少々前置きが長くなったが、第1回の内容に入ろう。
第1回では、ITサービスマネジメントに取り組むための動機付け・意識付けを行うための手段として、SWOT分析を取り上げる。一般的にSWOT分析は、企業が経営戦略を立案する際に、経営環境を分析するための手法として紹介される。簡単に説明すると次のようになる。
図1に、SWOT分析の進め方の例と、今回説明する範囲を示す。SWOT分析について説明するのが今回の趣旨ではないので、これ自体の説明は割愛する。
今回、SWOT分析を取り上げた大きな理由はブレーンストーミングにある。参加者が一堂に会して、自由に意見を出し合い、全員が共有できる思いのベースを作り上げる。このブレーンストーミングを行って、ITサービスマネジメントに取り組むための意識付け・動機付けを成功させようというのが狙いである。
では、順を追って説明していこう。参加者は、ITサービスを提供する(ITサービスマネジメントの実践を必要とする)メンバーとする。規模が大きな組織では、マネージャクラス全員、小規模な組織では、現業を担当するメンバーを含め全員で議論することを勧める。
1. ブレーンストーミング
ブレーンストーミングでは、あるテーマをめぐって自由に意見やアイデアを出し合うが、いくつかの原則がある。
ここでは、自らの組織が提供する「ITサービス」をテーマとして次に進めよう。
2. 個人別SWOTカード作成
まず、自らの組織が提供する「ITサービス」の「強み(S)」、「弱み(W)」、「機会(O)」、「脅威(T)」について、参加者各個人の意見をカードに記入する。発言形式では、必ずしも全員に発言する機会が得られないかもしれないので、カードを用いて全員の意見を引き出す。
「強み」と「弱み」
自社の強みと弱みを人、物、金、技術、情報などの視点から分析してみる。例えば、顧客はなぜ自分たちのITサービスを利用してくれるのか?他社が提供する同様のITサービスに比べて、明らかな弱みになっている点があるか? などについて考えてみる。
「機会」と「脅威」
自分たちのITサービスにとってチャンスになり得る環境変化は何か? 自社の強みが押さえ込まれてしまう危険性のある環境変化は何か? などについて考えてみる。例えば、経済環境の変化、ITの急速な発展、顧客との関係の急激な変化、最近では金融商品取引法の成立に伴うIT統制整備の要求などが挙げられる。
いかに鮮度の高い情報をブレーンストーミングのためにインプットできるかが、多くの意見を引き出す成功要因である。
カード作成の要領
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