地理的条件からのデータセンター選び間違いだらけのデータセンター選択(4)(1/2 ページ)

データセンター選びでは、その地理的位置やネットワーク接続環境が重要なファクターとなる。今回は、データセンター利用を検討する際に考慮すべき地理的条件について解説する。

» 2006年10月26日 12時00分 公開
[近藤 邦昭,まほろば工房]

 前回は、データセンターが提供しているサービスについて整理し、選択の際の注意点について解説しました。

 しかし、データセンターを利用するに当たっては、サービスだけでなく、データセンターの地理的な条件や、データセンターが保有する電源設備などの付帯設備、データセンターを利用するに当たっての補助的なサービス、機器を冷却する空調設備、さらにはネットワークの対外接続がどうなっているかなどさまざまな点を考慮する必要があります。

 これらの中から今回は、データセンターの地理的条件について解説したいと思います。

データセンターの地理的条件とは

 データセンターのサービスを購入する場合、前回説明したようにデータセンターが保有するサーバ設備などを購入するような場合(サーバレンタルなど)と、ラックのような機器を設置する設備を購入する場合の2つに大きく分かれます。

 サーバレンタルのようなサービスを購入する場合は、購入者はデータセンターが用意する機器をそのまま利用するので、基本的にデータセンターを訪れたり、サーバの設置環境やネットワーク環境を考慮する必要はほとんどありません。強いていえば、接続されている機器のネットワーク的な条件、つまり、データセンターとしてどのようなアップストリーム(上流接続)を利用しているとか、サーバ自身がどの程度のトラフィックを送受可能なのかという条件を考慮する程度です。

 一方、ラックをレンタルし、そこにサーバ等のネットワーク機器を設置し、自らネットワークを構築する場合には、以下に示すような地理的な条件を検討しておく必要があります。

  • データセンターの所在地
  • 接続可能なネットワークの条件

 以下にこれらの条件について解説していきたいと思います。

データセンターの所在地

 多くの読者は、なぜデータセンターの所在地が重要なのか容易に想像できると思います。

 ラックをレンタルし、そこに自らが用意するサーバやネットワーク機器を設置するということは、それらの機器にトラブルが発生した場合には、それらの機器のメンテナンスを行うために作業者が駆けつけなくてはならないということを意味します。

 ご想像のとおり、データセンターに設置しているサーバによるサービスが停止した場合には、データセンターまで駆けつける時間がサービス停止時間に直接影響します。ネットワークサービスのサービス品質を検討する場合には、ネットワークの最大停止可能時間を決めておき、この規定時間で十分に保守しサービスが再開できるような体制を組めるように、選択するデータセンターの所在地も検討する必要があります。無論、ネットワークの最大停止可能時間はゼロが望ましく、基本的にはゼロに近づくようにネットワーク構成を含めて全体を設計しますが、トラブルをゼロにすることは不可能であって、「最悪」の場合を想定して「駆けつけ時間」を考慮しておかなくてはなりません。

 「駆けつけ時間」を考慮する際、以下のような点に注意します。

運用センターからの駆けつけ時間

 設置してある機器のメンテナンスの多くは、本社の情報システム部門オフィスなど、運用センターに勤務する社員によって行われます。トラブル発生時には、この運用センターから機器を設置してあるデータセンターまでの移動時間を、駆けつけ時間として考慮しておく必要があります。

担当者の駆けつけ時間

 私の経験上、どういうわけか多くのトラブルは深夜に発生します。宿直勤務などの勤務体制が取られていないなら、自宅などでの待機担当者などを決めておき、トラブルが深夜に発生してメンテナンスが必要になった場合に備えます。このような場合、待機担当者は自宅などからデータセンターに移動する必要がありますので、この移動時間を駆けつけ時間として考慮しておく必要があります。

ベンダ駆けつけ時間

 トラブルが発生してから一定時間内にデータセンターに駆けつけることができ、その場でトラブルを回避できればそれに越したことはありません。しかし、場合によっては機器が故障してしまうとどうにもならないことがあり、そのような場合には機器ベンダから保守部品を届けてもらう必要があります。

 機器ベンダの側も、機器を保管している倉庫などから機器を持ってくる時間を含めた駆けつけ時間がどうしても必要になります。ベンダが提供する保守サービスには、駆けつけ時間の規定が必ずありますので、保守サービス契約時には、データセンターまでの駆けつけ時間を含め、望む時間で到達できるのかを検討しておく必要があります。

 これらの駆けつけ時間が先に示した「最大停止時間」の規定内に収まるように設計することが最低の条件になりますが、運用の実態に合わせてもう少し詳しく規定する必要があります。

 トラブルが発生し、そのトラブルに対処する実際の流れを考慮すると、最悪の場合以下のような流れになります。

1. トラブル検知

     ↓

2. トラブル解析(1次対応)

     ↓

3. トラブル対応(2次対応

     ↓

4. 現地駆けつけ

     ↓

5. 現地でのトラブル対応

     ↓

6. ベンダ呼び出し

     ↓

7. ベンダ駆けつけ

     ↓

8. ベンダ対応

     ↓

9. 回復確認(ベンダによる機器交換で復旧したとする)

     ↓

10. 対応終了

 さて、この流れの中に上記で挙げた駆けつけ時間を当てはめると、「運用センターからの駆けつけ時間」または「担当者駆けつけ時間」は、3と4に当たります。そして、「ベンダ駆けつけ時間」は6と7に当たります。

 つまり、最初の検知から担当者への引き継ぎ時間や現地対応時間などは、移動時間に含まれませんから、駆けつけ時間だけでなく、トラブル対応時間も考慮して「最大停止時間」を規定する必要があるわけです。

 トラブル対応時間を十分取るためには、移動時間である駆けつけ時間を最小限にする必要があり、データセンターの所在地は、駆けつけ元から許容範囲内になければなりません。

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