仮想化技術を生かし切るための条件仮想化時代のビジネスインフラ(6)(1/2 ページ)

仮想化技術の本来のメリットは「使われていないリソースをプールしておき、必要なときに活用できる」ことにある。このメリットを生かし切るためには、IT資産を全社的に運用管理する体制が不可欠だ

» 2009年08月26日 12時00分 公開
[大木 稔 ,イージェネラ]

仮想化技術を生かすには、全社的なIT資産管理が不可欠

 コスト削減のために、保有資産の運用管理体制を見直す企業は多いと思います。その過程で、必然的に資産の棚卸しをすることになりますが、ことIT資産に関しては「こんなにサーバが増えているなんて……」と、予想を上回る結果に驚く人が多いようです。

 実際、年商500億円を超えるような中堅〜大企業では、数百〜数千台のサーバを保有しているケースが少なくありません。ビジネス上の要請、サーバの価格低下など、台数が増加した理由はさまざまでしょう。しかし根本的な原因は、「全社的な視点でIT資産を運用管理していなかった」──この1点に尽きると思います。

 事実、IT資産については各部門の判断で購入・運用し、ほかの部門の状況については関知していないケースがほとんどです。全社的に管理する体制もなく、各部門が勝手にサーバを購入していけば、全社のサーバ台数は増える一方です。

 これを根本的に改善するには、IT資産の全社的な運用管理体制を築く必要があります。具体的には、全社のIT資産を統合的に運用管理する部門を定め、「何がどれだけ存在するのか」「どれが稼動していて、どれが休止しているのか」など、徹底的にIT資産の棚卸しをするのです。

 その際は第5回『そのアプリケーション、本当に必要ですか?』で紹介した「機能面から見た棚卸し」により、ソフトウェアとそれを支えるハードウェアをひも付けてチェックすることが不可欠です。そのうえで、リソースを適切に分配するためのポリシーやルールを定め、“IT資産管理部門”がそれに基づいてリソースの管理、提供を一元的に行う体制を築くのです。

 こうした管理体制の構築は、個別最適の慣習を打破し、ITガバナンスの変更を迫る“経営改革”となるだけに、決して容易なことではありません。しかし、ここを乗り越えなければ、無駄なIT資産の増加を食い止めることはできないのです。

 そして仮想化技術も、この前提条件をクリアしてからでなければ、本来のメリットは享受できません。真のメリットは「使わなくなったリソースをプールしておき、必要なときに有効活用できる」ことにあるからです。この実践のためには、全社のリソースを集中管理する部門が不可欠ですし、分配のポリシーやルールを定めておかなければ、リソースを“有効活用”することもできません。すなわち、IT資産を有効活用するための前提条件は、これまでと何ら変わらないのです。

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