データセンターの利用をいつ、どう判断するか間違いだらけのデータセンター選択(1)(1/2 ページ)

企業が最適なITインフラを構築するために、データセンターをどう活用できるかを考える新連載の第1回目は、サーバを自社ではなくデータセンターで運用する判断に至るポイントについて説明する。

» 2006年08月18日 12時00分 公開
[近藤 邦昭,まほろば工房]

 ITは社会のあらゆるところまで浸透し、企業活動にも欠かすことのできない存在となりました。しかし、ITインフラを安定的に運用することは困難を極めます。特に、自社でサーバやネットワークの管理をすべて実施することは、ネットワーク技術者の養成やネットワーク管理運用のためのコストなどを考えると相当な負担となり、セキュリティの面でも大きなリスクを負うことになります。

 現在ではこうしたニーズを受けて、多くのデータセンターサービスが提供されており、これらをうまく組み合わせて使うことで、自社運用に比較して運用負荷やコストをかなり低減できるようになってきました。

 そこで、今回の連載では、データセンターを利用したITインフラ作りという観点で、データセンターをうまく使うにはどのようにすれば良いか、また、データセンターを選ぶうえでどのようなことを考えれば良いかなどに触れていきたいと思います。

 自己紹介が遅れました。私は近藤と申します。私は、いくつかのISPで運用関連部署に勤務した経験を持つほか、JANOGという日本のネットワーク運用者コミュニティの運営委員などをしている者です。現在では、会社を離れて独自に活動をしていますが、今までの経験を生かして、皆さんにご参考になるお話ができればと思っています。

 今回は第1回目ということで、データセンターを利用したITインフラを構築するうえでキーワードとなる点について触れていきたいと思います。

本連載における議論の前提

 もちろん、データセンターを利用すればすべてが解決するわけではありません。最近では光回線がオフィスや自宅まで届き、100Mbpsなどといった非常に広帯域な回線を安価に手に入れることができますから、インターネットを受身的に利用しているだけであれば、データセンターを利用することはかえって無駄になってしまうかもしれません。また、利用しているアプリケーションについても十分な考察が必要です。特に、勘定系のアプリケーションや社内でのファイル共有などがトラフィックのほとんどを占めるようなケースでは、レスポンスの低下などを起こしてしまい、かえって「改悪」となってしまう場合も考えられます。

 そこでまず、話をスムーズに進めるために、今回の連載のフォーカスをまとめておきたいと思います。

 「データセンター」といっても、外部のデータセンターを指す場合と、自社で構築したデータセンターを指す場合があります。自社でデータセンターを構築する場合は、データセンターそのものの冷風の流れの設計、空調の排水の問題、データセンターへの給電とバックアップ電源の構築、さらには入館管理の問題など、多くの問題を自ら解決しなくてはなりません。

 今回の連載で「データセンター」という場合には、外部のデータセンターサービスを利用することを前提として話を進め、自社で構築したデータセンターを考慮する場合には、「自社データセンター」と記述します。

 どのようなITインフラの規模や形態を想定するかによってお話の内容は大きく変わってきます。ネットワークのトラフィックは、利用するアプリケーションに強く依存しており、それによってネットワークの発展形態は大きく異なるからです。たとえば、先ほどもお話しした勘定系や自社内のファイル共有アプリケーションなどの場合は、そのトラフィックのほとんどが社内で完結しますが、これをデータセンターに移動するとデータセンターと自社の回線が溢れてしまうことが考えられるほか、回線が溢れないまでも、アプリケーションのレスポンスが低下する可能性もあります。

 そこで、今回の連載では、現在自社内において1ラック程度、つまり十数台程度のサーバを運用しており、セキュリティやスペースなどのいくつかの問題を抱えている場合を想定し、このような状態でデータセンターをいかにうまく使うことができるかについて考察していきたいと思います。

データセンター利用への分岐点

 では、データセンターを利用するかどうかは、どのような観点から考えれば良いのでしょうか。ポイントを以下に挙げます。

  • 設置する機材が多い
  • インターネットに対するトラフィックが多い
  • インターネットを利用してサービスをしている
  • 非常に安定した運用が求められる
  • 非常に重要なデータをサーバに保管している
  • 事業所が多拠点に点在している

 上記のうち当てはまるポイントが多ければ多いほど、データセンターを利用する価値があると思っていただければよいかと思います。

 ちなみに、このなかには「運用人員を削減したい」という項目がありません。ITインフラ運用の効率化では、人員削減というキーワードは欠かせませんが、データセンターのようなところにサーバ類を移して自社から機材をなくしても、運用が楽になるわけではありません。むしろ、データセンターに行く交通費などを考えればコストは増加します。運用人員のコストや技術面で問題がある場合の最良の方法は、運用委託サービスなどを利用することです。

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