IT革命が叫ばれた数年前から、「ビジネスとITの両方が分かる人材」を求める声が絶えません。こうしたIT人材は常に不足しており、この状況が続いています。
一般の企業が自社のIT戦略を推し進めるための人材を調達する方法を考えると、大まかには3つのパターンがあります。1つ目は、SIerやコンサルタントなど外部リソースを利用する方法、2つ目はできる人材を中途採用する方法、そして3つ目が自社でIT人材を育てるやり方です。
これはすべてのIT人材を外部委託する、あるいは逆に採用するということを意味しません。どういう人材を内部に確保し、どういう人材を外部に頼るか??これを決めることがIT人材戦略です。
一般企業がIT人材戦略を考える際に参考になるのが、UISS(情報システムユーザースキル標準)です。これはITを業務に活用するに当たって、組織として必要なITシステムと、それを利用するのに必要な人材の対応関係をまとめたものです。「タスクフレームワーク」「機能・役割定義」「人材像とタスクの関連」など6項目で構成されています。
中でもタスクフレームワークは、その会社の事業活動における情報システムの位置付けを行っているもので、機能・役割定義はそれぞれの業務機能をブレークダウンし、必要なスキル・知識の洗い出しをしたものです。
これらを活用することで、企業の情報システムの位置付けを明確化して、それに必要な人材を洗い出し、調達することが企業にとって最も重要な人材戦略といえます。
UISSが定義する人材は、「プログラマ」「データベースエンジニア」「ネットワークエンジニア」というような人々ではありません。事業戦略や情報システム(IS)戦略を策定したり、プロジェクトマネジメントを実行したり、IS導入・評価・保守・運用を行ったりする人です(1人で、すべてを行うわけではありません)。
つまり、UISSはこうした人員を社内に置いた方がよいと提言しているわけです。しかし、冒頭に触れたように「ビジネスとITの両方が分かる人材」は引く手あまたで、中堅以下の企業の中には採用も困難というところがあるかもしれません。また、人件費を考えると専門のITポストを作ることができないという場合も多いでしょう。
こうした場合の方法としては、プロジェクトごとにITコンサルタントやITコーディネータを雇うやり方があるでしょう。一般にITコンサルタントはコスト高と考えられていますが、ITコンサルタントを入れることによってシステム構築の総費用が安くなる場合もあります。もう少し中長期にIT戦略を考えたいという場合は、ITコンサルタントを“雇われCIO”“雇われ情シス部長”として抱える方法が考えられます。フルタイムでない分、多少安上がりになることが期待できます。
しかし、これらの方法は自社にIT戦略・IT企画のノウハウやスキルがたまりにくいというデメリットがあります。また、ITコンサルタントなどの外部人材を活用する場合でも、その実力や向き不向きを見抜く目が自社にないと頼むに頼めません。
その意味では王道はやはり、IT人材を社内に確保することでしょう。特に戦略策定の能力は、自社で持つべきです。一般にIT戦略の策定・実行に責任を負う役員クラスの人材をCIOといいます。中小企業ではCEO(社長)が陣頭に立つべきだともいわれます。自分では「ITは分からん」と思っている社長さんは、日本の省庁のようにCIO補佐官を置くことを考えていいかもしれません(官庁のCIOは官房長などです)。
IT戦略の責任者以外の人材は、自社がどのような技術を導入し、どこまでを自社でやり、どこからを外部に委託するかによって変わってきます。もちろん、ベーシックなIT利用については全社員が一定のスキルを身に付けることが理想でしょう。
ITが「合理化・効率化のためのツールから、差別化・競争力強化のためのツールへと進化」した現在では、ITスキルは競争に打ち勝つための大きな武器です。そのうえ、IT人材不足が深刻化している現在においては、いち早く人材戦略を策定し、自社に最適な人材を確保することが、一般企業においても重要な企業戦略となりつつあるのです。
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