[ONStor] NASゲートウェイの存在価値とはレージ関連ベンダ それぞれの戦略(2)(1/2 ページ)

2006年5月に国内市場での本格展開を開始したONStorはNASゲートウェイの専業ベンダ。既存のストレージソリューションとは異なる価値として、何を提供してくれるのだろうか。同社の戦略を聞いた

» 2006年06月29日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 米ONStorはNASゲートウェイと呼ばれる製品を開発・販売している。NASゲートウェイとは、一般的にNASと呼ばれている製品からストレージを取り払ったもの。つまりNASの頭脳部分である。ストレージ・ベンダが提供するストレージ機器と組み合わせることによって、NASとしての機能を提供する。2000年に設立されたONStorは、ミッドレンジ市場をカバーするNASゲートウェイ「Bobcat NAS Gateway」シリーズを開発・販売し、NASゲートウェイ専業としては最大のベンダとなっている。

 2006年5月24日には日本法人ONStorジャパンを設立し、国内市場におけるビジネスの本格展開を開始した。

 Bobcatで最も重要なセールスポイントは、多数のストレージベンダの製品を接続できることや、同社の機器をクラスタ構成することによって高いパフォーマンスを発揮できることなどにある。CEOのボブ・ミラー(Bob Miller)氏に同社の戦略を聞いた。

──設立時のONStorの目的は何だったのですか。

ALT 米ONStor CEO ボブ・ミラー氏

 私は3年前、投資家からこの会社を調べてくれといわれ、その後経営してみないかといわれてCEOになりました。その時点ですでに設立後3年経過していました。当初は、非常に高価でハイパフォーマンスなNFSサーバをつくることが目的となっていました。

──それでは、ファイル共有プロトコルをマルチプロトコル対応にしたのはミラーさんの判断だったのですか。

 はい。私が調べたところでは、ハイ・パフォーマンスなNFSファイルサーバには非常に小さな市場しか期待できませんでした。より大きな市場を相手にするには、マルチプロトコル対応が必須でした。

 私がこの会社に加わった時点で、2003年1月に最初の製品を出す予定が立っていました。しかし私は取締役会に対し、NFSだけの製品を出しても意味がない、発売を1年遅らせてでもマルチプロトコルの製品を出すべきだといったのです。結果的に当社は、2005年には460万ドル、2006年には1500万ドル売り上げる企業になりました。四半期当たり100台以上を販売するまでになっています。

──ONStor製品の最大の価値は何ですか。

 例えば日立データシステムズのストレージを持っていて、マルチプロトコルの高性能なNASソリューションを必要としているのなら、当社の製品は唯一の選択肢です。多くの顧客は複数のベンダのストレージを購入している企業や、ほかの企業を買収した企業です。

 当社の大規模顧客の1つにYahoo! Broadcastがあります。当初はBroadcast.comだった企業ですが、Yahoo!に買収されました。Yahoo!は多数のネットワーク・アプライアンス(NetApp)製品を使ってきました。しかしYahoo! Broadcastはヒューレット・パッカード(HP)のストレージを使っていました。このため双方のストレージにアクセスできるソリューションが必要になりました。そこで彼らは8CPU構成のHPサーバを利用しましたが、20Mバイト/秒しか出すことができませんでした。その後Yahoo! Broadcastでは当社のBobcatを2台購入して動かしたところ、600Mバイト/秒を出すことができました。これは本当の数字です。TCOはおそらく3分の1程度に下がったでしょう。

 このように、すでに購入したストレージに対して、良いNASゲートウェイのソリューションがない企業が、当社の製品を採用してくれています。

 SANを導入した企業にとって、NetAppは良いソリューションとはいえません。まだ名前はいえませんが、ある非常に大規模な顧客を最近獲得しました。この企業はEMCのストレージを大量に導入していたのですが、NetAppはEMCとの接続を拒否したのです。他社のストレージアレイに接続し、信頼性を確保するのは容易ではありませんが、当社ではこれを達成しています。当社の製品では、例えばIBMと日立のストレージにまたがるボリュームを作成することができ、それぞれに対してLUN(論理ユニット)を設定することが可能です。

ミッドレンジ市場に集中して柔軟なストレージ環境を提供

──現在Bobcatはファイバチャネルのみに対応していますが、市場を広げるという点から、例えばiSCSIに対応することに興味はありますか。

 当社の顧客にとって意味を持つかぎり、さまざまな標準に対応していきます。iSCSIにも、SASにもいずれは対応するでしょう。基本的に、プロトコル対応に関しては、市場からの要求を待って行うことにしています。現在のところ、ミッドレンジ市場を対象としている当社にとって圧倒的多数のビジネス機会はファイバチャネルにあります。ファイバチャネルも非常に安価になってきていますし。

 投資対効果という点で付け加えるならば、ストレージに多数の汎用サーバを接続し、ファイル共有を行わせるとすると、多数のサーバを必要としますし、それぞれに(高価な)ファイバチャネル・アダプタを購入しなければなりません。しかし、これを当社の製品1台でまかなってしまえば、この多数のアダプタは不要になります。ここにもコストメリットがあります。

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