日本人エンジニアはもう要らない? 中国IT大学最前線IT戦略トピックス(Topics: Report)(1/2 ページ)

いま、中国の大学がすごい。一人っ子政策の影響で、都市部では大学進学率がかなり上がっているという。その需要を満たすために、大学も急増中だ。今回は、その中でもIT専門大学にもかかわらず1万人近い学生を擁し、毎年2000人のITエンジニアを輩出している東北大学東軟情報技術学院を取材した。

» 2006年08月17日 12時00分 公開
[大津 心,@IT]

 中国東北地方の港町大連の郊外に、東軟集団(Neusoft)が経営するIT専門大学「東北大学東軟情報技術学院」(以下、東軟情報技術学院)はある。同大学は、50万平方メートルの敷地を有する「大連Neusoft国際ソフトウェアパーク」内にあり、アルパインやヒューレット・パッカード(HP)の研究所が隣接し、産学連携に最適な立地だ。2006年9月には在校生が1万人を超える予定。毎年2000人以上のIT専門学生を輩出する同大学を取材した。

50万平方メートルの敷地に1万人を超える学生

 大連Neusoft国際ソフトウェアパークは、大連ソフトウェアパークとNeusoftの共同出資によるもので、投資額は12億人民元を超える。パーク内は、Neusoftソフトウェア研発(研究開発)基地、東軟情報技術学院、国際合作産業区、中小企業インキュベーターの4つの地域に分けられているが、同一パーク内にあることで産学連携のつながりは強いという。

東北大学東軟情報技術学院の正面玄関。授業の終了時などは人であふれかえる

 東軟情報技術学院はNeusoftなどが経営するIT専門大学で、2000年創立。大連のほか、南海と成都にもキャンパスを持っている。大連校の講義用敷地面積は50万平方メートルで、総建築面積35万平方メートル。敷地内は、学習区、住宅区、実践基地、生活サービス区に分かれており、住宅区には10棟以上のマンション型寮が建っており、数千人の学生が暮らしているという。寮費は月額1000元(約1万5000円)程度。学部は理系がメインだが、ビジネスや文系の学部も存在し、情報科学科やITビジネスマネジメント科、デジタルアート科、外国語科などが用意されている。学費は学部によって異なるが、教材などを含めておおよそ年間1〜2万元(約15万〜30万円)程度だという。

 学内には数千のLANポートが存在し、中国で初めて学生全員にノートPCを持たせた大学として有名になった。学生全員がノートPCを持っているため、図書館や自宅でも予習・復習ができるほか、図書館内の蔵書の一部もデジタルアーカイブ化されており、PC上で閲覧可能だ。

 授業は即戦力を育てるべく実践重視のものが多く、JavaやC言語などのプログラミング言語や、実際の機器を触りながら行われる組み込み開発の授業などに加え、日本語や英語の語学教育も盛んだ。カリキュラムには、実践教育を重視した「1321制度」を取り入れている。また、高学年になると、アルパインやHPといった提携企業向けに、それぞれの企業の企業文化や仕事の仕方などを教える専門コースを設けたり、学院内に「学生創業センター(SOVO)」を設立し、学生自身がバーチャルな会社を作って運用するシステムを導入するなど、即戦力を養成するためのカリキュラムが豊富だ。

実践教育を重視した“1321制度”

 東軟情報技術学院の最大の特徴ともいえるのが、「1321制度」だ。同制度は、1年間(中国は主に9月から新年度が始まる)を3学期に分け、2学期間は学術的な授業をメインに行い、残り1学期間は実践授業を主に行うというもの。

 例えば、組み込み開発をメインにした学科の場合、1学期と2学期は組み込み開発におけるプログラム言語の教育などをメインに行い、3学期は実際の組み込み機器を使っての授業となる。実践用の教室には、アルパインなどの提携企業が提供している実際の機器が並べられており、学生は実機で実験などを行うことができる。

 このような授業は、カーオーディオやルータ、ファイアウォール、携帯電話など多岐にわたっており、それぞれ専門学科の学生がこれらを使った授業を受けることができる。例えば、デジタルアート科では、粘土での作品作りやMacintoshでの3DCG制作まで多岐にわたった学習が行われる。

東北大学東軟情報技術学院の広大な敷地。現在も増え続ける学生に対応するため、寮などを建設中だ
大学内にある食堂の風景。この食堂は、同じパーク内にあるアルパインやHPといった企業の社員も食べにくる

 また、語学教育も盛んだ。Neusoftが日本企業向けのオフショア開発をメインに行っていることもあり、語学教育では英語と並んで日本語も重視されている。教育方法は、取り立てて特殊な手法を取り入れているわけではないが、学生全員がノートPCを持っていることもあり、ノートPCを使ったeラーニングによる授業も行われているという。eラーニングは補習や予習にも使えるため、学生は学内に限らず、自宅などでも学習が可能だ。学内には無線LANも用意されているので、教室の外にノートPCを持ち出して実験などを行うこともあるという。

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