ネットワーク・アプライアンスは2006年5月、ファイバチャネル・ストレージの最上位機種を発表、基幹業務もカバーする包括的なラインアップを実現した。ハイエンド市場に切り込む同社の戦略を聞いた
NAS(Network Attached Storage)の最有力ベンダとして急速に伸びてきたネットワーク・アプライアンス(NetApp)の歴史は、大容量化への対応と、よりミッションクリティカルな分野への進攻の歴史でもある。2006年5月25日にはファイバチャネル接続ストレージの最上位機種「FAS6000」を発表、基幹業務用の従来型ストレージにも対抗していくことを明らかにした。
米NetAppの副社長兼エンタープライズ・データセンター&アプリケーションビジネス部門ジェネラルマネージャー、リチャード・クリフトン氏に、このハイエンドストレージを中心とした同社の戦略について聞いた。
──新ハイエンドストレージの記者発表では、「これでメインストリームのストレージ市場に切り込む」という発言がありました。
当社は既に、データセンターや大規模コンピューティング環境にかなり力強く食い込んでいます。今回発表したのは新たなハイエンドのプラットフォームと新機能群で、当社はこれにより大規模データセンターにさらに深く切り込むことができると考えています。大規模データセンターの攻略を今から始めるということではなく、攻略を加速化するということです。
──では、その加速化の一番の鍵となるのはハードウェアですか、管理機能ですか、それとも市場におけるなんらかの変化ですか?
今回の発表には、新たなモジュラーなストレージに基づいて構築された新たなハードウェアプラットフォームが含まれています。モジュラーなストレージといえばミッドレンジのプラットフォームと思われてきました。今回発表した新たなハイエンド製品は、スケールという観点からいえば、競合他社の非常にハイエンドな製品に相当します。従って、当社はこのハイエンドな環境に、アップグレードのしやすさという点でモジュラーストレージの価値を持ち込んだということです。
また、これまで非常に卓越したソフトウェア機能と管理機能を、製品に不可欠の要素として組み込んできましたが、新たなハイエンド製品にもこれは備わっています。今回の新たなハイエンド製品の最大の価値とは、大規模ストレージだけでなく、リモートオフィスから2次ストレージまで、すべてにわたって互換性があるということです。さまざまな導入形態を通じて単一のアーキテクチャであるため、ミラーリング構成や、遠隔拠点とデータセンターの統合を、非常に迅速かつ確実に行うことができるのです。
──競合他社より柔軟でダイナミックな環境が構築できるということですか?
その通りです。競合他社は問題のさまざまな部分を解決するため、相互に互換性のない複数のアーキテクチャを持ち込んでいます。しかし、当社はすべての部分を互換性のあるやりかたで解決できる柔軟なアーキテクチャを持っています。
そのもう1つの意味は、統合という文脈のなかでストレージのポリシーに基づく管理ができるようになるということです。複数の部門がストレージ・インフラを共有し、結果のサービスレベルを管理することができます。これら部門のあらゆる負荷について優先度をつけることができます。ストレージのプロビジョニングについても柔軟なポリシーを設定することができるのです。
──日本では、いわゆるハイエンドの市場は縮小傾向にありますし、これはシステムベンダと密接な関係のある市場です。こうしたなかで、どのようにビジネスを伸ばしていくつもりですか?
縮小傾向ということに関しては、ハイエンド市場が縮小しているのは、モジュラーなストレージへの移行が進んでいるからです。当社ではこの動きを促進し、ハイエンドストレージをモジュラーストレージに移行させようとしています。つまり、ハイエンドに参入しながらこの市場の縮小に寄与しています。
顧客はミッドレンジとハイエンドをカバーするアーキテクチャを求めています。ハイエンドに積極的に参入することで、ミッドレンジでもさらに力を増すことができます。顧客は1ベンダに幅広い製品ラインを求めており、製品の幅を広げることが市場における力を強めることにもなります
当社では統合という観点から顧客にリーチできる非常に強力なチャンネルパートナーを持っており、この角度から攻めていくことができると思います。
──新製品は、日本市場でどういうメリットをもたらすと思いますか?
日本市場では、事業部門がビジネス目標について強力なオーナーシップ(責任感覚)を持っていることも理解しています。こうした人たちは、統合からくるコスト削減のために、自分たちのビジネス目標の達成でリスクが高まることをよしとしません。たしかにこの2つの間にはトレードオフの関係があります。
新製品では、業務部門が統合からくるコスト削減効果を享受しながらも、各自がサービスレベルに関する結果を制御し続けることができる機能を持っています。垂直的な製品構成を語るベンダもいますが、結局のところ結果をコントロールできること、つまり各業務部門が企業全体に対して各自の責任を果たせることが重要です。
新たなソフトウェア機能のFlexShareでは、さまざまな部門が各自のためにパフォーマンスに関する優先度をつけることができます。例えばストレージキューとI/O処理数に基づいて、OLTPのデータベースのボリュームに対して、Windowsユーザーのホームディレクトリを格納したボリュームよりも、高い優先度を与えることができます。
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