2009年6月末に3月期決算企業の内部統制報告書の提出期限となり、上場企業の約7割に当たる2672社が報告書を提出した。そのうち、内部統制が有効でなかったのは56社だった。今回はこれらの報告書がなぜ有効でなかったのかを解説する。
各紙で報道されているとおり、金融庁はこの3月期までに決算を迎えた2672社の内部統制報告書の「評価結果」を公表しました。
その結果、全体の2.1%に当たる56社が「内部統制は有効ではない」と報告しており、0.3%に当たる9社が「評価結果を表明できない」としています(なお、その後7月になってから同報告書を提出した2社のうち1社が「有効ではない」と報告しており、7月末現在では57社が有効ではないに該当しています)。
「米国でSOX法が施行されて初年度に当たる2004年の決算にかかわる内部統制の非有効率が16%であった」ことと比較すれば、また、米国では中小規模の会社を適用除外としていたことを考慮すると、わが国の内部統制の評価結果は極めて良好といえましょう。
今回は有効でないと評価された会社の、内部統制のどこが有効でなかったのか、具体例を見てみましょう。
内部統制報告書はEDINETで公開されていますので、インターネット上で見ることができます。そこで、金融庁が公表した例を見てみると、
などが挙げられます。1は内部統制がないに等しく、典型的な欠陥の例ですね。2と3はせっかく社内に規定があるのに、1つでもそれを無視した行為が役員により行われたことで台無しになってしまっています。
4については、「統制環境」「情報と伝達」「モニタリング」にそれぞれどのような不備があるのかによりますが、あわせて考えることで「重要な欠陥」に相当するということでしょう。
ここでは、かなり具体的に決算・財務報告プロセスの統制上の欠陥が記述されています。
現在、数多くの企業が海外展開をしており、海外子会社の内部統制については盲点となっている例が数多くありました。この点は、今後も要注意なところですね。
この表現はあえて会社でそうしたのでしょうが、具体的な内部統制上の不備の内容が書いていないので、株主などの「内部統制報告書を読む人」には何のことか分からない不親切なものとなっています。
この表現も同様分かりづらいですね。
一般的に企業としては、「不備の内容をあまり赤裸々に書きたくない」と考えるのだと思いますが、これだと社内での改善には役に立ちません。恐らく、「社内の不備改善のための報告書」が別に存在している、という会社が多いと思われます。しかし、2重の報告書作成は、それこそ効率的ではありません。
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