IT管理のあるべき姿とISO 20000体験的ITIL攻略法(2)(1/3 ページ)

ITILを活用してITサービスマネジメントを改善できることは理解できても、問題意識が低く、自組織のあるべき姿がイメージできないケースは多い。ITILから生まれた規格であるISO 20000を参考にして、あるべき姿を描き出す方法を説明する。

» 2007年07月18日 12時00分 公開
[鈴木 広司,エクセディア・コンサルティング株式会社]

 前回は、ITサービスマネジメントに取り組むための動機付け・意識付けの手法として、SWOT分析の利用を提唱した。第2回では、SWOT分析を行った結果、効果的・効率的なITサービスマネジメントを実現するための成功要因として、ベストプラクティスであるITILの活用が導出されたことを前提として話を進める。

 ITILの活用を検討するに当たり、「あるべき姿」をどのようにイメージしたら良いか、というのが今回のテーマである。あなたが所属するIT組織が、幸いなことに問題意識が高く、自らが向かうべき方向が明確に定義・共有されているのであれば、今回は読み流していただければ良い。だが、「ITILは読めば何となく理解できるが、ITILを活用するってどういうこと? いまのやり方でいいじゃない」という読者は意外と多いのではないだろうか? ITILはベストプラクティス、いわば「最も優れた事例を集めたもの」である。利用しない手はないだろう。そこで、ITILを活用して自組織が実現できること、すなわち「あるべき姿」をイメージするために、ISO 20000を参考にしたIT組織を例として説明していくこととする。

ISO 20000はどのように生まれてきたか

 まず、ISO 20000の概要と、ITILとの関係から説明していこう。読者はすでにご存じのことと思うが、ITILは1980年代に、英国政府がITサービスの効果的な運用に関する成功事例を取りまとめたものであり、ITサービスの運用に関するチェックリストや、ITサービスを提供する組織が取り組むべきタスクや、役割と責任などが記述されている。ITILが普及するにつれて、以下のような点が指摘されてきた。

  • ITILそのものは一種のガイドラインであり、導入範囲、内容、導入レベルなどは企業自身の判断に委ねられている。そのため、どこまでやれば良いのかが分からない
  • せっかくITILを活用して、ITサービスマネジメントの仕組みを構築しても、それを対外的にアピールする手段がない

 そこで、英国規格協会がITILの上位に位置付けられるITサービスマネジメントの規格としてBS 15000を発行し、それが2005年11月にISO化され、発行されたものがISO 20000である。ISO 20000は、ITサービスマネジメントシステム(ITSMS)の唯一の第三者認証規格として制定され、ITサービスを提供するすべての組織に適用可能な、標準的なマネジメントプロセスが記述されている。第三者認証規格ということは、構築したITサービスマネジメントの仕組みが適切であることを、第三者機関が審査し証明することで、ITサービスの品質や信頼性をアピールすることができるため、特に顧客に対してITサービスを提供しているデータセンター、コールセンター、ヘルプデスクなどの事業者にISO 20000取得の動きが目立ってきている。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ