仮想化技術を導入する企業が増えているようだ。では、仮想化の運用管理は従来のそれと比べて楽になるのか。その点を解説する。
これだけ話題になっている仮想化ですから、何らかの仮想化製品の導入を検討されている企業、すでに採用されている企業、いつ検討フェイズに入ろうかと悩んでいる企業、さまざまかと思います。
ところで、あくまで私の経験や直接聞いた限りの話ですが、本記事執筆時点(2008年10月段階)では、そうそう管理者が幸せになるような仮想化の運用管理のメソドロジはそうそうなさそうです。キャッチーなキーワードは、話題先行型になりがちです。
この仮想化ブームも、最近は少し落ち着き始めたのではないでしょうか。そこでいまこそ、落ち着いて状況を把握してみるのはいかがでしょうか。ベンダ主導の勢いあるトークとは一変、少し気が重くなるような話をしたいと思います。
「コスト削減! グリーン! 早い! うまくて安い!」といった文句が飛び交う中では、仮想化を導入して何かが悪くなるなんて発想はなかなか出ないものです。しかし導入して実際に運用管理フェイズに入ると、悪いこととの格闘が待っていることが多いのです。
そもそも仮想化は、何も新しい言葉ではありません。ここで簡単に分類してみましょう。
仮想化の種類 | 実現手段や製品 | |
---|---|---|
仮想専用線 | MPLS | |
論理ネットワーク仮想化 | VLAN、Logical router、VRRP | |
I/O仮想化 | シーゴシステムズなど | |
サーバ仮想化 | Xen、VMwareなど | |
セキュリティ仮想化 | 大型UTM装置、VPN装置など | |
データセンター | 広域ロードバランス | |
このように、さまざまな分類がありますが、最近よく耳にするのが、I/O仮想化やサーバ仮想化を活用する、といった話です。
仮想化は物理的な制約がないため、立ち上げ、廃止、移設が即座に可能ということを意味します。
仮想化を導入された方に質問です。仮想化導入前は、どのようにリソース管理をしていたでしょうか。「Microsoft Excel」などの表計算ソフトぐらいで何とかなるだろうと思って管理していませんでしたか。
物理サーバ1台の負荷ぐらいであれば、「vmstat」や「top」コマンドあたりで大体の監視状況が把握でき、そのほかSNMPのツールなどで監視すればよかったでしょう。しかしそこに、自由に出入りができる仮想化サーバが加わると、管理も監視もが格段に大変です。
ただし、VLANなどのネットワークの仮想化のリソース管理は比較的容易です。ASIC化によるハードウェア処理、標準化という仕様で区切られたリソース限界値、さらにはネットワークはサーバほど大きな変更が必要ありません。これらにより、比較的リソースを管理しやすくしているのです。
また、比較的低いレイヤの技術であるため、周囲から受ける影響などもあまりなく、巨大な国際ネットワークにならない限り、それこそ管理は「Microsoft Excel」でも頑張れる世界かもしれません。
サービスの運用管理、監視という視点で仮想化を考えた場合はどうでしょうか。インストールするアプリケーションやメモリの管理、CPUの管理、レスポンス監視などモニタリングしなければならないものの多くが多重化されてきます。現時点で、これをうまく処理できる「安価な」ソリューションはまだ登場していないようです。各仮想サーバをしっかりと管理、制御できるようになる日は、いつになるのでしょうか。
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