[ヴォルテア] InfiniBandが企業でブレークする理由ストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(5)(2/2 ページ)

» 2006年08月01日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]
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InfiniBandの市場はまだ大きな可能性を秘めている

──InfiniBandでどのように企業を攻めようとしているのですか?

プレシャー 企業のデータセンターにおけるトレンドとしては、64ビット、マルチコア化の進むCPUが登場するとともに、Linuxが金融をはじめ多くの分野に導入されつつあります。ブレードサーバはスペース効率を高めるために積極的に導入されており、ストレージのコストを減らそうというユーザーの考えもはっきりしてきました。こうした流れからは、大きなSMPマシンと独自の相互接続技術で構成された世界を打ち破り、多数のブレードサーバで構成し直すことが優先課題となります。InfiniBandは標準に基づく相互接続技術であり、技術の一般化に伴って製品を安く買うことができるほか、拡張性の点でも優れています。

 当社は企業のデータセンター内に専念し、サーバ提供ベンダの価値を高めるような製品を提供することを目指しています。さらに、データウェアハウスのような利用方法に関しては、InfiniBandを内部の相互接続に使いながら、外部に対しては、ギガビットイーサネットやファイバチャネルの接続を提供することができます。つまり、HPCの技術を商用分野に持ち込むことで、実効性の高いソリューションを提供していくつもりです。

 InfiniBandは、遅延を420ナノ秒以下といった低レベルに抑えることができ、標準も確立されています。さらにチップメーカーから主要サーバベンダのすべてに至るまで、エコシステムができ上がっています。例えば東京工業大学の例では、当社のスイッチを用いて100テラフロップのスーパーコンピューティングを目指すとともに、1ペタバイトのストレージ容量を確保しています。これらすべてがInfiniBandで接続されています。ここでは、ギガビットイーサネット経由で(グリッド環境の)外ともつながっています。また、米空軍の例では、サーバとストレージを10ギガビットで接続し、1000ノードのグリッドを単一のファイルシステムに接続しています。

 ヴォルテアでは、最高のパフォーマンスを発揮するとともに、マルチサービスを実現するための接続性を確保しています。また、すべてのソフトウェアスタックはプラグ&プレイであり、接続や運用を簡単にするグリッド管理ソフトを提供しています。特に単一の筺(きょう)体内でInfiniBand、IP、ファイバチャネルを提供しているのは当社だけです。OEMパートナーがエンドユーザーに対し、当社を奨めてくれていることも大きなプラスです。

──InfiniBandにおけるベンダ間の相互接続性は、現在どのような状況ですか?

ファヴロー たしかに以前は、各社とも独自のスタックでInfiniBandを動かしていましたが、InfiniBandのユーザーである米教育省の委託を受けて、当社が中心となりオープンソースのInfiniBandスタックを開発しました。同プロジェクトには同業他社や当社のOEMパートナーも参加し、このソフトウェアの採用を進めてきました(注:このソフトウェア仕様はOpenFabrics Enterprise Distribution (OFED) version 1.0として2006年6月に発表された)。つまり、InfiniBandは顧客の求める互換性を確実に提供できたと考えています。

──InfiniBandの市場は今後どのように伸びていくと考えていますか?

ファヴロー 2006年の世界市場の規模は約2億ドルだと思います。昨年は9000万ドル程度ですから、非常に大きな伸びです。しかし、これはまだ(市場の可能性の)表面をひっかいてもいない状態だと思います。今年の当社の売り上げはまだほとんどがHPC分野ですが、来年、再来年には、商用分野への導入に従って売り上げ構成比率は飛躍的に変化していくはずです。

──日本市場に向けては今、何をやろうとしていますか?

ファヴロー 当社としては以前、2006年第4四半期か2007年第1四半期に日本拠点を作ろうと考えていましたが、東京工業大学などの大規模顧客を獲得できたことから、スケジュールを前倒しにしてすでに拠点を設置することができました。アジア太平洋地域全体の売り上げにとって、日本は戦略的に非常に重要だと考えており、今年から来年にかけて飛躍的な伸びを期待しています。アジア太平洋地域ではInfiniBandのような新しい技術を取り込もうとする技術指向の顧客が多く、InfiniBandの導入率は北米よりも高いと感じています。

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▼著者名 三木 泉


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