事業継続に真剣に取り組む インデックスページ

連載
事業継続に真剣に取り組む(4)


事業継続管理のための組織づくりと導入作業

喜入 博
KPMGビジネスアシュアランス株式会社
常勤顧問

2006/12/28

前のページ1 2第5回

BCPの導入作業

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 計画書に基づいて事業影響度分析を行い、企業にとって重要な事業などに関する具体的な計画をBCPとして策定し文書化(BCMの文書体系とその内容を決定し、業務継続の具体的な対応手順を定めて、ドキュメンテーションを行うこと)した後は、実際に策定したBCPを現場などに導入します。

 策定されたBCMは、不測の事態発生時に備える現業部門などに対する準備と、BCMとして発動させた場合の結果の確認が必要です。策定されたBCMを不測の事態発生時に有効にするために関係部署へ展開することを「BCMの導入」といい、これは次の4つの活動から成ります。

  1. BCMに基づく事業継続で必要とする物品などの調達
  2. 受け入れテストの実施
  3. 教育・訓練の実施
  4. BCMの公表と配付

 この活動が完了してはじめて、当該のリスクシナリオに対するBCM発動が可能となり、BCMが発効したことになります。

1. BCMに基づく事業継続で必要とする物品などの調達

 BCMに基づく調達とは、それぞれのリスクシナリオに対して策定したBCMを導入する際に必要な内部・外部資源を調達し、現業部門に設置、配付、確保などを実施することです。また、調達は、BCMで規定されたすべての資源を、不測の事態発生時のBCMの発動に備えて、使用できる状態にすることを意味します。この調達は必ずしも「物」のみが対象ではなく、事態発生時の外部からの支援の約束の取り付け(あるいは契約)なども含まれています。具体的には、外部から原材料や部品の調達が何らかの原因で停止した場合に、自社のBCMの発動時の通常時とは異なる調達先からの調達について関係先と契約しておくことなどです。

 従って、調達の対象は幅広く、次の項目が挙げられます。

  1. 災害対策用資材 火災、水害、地震、雷などの自然災害に被災した場合の防災用物品および食糧、水などの備蓄物品。緊急時の連絡網インフラも含む
  2. 製造インフラの予備用物品 生産設備、エネルギー設備など製造工程関連するインフラのバックアップとして保存しておく物品
  3. 備蓄用原材料 原材料、部品、エネルギーなど製造時に必要な素材
  4. 要員 BCM発動時の対応要員の確保。不測の事態の発生時の時間帯を考慮し、かつ事態の内容に応じたスキルを持つ要員(数)の手配
  5. バックアップ施設 予備用の施設や情報システムの稼働設備の手配。物の手配ではなく、災害などの事態発生時の施設、設備の利用の契約となる
  6. 保管用設備 災害等の事態発生時に備えた重要文書あるいはその複製物の保管場所の確保

2. 受け入れテストの実施

 新しいBCMが策定されたら、最初に受け入れテストを実施しなければなりません。受け入れテストを実施し、問題点が解消してはじめてBCMの実効性が確認されたことになります。

 BCMの実効性を確認するための受け入れテストにおいては、次の確認をします。

  1. 想定した手順どおりの結果が得られたか
  2. 初期対応、暫定対応、本格復旧対応の段階分けは、BCMに基づく実作業において、適切な区分けであったか
  3. それぞれの段階の組織、要員の関係、連携は問題なかったか
  4. 想定した時間内でどれだけ作業ができたか
  5. 暫定作業の環境下でどの程度ミスなく事務処理をこなせたか
  6. 暫定作業から本格復旧への移行作業に漏れがなかったか
  7. 手順書、資料などは正確であり、理解しやすかったか

3. 教育・訓練の実施

 BCMを発動しなければならないような不測の事態は、日常の業務活動と比較すると「異常な事態」です。不測の事態の対応を想定してBCMが策定されていますが、BCMにおけるそれぞれの作業項目も、日常業務における作業項目とは異なり、平常時には実施したことがない特別な作業項目です。そのため、関係者が戸惑わないよう、BCMの一環として作業手順、方法などに関するマニュアルを整備し、このマニュアルに従って作業を実施していきます。しかし、事態が逼迫(ひっぱく)している場合には、BCM発動時の対応作業が順調に実施できるとは限りません。従って、策定したBCMの関係者に対する教育と、それに基づく訓練の実施が日常的に必要となります。

4. BCMの公表と配付

 策定したBCMは、差し支えのない範囲で社内外の関係者に公表します。また、BCM発動時の関係者に対しては、それぞれのリスクシナリオを配付すると同時にその内容を周知することも必要です。

筆者プロフィール
喜入 博(きいれ ひろし)
1969年日本ユニバック(現日本ユニシス)入社。都銀第1次オンラインシステムの開発、金融機関の情報システムの開発などに従事。2002年KPMGビジネスアシュアランス入社。2003年より金融庁CIO補佐官を兼務。2005年まで、内閣官房「情報セキュリティ基本問題研究会第二分科会」委員、および経産省「企業における情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会」委員。
■要約■
BCP/BCMの組織づくりでは、プロジェクトチームの責任者とリーダーを決め、プロジェクトメンバーを選び、プロジェクト計画書を作成するという3つの作業を行う。リーダーは、社内の業務体系の全般の知識とともに、マネジメント力、BCMに関する知識がある専任者が望ましい。通常はBCMを主管する部門から選出する。プロジェクトメンバーは、事業影響度分析とBCPの策定や推進を担当する。BCM構築の対象となる部門から選出する。BCMの構築には1年程度をかける例が多い。

BCPを文書化したら、導入の作業に移る。導入作業は、事業継続で必要とする物品などの調達、受け入れテストの実施、教育・訓練の実施、BCMの公表と配付で構成される。

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事業継続管理のための組織づくりと導入作業
  Page 1
組織体制の確立
  プロジェクトチームの責任者とリーダーの決定
  プロジェクトメンバーの選出
  プロジェクト計画書の作成
→ Page 2
BCMの導入
  BCMに基づく事業継続で必要とする物品などの調達
  受け入れテストの実施
  教育・訓練の実施
  BCMの公表と配付

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