」
- 第6回 優秀なスタッフを育てる職場環境とは
- 第7回 仕事への取り組み方は最初の数カ月で決まる!
- 第8回 ブレークタイムに“設計思想”を語り合おう
- 第9回 “誰にでもやさしい”ITは良いことなのか?
- 第10回 ブレークタイムでの話題−製品と情報化のコンセプト
- 第11回 IT化と投資の“正しい”関係とは?(前編)
- 第12回 IT化と投資の“正しい”関係とは?(中編)
- 第13回 IT化と投資の“正しい”関係とは?(後編)
- 第14回 ITの動向や他社の状況を、気にし過ぎていませんか?
- 第15回 いまのIT組織でいつまでやっていきますか?
- 第16回 続・いまのIT組織でいつまでやっていきますか?
- 第17回 理想的な上司と部下の関係とは――部下の育成方法
- 第18回 IT徒然草――コストと利便性を追い求めて失うもの
- 第19回 羽田空港の管制はなぜ止まったのか?
- 第20回 JR脱線事故からマネジメントを学ぶ
- 第21回 “気付き”のコミュニケーション
- 第22回 阪神大震災10年目に考えること、するべきこと(前編)
- 第23回 阪神大震災10年目に考えること、するべきこと(後編)
- 第24回 情報システム部は、もう役割を終えてしまったのか?
- 第25回 リーダーシップを発揮するにはどうすれば?(前編)
- 第26回 リーダーシップを発揮するにはどうすれば?(後編)
- 第27回 SOX法とコンプライアンスとIT
- 第28回 有能なプロジェクトマネージャを育てるには(1)
- 第29回 有能なプロジェクトマネージャを育てるには(2)
- 第30回 有能なプロジェクトマネージャを育てるには(3)
- 第31回 ディスカッションテーマのおもちゃ箱(1)
- 第32回 ディスカッションテーマのおもちゃ箱(2)
- 第33回 ゆでガエルになる前に情報子会社は経営の見直しを
- 第34回 “シックオフィス”で健康を損なっていませんか?
- 第35回 コンプライアンスを語る前に考えてみること
- 第36回 適材適所の人材育成をしよう
- 第37回 事の本質を見極めよう
- 第38回 その考え、本当にあなた自身のものですか?
- 第39回 “変化”は外からやってくる(前編)
- 第40回 “変化”は外からやってくる(後編)
- 第41回 “変化”を模索する世界(前編)
- 第42回 “変化”を模索する世界(後編)
- 第43回 変化の中で、自らを制御できるものが生き残る
- 第44回 新型インフルエンザ対策に学ぶ組織の在り方
- 第45回 持続可能社会とITシステムはどう在るべきか(前編)
- 第46回 持続可能社会とITシステムはどう在るべきか(後編)
- 第47回 いまあらためて確認したい、情シスのイロハ(前編)
- 第48回 いまあらためて確認したい、情シスのイロハ(後編)
- 第49回 失敗は成功のもと、成功は失敗のもと
- 第50回 「想定外」から脱却できる、真の対策を
- 第51回 他山の石――政治を顧みて学ぶマネジメントの在り方
- 第52回 “影”から目を背けてきた原発とIT
- 第53回 優れたシステムを作るための“思考力、人間力”とは?
- 第54回 IT関係者は、原発事故から何を学ぶべきか
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