システム管理者の仕事と「構成管理」 ――構成管理と資産管理システム管理入門(1)(1/2 ページ)

企業の情報システムを支える“縁の下の力持ち”――システム管理者はどんなミッションを担い、どのような仕事を行っているのか? 基礎の基礎から解説します。

» 2010年02月10日 12時00分 公開

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 こんにちは。今回から皆さんに職種・職務としての「システム管理」についていろいろとご説明することになりました、谷と申します。以後、よろしくお願いいたします。

 この連載はおおむねシステム管理者としてこれから仕事をすることになる若手、初心者の人々を対象に、「システム管理という仕事は、具体的にどういうことをするのか?」ということについてご紹介していきます。

 原則として、最低限のIT知識は身に付けていることを前提にしますが、あくまでも初心者向けのお話が中心です。中級レベル以上の方にとっては、まどろっこしい内容もあるかと思いますがご了承ください。

システム管理者の仕事とは?

 さてさて――。早速ですが、システム管理者とはどんな仕事をしている人なんでしょうか?

 システムの保守をして、障害が発生したら対応して、それ以前には障害が起こってないかどうか監視して、システムの変更をユーザーに通知して、定期的なバックアップもやって……とまぁ、やるべきことを挙げ出したらキリがありません。

 どこかに、ちゃんとまとまっているものがないかと探してみたら、とりあえずありました。IPA(情報処理推進機構)が「ITサービスマネージャ試験(レベル4) シラバス」という資料を出しています。

【関連リンク】
ITサービスマネージャ試験(レベル4) シラバス[PDF](IPA ― 情報処理推進機構)

 これはもともと、情報処理技術者試験の試験範囲を説明したものです。情報処理技術者試験の制度は、昨年大きく変わりました。前回の大幅変更が平成13年でしたから、実に7年ぶりの大改革、ということになります。いままで「テクニカルエンジニア(システム管理)」という名前の試験がありましたが、これが「ITサービスマネージャ」という名前に変わりました。試験範囲も変更されており、この資料はその新しい試験範囲を説明したものです。しかし、ITサービスマネージャの仕事範囲を理解するものとしても有用です。

筆者注:ここでは「ITサービス」というものの説明はあえて省いて、システム管理と同じということにしておきます。ちょっと乱暴ですが。「ITサービス」という概念を知りたい方は下記の記事をご覧ください。

【参考記事】
初心者歓迎! ITIL連載講座:ITILの成り立ちと現状を知る(ITmediaエンタープライズ)
差のつくITIL V3理解:「IT」という名のモンスターを飼いならす魔法の書物?(ITmediaエンタープライズ)

 さて、システム管理者の仕事をトピックだけ挙げると、次のようになります。

1.サービスサポート及びサービスデリバリ
1.1 サービスデスク
1.2 インシデント管理
1.3 問題管理
1.4 構成管理
1.5 変更管理
1.6 リリース管理
1.7 サービスレベル管理
1.8 可用性管理
1.9 キャパシティ管理
1.10 ITサービス財務管理
1.11 ITサービス継続性管理
2.システムの運用管理
2.1 アプリケーションシステムの受け入れ
2.2 ライブラリ管理
2.3 運行管理
2.4 障害時運用方式
2.5 システムの監視
2.6 稼働状況管理
2.7 障害管理
2.8 システムのチューニングとパフォーマンス管理
2.9 バッチ処理スケジュールの管理と保守
2.10 バックアップとリストア
2.11 サービス障害又は災害時の代替処理・復旧
2.12 ストレージ管理
3.ITサービスの継続的改善
3.1 ITサービスマネジメント導入計画の立案
3.2 ITサービスマネジメントの実施
3.3 サービス継続計画の立案・実施
3.4 ITサービスに対するリスクの特定・管理
3.5 顧客の満足度・リソース稼働率などのITサービスマネジメントの計測と分析
3.6 改善計画の策定と管理
3.7 サービスレポート
4.情報セキュリティの運用・管理
4.1 情報セキュリティポリシ
4.2 リスク評価
4.3 アクセス管理
4.4 物理的セキュリティ
4.5 個人情報保護
4.6 ファイアウォール
4.7 ウイルス対策
4.8 データセキュリティ
4.9 高可用システム(の構築と運用)
4.10 情報資産管理
4.11 情報セキュリティに関する標準・法律(の理解と順守)
5.カスタマサービス
5.1 ハードウェアの基礎テクノロジ(の理解)
5.2 ソフトウェアの基礎テクノロジ(の理解)
5.3 システム保守管理
5.4 データセンタ施設のファシリティマネジメント
5.5 設備管理

 うーん。多過ぎて、ひと目では分かりませんね。細目を挙げていくと上の表のとおりですが、システム管理者の仕事を大ざっぱに理解するには、次の3つに分類するといいでしょう。

 1つ目は、情報システムの将来を見通す目を持つこと――すなわち、知識や技術の習得です。システム管理者たるもの、基礎的なことから枯れた技術、最新の技術まで、さまざまな知識を深く身に付けておく必要があります。そのためには市場動向をチェックしたり、新しい技術の発表に対してアンテナを張り巡らしたり、基礎知識のおさらいを欠かさず行ったりしていくというような、日々の努力が欠かせません。むろん、これはシステム管理者に限ったことではありませんが、普段われわれは目の前の仕事に追われ、その問題を片付けることに精いっぱいで、基礎知識を体系的に学習する機会には恵まれないのが現実です。だからこそ、普段から多方面に興味を持ち、情報を積極的に収集して、それを整理する習慣を身に付けておく必要があるといえるでしょう。

 2つ目は、情報システムの管理体系を計画・確立することです。そのためには、お手本となるシステム管理の手法や組織体系、手順などを学習し、自分の組織に合わせた形で取り入れていくことが求められます。「何を」「誰が」「どのように」「どんなツールを使って」「どの程度」管理するのか??について方法論を確立し、実際にそれをやってみて、うまくいったかどうかを測定し、改善すべきところは改善するという活動です。いわゆる、PDCA(Plan-Do-Check-Act)を回す、ということですね。

 3つ目は、日常の運用管理の実務です。新しいシステムを導入したり、その使い方をユーザーにトレーニングしたり、障害が起こっていないかどうか監視したり、障害が発生したら迅速に対応したり……そんな作業がシステム管理者の日常の業務です。とても地道な作業ですが、最も大事な業務といえるかもしれません。

 この3つ目の作業はとても大事であることは間違いありませんが、ある意味でとても理不尽な作業です。うまくいって当たり前、うまくいかなければユーザーから文句やクレームが飛んできます。まったく、胃が痛くなる話です。規模の大きな会社では管理対象となる機器が膨大にあるので、むしろ“うまくいかなくて当たり前”とも思えるのですが……。これらの作業は、事実上何らかの運用管理ツールなしには実施できませんが、一方でツールを導入しさえすれば万全か、というとそうでもありません。システム管理者としての経験やノウハウ、自社の都合に合わせた方法論がないと、せっかくのツールを生かすことができないのです。ツールとノウハウの融合こそがシステム管理者の腕の見せ所なのです。

 さてこの地道な「日常の運用管理」の部分を、前述の「システム管理者の仕事の一覧」から抜き出してみましょう。重複しそうなものはひとまとめにしてあります。

  1. 構成管理(資産管理)
  2. インシデント管理と問題管理
  3. 変更管理、リリース管理
  4. 障害の監視と管理(サーバ、プロセスの監視を含む)
  5. バッチ処理スケジュールの管理と保守
  6. ストレージ管理(バックアップとリストアを含む)
  7. アクセス管理(ユーザーに対するアクセス制限の管理を含む)
  8. 個人情報保護、データの保護、ウイルス対策、セキュリティ対策

 筆者は、システム管理者の日常的な仕事を大まかには8分野としました。ほかにも設備管理やユーザーのトレーニングといった任務があるのは間違いありませんが、ひとまずはこんなところではないでしょうか。

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