[ヴォルテア] InfiniBandが企業でブレークする理由ストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(5)(1/2 ページ)

InfiniBandの主要ベンダである米ヴォルテアは、今後エンタープライズ分野におけるこの技術の飛躍的な普及を目指していくという。同社の現状と狙いを聞いた

» 2006年08月01日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 グリッド・コンピューティング環境におけるコンピュータの相互接続やストレージの接続で、教育研究分野における支持を獲得している接続技術「InfiniBand」。この技術に基づく接続機器の主要ベンダである米ヴォルテア(Voltaire)は、InfiniBandが今後エンタープライズ分野で飛躍的に普及することに、自社の将来を賭けている。社長のマーク・ファヴロー(Mark Favreau)氏と、創業者の1人で事業開発担当副社長を務めるアミア・プレシャー(Amir Prescher)氏に、同社の狙いを聞いた。

ALT 米ヴォルテアのファヴロー氏(左)とプレシャー氏(右)

──ヴォルテアの事業はどのくらいの規模に達しているのですか?

ファヴロー 当社はSMPからグリッド・コンピューティングへの流れに沿ったコンピュータ間の相互接続のための製品を売っています。しかしそれだけではなく、IPやファイバチャネルへのルーティングも実現しています。売り上げは昨年度に比べ4倍、2003年度と比較すると15倍で、急速に伸びていることがお分かりいただけると思います。約300の顧客を持ち、2005年度には5万ポート以上を出荷しました。2006年第4四半期には黒字転換し、2007年前半には株式公開を目指しています。

 私がこの会社に来るまでは、直接販売がほとんどでしたが、私はこれをOEM中心の構造に転換させました。この結果、売り上げの85%をOEMパートナー経由で販売するほどまでになりました。OEMパートナーとしては、IBM、ヒューレット・パッカード、サン・マイクロシステムズ、SGI、NECがいます。これに加えて特定市場を開拓するVARがいます。

──InfiniBandといえば、利用がハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)に限定されているイメージがありますが、実際にはどのような状況ですか?

ファヴロー 2003年度、2004年度には売り上げのほとんどがHPC関連でした。当社ではこれを基盤としています。しかし、石油・ガス関連や製造業など、商用市場分野へのシフトを現在進めているところです。当社の究極的な目標は、この会社を6〜7億ドル規模に育てることですから、そのためにはHPC以外の部分にも手を広げる必要があります。HPCユーザーは先駆的存在で、この人々のおかげで当社の技術が実証されてきました。しかし今では、商用分野の人々が、InfiniBandやグリッド・コンピューティングは理にかなっていると思うようになってきました。

 ここで忘れてはいけない重要なことは、製品を単に売るだけでなく、トータルなソリューションを提供しなければならないということです。このため、アプリケーションやミドルウェアのISV(独立系ソフトウェアベンダ)への働きかけを積極的に行っています。その一方で、ストレージ関連企業との協力も進めています。なぜなら、InfiniBandによるストレージの接続を、伝統的なファイバチャネルよりもコストの低い新たな選択肢として考える人々が増えてきているからです。ファイバチャネルネットワーク機器のベンダには、当社を脅威とみなすよりも、補完的な技術を提供する仲間だと考えてもらいたいと思います。当社の製品ではIPやファイバチャネルへの接続を実現しているため、InfiniBandからファイバチャネルスイッチに直接接続しているケースもすでに存在しています。

──InfiniBandでコンピュータ同士だけでなく、ストレージも接続していくことの利点を改めて教えてください。

プレシャー 東京工業大学の例で説明しましょう。ここではInfiniBandで1ペタバイトのストレージを接続しています。第1の理由はパフォーマンスを大幅に向上できることですが、第2の理由はコストです。ファイバチャネルと比較すると、コストパフォーマンスの違いは歴然としています。そして第3の理由は、1つのファブリックを管理するほうがはるかに簡単だということにあります。サーバにInfiniBandを導入するつもりなら、ストレージもこれにつなぐことで非常に楽になります。これらに対して別個のQoSを割り当てることもできるのです。例えばストレージへの接続とコンピュータへの接続のバランスを設定することが可能です。米空軍では当社のInfiniBand製品を使い、クラスターファイルシステムを運用していますが、スループットは毎秒750Mバイトに達します。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ