IT現場の課題や悩みは尽きることがない。問題は、その悩みや課題が解決されることも、時代とともに変わっていくこともなく、いつまでも同じ問題を引きずっていることだ。「システム化企画段階」における「情報システム部門としてのあるべき発想・行動のポイント」を整理した第47回に引き続き、今回は「システム化計画、実施段階」のポイントを紹介する。
前回に引き続き、「情シスのイロハ」という形で「IT現場での発想・行動のポイント」を紹介したいと思う。前回は「システム化企画段階」について配慮すべきポイントをまとめてみたが、今回は「システム化計画、実施段階」のポイントを整理してみた。
前回も述べたが、過去から引き継いできたIT関係者の“悩み”は、「受身の発想を脱却して、自律性を持つ」ことで、かなり解決されると思う。目先の成果を求めるあまり、日々の業務に忙殺されたり、そのときどきの状況に流されたりしてはいないだろうか。狭い“IT島の発想”から早急に脱却し、長期的な視点に立って、幅広く世界の大変化に目を向けてほしい。
少々手厳しい言葉もあるかもしれないが、今回の「イロハ」も情報システム部門で働く“自らのスタンスの見つめ直し”と、“悩みからの脱却”の一助にしていただければと願う。
以下、「IT現場での発想と行動へのポイント」を解説していく。前回同様、基本的にユーザー企業のIT関係者向けに書いているため、コンサルタントやベンダの方は「自社」を「顧客企業」、「ユーザー」を「顧客企業のユーザー部門」と読み替えていただければと思う。
方向や内容を決めるのは“理屈”だが、人の行動を左右するのは“感情”である。情報システム化は、ユーザー部門の領地である業務プロセスを変える内政干渉的行為である。人は自ら必要性を感じ、参画し、決定に関与し、納得したことには、責任を感じて一生懸命になれるものである。反面、それを他人がやれば、内容が優れているほど感情的に面白くないということもある。
従って――
情報化プロジェクトの多くは、“ユーザー部門内の組織や業務の改革”であり、これらは本来、その組織内部で検討され、実行されるべきものである。これをユーザーの既存組織とは別の、独立した体制で行えば、その内容が画期的であるほど、ユーザー部門との溝を深め、受け入れられにくいものになりやすい。
従って――
どのような組織にとっても、経営幹部や周りの関係者に、自部門の仕事の内容や特性をアピールすることは重要な仕事の1つである。IT部門にとって、システム化プロジェクトはそのための絶好の機会である。特に、多忙なユーザー部門のキーマンには、こんなときぐらいしか説明を聞いてもらう時間は確保してもらえない。
従って――
「権限」は「組織上のポジション」に付与されたものである。いくら優秀な人でも、ポジションを離れると組織への影響度は激減する。キーポジションにいた優秀な人でも、プロジェクト・チームの専任メンバーになれば、権限を失い、十分に能力を発揮してもらえなくなることが多い。
従って――
人間誰しも、これから自分がやらなければならない作業の“How to”に関心が向きがちである。しかし、“How to”の判断や選択の基準は、上流の“Why”や“What”の中にある。上流を理解していれば、あるいは思い出せば、正しい「決定」や「選択」を効率的に行える。
従って――
IT化の効果の発現には、関係者のなみなみならぬ努力が必要である。努力が評価されず、報われることがないなら、人は大きな苦労をしてまで努力を続けるであろうか。事後評価を行うことは、IT化の効果発現のための必須要件である。
従って――
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