“クラウド”で変わる、これからの運用管理
2009/7/27
クラウドコンピューティングへの進化
企業のITの在り方として今日の「クラウドコンピューティング」が登場するまでに、「ユーティリティコンピューティング」や「グリッドコンピューティング」などが提案されてきた。これらは変化対応力やコストの最適化、投資効率の最大化などを課題として取り組まれてきたもので、今日のクラウドコンピューティングへの進化の過程であり、クラウドコンピューティングとも混同しやすい。
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| 図1 クラウドコンピューティングへの進化の過程(コア提供の図を基に編集部が作成) |
以下にそれぞれの定義を簡単にまとめてみる。
1. グリッドコンピューティング
スーパーコンピュータ、仮想コンピュータがネットワーク化され、疎結合されたコンピュータのクラスターを構成し、膨大なタスクに対して複数のコンピュータが協力して処理する分散処理コンピューティングの形態。
2. ユーティリティコンピューティング
電気のような公共ユーティリティサービスのように従量課金サービスとして演算処理やストレージなどのコンピュータリソースを提供するサービスをパッケージ化したもの。
3. クラウドコンピューティング
動的な拡張性があり、仮想化リソースがインターネット上で提供されている。クラウドを利用するユーザーは、クラウドをサポートするインフラ技術の制御、専門知識、いかなる知識も必要としない。
クラウドの概念は以下の組み合わせにより構成される。
- IaaS(Infrastrucrure as a Service)
- PaaS(Platform as a Service)
- SaaS(Software as a Service)
- XaaS(everything as a Service) そのほか、最新のインターネット上でユーザーのニーズに対応するテクノロジなど)
特にユーティリティコンピューティングは、クラウドコンピューティングのデリバリモデルとしての従量課金サービスという共通項があるので混同しやすいが、クラウドはユーティリティコンピューティングを現在のインターネット時代に合わせて具現化したものと考えた方がよいのかもしれない。
ユーティリティコンピューティングの登場
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コンピュータの演算処理やストレージのようなリソースを必要なときに、必要なだけ利用でき、使用量に応じてサービス料金を支払うという方法が可能になると、ユーザー企業はコンピュータ・システムの初期投資リスクから解放され、コスト最適化のやりくりが非常に楽になる。
「電気、ガス、水道、電話のような公共サービス(public utility)と同じようにコンピュータも公共インフラサービスのような利用形態を将来とることができる」――1961年、当時マサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭をとっていたジョン・マッカーシー(John McCarthy)は、MIT 100周年に際して初めてユーティリティコンピューティングに触れ、このように公言した。
以来、20年に渡ってIBMなど大型汎用機ベンダは、銀行や大手企業に対して世界規模のデータセンターでユーティリティコンピューティング・モデルを「タイムシェアリング」という技術を通じてサービス提供した。しかし、ミニコンやオープン系の進化・普及により、ほぼすべての企業がコンピュータを導入できるようになると、このユーティリティモデルのサービスは廃れていくことになる。
オープン系の進化により、分散処理型のクライアント/サーバ・システムによる業務ごとに必要なサーバを立てるという柔軟性の高いシステム構築の方法が紹介されると、必要に応じて次々とサーバが増設され、新たな業務への対応が行われた。
しかし、この方法は“サーバの非効率な利用”と“管理の限界”という問題に直面する。サーバを設置する際には将来の処理量増大や不測の事態に備えて、余裕をもったサイジングが行われるが、新しいアプリケーションを導入するときにサーバを追加すると、既存のサーバの稼働率はいつまでたっても30%ぐらいのまま、という状態になりかねない。しかも部門単位で業務アプリケーションとサーバが導入されると、全社的にはどんなアプリケーションがどこのサーバで動いているのかを管理することが困難になる。
この時期、コンピュータの余剰処理能力に着目して研究が進められた技術がグリッドコンピューティングだ。グリッドコンピューティングが実現され、70%もある余剰CPUリソースを集約して再利用できれば、ユーザーは効率的なコンピュータ利用が可能となる。ところが、残念なことに当時のグリッド技術では余剰CPUを適宜、動的に利用して新たな業務に割り当てるという目的を果たすことまでは実現されなかった。
クラウド理解の鍵:ユーティリティコンピューティング・モデル
1990年代後半から、大手ITベンダはユーティリティコンピューティング・モデルを再び、語るようになった。「オンデマンド」「アダプティブ」などのキーワードで提唱されたビジョンがそれだ。
ITベンダにとってユーティリティ・モデルは、ハードやソフトウェアを毎回販売して利益を得る「フロー型ビジネス」から、電気、ガス、水道、電話のように毎月ほぼ固定的に利用料を徴収できる「ストック型ビジネス」への転換――すなわち、より安定的な収益が期待できるビジネスモデルへの転換を意味する。いつ製品が売れ、あるいはプロジェクトが受託できるか分からない「フロー型ビジネス」に比べ、ストック型ビジネスは、投資は自らの計画で行い、収益は顧客企業の年間予算の形で見える化されるので、ビジネスは安定する。しかも、顧客を囲い込むことができるので、毎回激しい競合との価格競争により利益率が悪化する一方の、それまでのビジネス形態から脱却することができる。
ユーザーにとっても、日々業務に追われながら複雑に進化するIT技術を追い掛けながら、自ら初期投資のリスクを負ってシステム開発を行い、ITシステム資産を抱え込むより、従量課金制のサービスとして利用して月々のコストとして処理する方がはるかに楽になるはずだった。
しかし、ユーティリティモデル=外部委託モデルには、それらのメリットを上回る懸念があった。例えば、個人情報や機密情報を委託するに足る、信頼できる事業者がいるのか、ビジネス優位性を有するビジネスプロセスをドライブするシステムを外部に委託して、そのビジネスプロセスを維持・発展させる人材・ノウハウを社内に持ち続けられるのか、といったリスクだ。企業がこうしたリスクに懸念を抱く限り、ユーティリティモデルに移行することはない。
もちろん、技術あるいは法制度などがさらに進化し、機密性や安全性が高度に確保され、ユーティリティモデルによるコストメリットを享受できるのであれば、最終的には完全にユーティリティモデルへ移行することも考えられる。
この場合は、ユーティリティ・データセンターにはサービスを提供する先の複数の企業の変化に対応するための、非常に高い変化対応力が求められる。それだけではなく、提供するサービスのビジネスにおける重要性に応じてサービス料金もいくつかのレベルを持つ必要がある。可用性、堅牢性が高く求められるミッションクリティカルなサービスと、そうでないサービスの料金はユーザーからすれば当然同じ金額を払うことはできないからだ。
もちろん、ユーティリティモデルへの移行時期はさまざまだ。機密性の低い情報しか扱わないシステムであったり、ありふれたアプリケーションであれば自社保有にこだわる必要はないし、中小企業などで「サーバを自社購入して、運用管理はデータセンターにホスティングしている」という場合、サーバ・ハードウェアやソフトウェアの保有をやめて、パブリッククラウドへ移行し、すべてをコスト化してしまった方がよいケースもある。
中小企業にとってはパブリッククラウド環境が一日も早く安定的に提供され、これを最大限に活用することによる無駄なコストの削減と、IT運用の効率化が競争力の鍵となるだろう。
これらのユーティリティモデルへの動きはIT業界における、ITベンダの垂直統合やグローバル化の動きを見ても、最終形としてのユーティリティモデルによるサービス化をゴールとしていることが伺える。すでに飽和状態のIT市場においてフロー型ビジネスではこれ以上の成長は望めない、垂直統合を行い、ユーティリティデータセンターをグローバルに展開し、サービスとしてグローバル企業を取り込むことで30%しか手を出すことができなかったIT市場の100%を視野に入れて成長路線を歩むことができるからだ。
| Page1 クラウドコンピューティングへの進化 ユーティリティコンピューティングの登場 クラウド理解の鍵:ユーティリティコンピューティング・モデル |
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| Page2 クラウドコンピューティングの登場 運用管理が戦略的な役割を担う |
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